このパンがすごい!

名物は食パン。次の「パン飲み」はここから始まる!/Cise

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食パンとワイン

上野、池之端のワインビストロ。厨房(ちゅうぼう)の中に、小さな店に不釣り合いに大きな、ガチの製パン用オーブンが垣間見えている。「Bread&Wine」を標榜(ひょうぼう)する店。シェフ・宮武郁弥さんの得意技は自家製パンである。ワイン、料理、パンの三つどもえが楽しめるのはもちろん、ランチタイムが終われば、カウンターにパンが並んで、パン屋に早変わり。パンのテイクアウトのみでもOKという使い勝手のよさだ。

名物は食パン。次の「パン飲み」はここから始まる!/Cise

ランチタイムのあと、カウンターの上にパンが並び、パン屋が開店

この店の名物は「食パン」。北海道産小麦「春よ恋」を100%使用する。トーストすれば、耳ばりばり、その一枚下はふわふわ。もろもろっと崩れたかと思えば、しゅわーっと溶け、春よ恋ならではの風味とバターが相まって、ミルキーな甘さが次々と湧きだすようだ。と同時に、レーズン種ならではのフェロモン香がそこはかとなくうごめいている。

「レーズン種を入れると奥行きがある。発酵した果実の香りがあります」
宮武さんは、狭い厨房の中を朝から晩までてんてこ舞い。ひとりで十数席分の料理を作る一方、パンまで焼いている。発酵種を2種類も育て、パンに合わせて使い分けている料理人なんて、そうそういない。

名物は食パン。次の「パン飲み」はここから始まる!/Cise

バゲット

レーズン種に加え、ハード系には、ヨーグルトと全粒粉を合わせた種を使用。乳酸菌のコクが小麦の香りをエンパワーする。たとえば、「バゲット」。ばりっとした皮に、さつまいものような香りがあり、中身にある想定外の甘さはまるで鳴門金時のようで、小麦だけのシンプルなパンとは思えないほど。

宮武さんは、北海道の東端にある別海町という、人間の何倍も牛が多い町の出身。それにちなんで、小麦はすべて北海道産を使用する。

「チーズのパン」は、チャバタ生地にチーズを混ぜたもの。もちもちが持ち味の北海道産小麦らしく、ふるるんとはずんで、とろけてじゅるるーん。チーズの甘さ、バターにも似た小麦の甘さがあふれだして、もうひたすらにミルキーなのである。

テイクアウトもいいが、カウンターに座って料理とワインとともにパンを楽しむのが至福。

名物は食パン。次の「パン飲み」はここから始まる!/Cise

ランチのパン盛り合わせ。日替わりで内容は変わる。この日は、ブリオッシュ、青のりチャバタ、食パン、バゲット

ランチには3種類のパンがつく。メインのいわしのフライとはどんな相性か? 食パンのミルキーさは、クリーミーなソースにぴったり寄り添う。一方、いっしょにつまむパンをカンパーニュに変えれば、フライの衣のしっかりした焼き目、いわしならではのコクのある香りが、沸き立つような全粒粉、ライ麦の香りと一致、ぎゅっと握手をしあう。

夜のコースで出た「朝採れゴールドラッシュの冷たいスープ」。根津にある、産直野菜を扱う「萩原青果」で仕入れたとうもろこし。これが野菜か? と驚くほどに甘い。

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食パンに、イカとレモングラスの水餃子をのせる

フレンチの枠をはみ出し、供されるのは、なんとイカの水餃子(ギョーザ)。レモングラスがすーすー、自家製ラー油のアジアンなスパイシーさ、激しい油のコクが私を狂わせ、ふと気づけば、ワインビストロのカウンターで餃子を食パンにのせて食べるという、もはや何料理かもわからない暴挙に出ていた。それでも春よ恋のミルキーさは、この無国籍タイフーンをやさしく受け入れてくれるのだ。

そこにワインをぐびり流し込む。ここで、先述したレーズン種のフェロモン香が効いてくる。ワインとも共通するその香りは、食パンとワイン、食パンと料理という人見知りな関係を上手に橋渡ししてくれる。「パン飲み」のネクストステージは池之端からはじまるだろう。

■Cise
東京都台東区池之端3-4-19
03-6884-1989
12:00~15:00(L.O14:30)18:00~23:00(L.O.22:30)
不定休
https://www.facebook.com/cise0205/

↓↓フォトギャラリーは下部にあります↓↓ ※写真をクリックすると、くわしくご覧いただけます。
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PROFILE

池田浩明

佐賀県出身。ライター、パンの研究所「パンラボ」主宰
日本中のパンを食べまくり、パンについて書きまくるブレッドギーク(パンおたく)。編著書に『パン欲』(世界文化社)、『サッカロマイセスセレビシエ』『パンの雑誌』『食パンをもっとおいしくする99の魔法』(ガイドワークス)、『人生で一度は食べたいサンドイッチ』(PHP研究所)など。国産小麦のおいしさを伝える「新麦コレクション」でも活動中。最新刊は『パンラボ&comics 漫画で巡るパンとテロワールな世界』(ガイドワークス)

http://panlabo.jugem.jp/

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