東京ではたらく

化粧品会社勤務/横山優さん(35歳)

職業:化粧品会社ショップディレクター
勤務地:東京都渋谷区
仕事歴:16年目
勤務時間:11:30~
休日:店の定休日

    ◇

毎日使う化粧品。無数にあるブランドの中から自分の肌質や好みに合うものを選ぶのはとても難しい。そんな時、頼りになるのが各ブランドの化粧品売り場に立つ美容部員たち。ジャパンメイドのブランド「イプサ」でショップディレクターとして働く横山優さんもそのひとりだ。

職場は今年5月に北青山にオープンした「IPSA AOYAMA」。ブランド初の直営路面店の責任者として、接客以外にもスタッフの教育や店のブランディングなど、さまざまな仕事を担当している。

メイクに興味を持ったのは中学生くらいの頃。きっかけはテレビで見た“メイクさん”だった。

「テレビ番組でメイクさんが登場して、女性のお化粧や髪形をガラッと変えて“変身”させる企画をよく見ていて(笑)。ビフォーとアフターですごく印象が変わって、ご本人もすごく喜ぶ姿が印象的だったんです。最初は、ああ、こんな仕事があるんだなって漠然と興味を持っていたんですけど、だんだんカッコいいなあと思うようになって。なんだかすごくキラキラして見えたんですよね、メイクさんっていう仕事が」

化粧品会社勤務/横山優さん(35歳)

ただ新商品を勧めるのではなく、その人その人に合ったスキンケアやメイクアイテムを見極めるのが大切な仕事。悩みや理想をじっくり聞いて、一緒に解決策を考えていく

高校に進学し、具体的に進路を考え始めたとき、友人と一緒に地元福岡の美容専門学校の見学に出かけた。

「まだ美容の道に進むと決めていたわけでは決してなくて。選択肢のひとつとして気軽に見学に行ってみたんです。そこで学生さんにメイクをしていただいたり、自分に似合う色を教えてもらったりしたんですけど、わあ、面白いな!と思って。一気に具体的な興味が湧いてきたんです」

進学校ということで、同級生の多くは大学への進学を決めていた。担任からも「とりあえず大学を卒業して、それからまた専門学校に行ってもいいのではないか」と、暗に大学進学を勧められた。

「ただ両親は大学にはそこまでこだわっていなくて、常にあなたが好きな道に進めばいいというスタンスで。専門学校でも、やりたいことがそれならいいじゃないと後押ししてくれました」

進学したのは、地元でも「厳しい」と有名だった美容専門学校。評判は知っていたが、「どうせやるならしっかり学びたい」と、いばらの道を選んだ。

化粧品会社勤務/横山優さん(35歳)

今年5月にオープンした「IPSA AOYAMA」。広々とした店内でゆったりと肌測定やカウンセリングを受けられる

「覚悟はしていたんですけど、入学してみると想像以上で(笑)。授業はもちろんですが、授業前にはメイクや身だしなみのチェックがあって、乱れがあると先生から注意を受けるんです。朝夕には学校の周りの掃除の時間もあって、本当に規律正しい学校でした。

正直当時は『大変だなあ』と思っていたのですが、社会に出てみたら、そこで教えていただいたことがものすごく役だったんですね。人様の前に立って、さらに美容についてアドバイスする仕事ですから、身だしなみや立ち居振る舞いというのは基本中の基本なんです」

美容学校の卒業生の進路は、テレビや雑誌で活躍するヘアメイクアップアーティストや、結婚式場で働くウェディング専門のヘアメイク職、そのほかにもネイルを専門にしたり、横山さんのように化粧品会社に就職するパターンなど多岐にわたる。今の仕事を選んだのはメイクやお肌のトラブルに悩む人々、ひとりひとりに寄り添い、美しさを引き出す仕事がしたいと思ったから。

化粧品会社勤務/横山優さん(35歳)

透き通る陶器肌はさすがプロ。皮膚生理学などの知識も交えて、その人に合った肌のケアや化粧品選びをアドバイスする

「数ある化粧品ブランドの中でも、イプサは独自の肌測定器を使ってカウンセリングを行い、お客様の肌の状態や本来持っている肌の特性を解析して、ひとりひとりに最適なスキンケアやメイクをお勧めしているんです。就職活動をしているとき、実際にイプサのカウンターでそれを体験して、この会社なら自分の理想としている仕事ができると思ったんです」

最初に配属されたのは渋谷にある西武百貨店。専門学校で接客や販売、実際に人の肌に触れて説明するテクニックなどはひと通り学んできたものの、いざカウンターに立つと緊張で震えた。

「長年愛用してくださっているお客様も多くて、私なんかよりずっと商品についてよくご存じなんですよね。肌測定器の扱いにも慣れなくて、大きなエラー音を鳴り響かせてしまったこともありました(笑)。それでも、ずっと肌トラブルに悩んでいたお客様から『イプサのスキンケアを使ったらすっかりよくなったわ』なんてお声をいただけると本当にうれしくて、そのたびに、この仕事に就いてよかったなと思えました」

渋谷の西武百貨店で3年ほど経験を積み、地元福岡の店へ異動。店を任されるショップディレクターに抜擢された。大きな転機が訪れたのは入社して9年ほど経った29歳の頃だった。

化粧品会社勤務/横山優さん(35歳)

肌測定器で肌の状態をチェックする。水分保持力や皮脂分泌力など、その人の肌の状態や傾向を数値化して見せてくれる

「会社で年に何度か、本部の仕事にチャレンジしたい人を募集する制度があるのですが、思い切ってそれに応募してみたんです。店頭での仕事にもやりがいを感じていたのですが、さらに経験を積んでみたいという気持ちが強くなってきて。それで一念発起、二度目の上京をさせていただくことにしました」

本社では商品企画やマーケティング戦略、営業企画など、さまざまな経験を積む機会に恵まれた。中でも忘れられないのは、自分が提案したアイデアが新商品として形になったこと。

「実際に商品づくりをする研究所の方々とお話をしている中で、日中にメイクの上からでも使える美容液があったらいいよね、という話になって。特に乾燥しやすい目元やほうれい線周りなど、出先でもサッと保湿できるアイテムがあったら便利だなと。ミストやバームなど保湿用のアイテムは色々な形状でありますが、乾燥が気になる部分により集中的にうるおいを補給できる商品を作りたいと思ったんです」

提案したのは約65%がうるおい保湿成分でできたスティック状美容液。ポーチにも入るコンパクトなサイズで、片手でもサッと塗れるようスティックという形状にこだわった。

化粧品会社勤務/横山優さん(35歳)

「肌測定」のデータをもとに、最適な基礎化粧品やお手入れ方法をアドバイス。「私だけのレシピ」を提案してくれる

「提案したときは、『こんなの誰が使うの?』なんて反対の声も挙がったのですが、中には『こういう商品を待ってた』『絶対売れるよ!』と力強く後押ししてくださる先輩方もいて。なんとか発売にこぎつけたんです。自分のアイデアが商品になるなんて、その時は感無量でした」

じつはこのスティック状美容液、今や多くの美容家からも支持されるイプサの大人気商品となっている。

「日々接客をしていると、その美容液スティックの大ファンというお客様がいらっしゃったり、大切な人へのプレゼントに選んでくださる方がいらっしゃって、それはもう本当にうれしいですね。もちろん『それ、私のアイデアなんです!』なんてお伝えしませんけど、内心では喜びをかみ締めています(笑)」

ほかにも、本部で学んだことは数えきれない。
「店頭に立っていた頃は、本部から回ってきた新商品の資料を読み込んで接客にあたっていたのですが、今度は自分がその資料を作る側になって。以前はなんとも思っていなかったのですが、それがどれほど時間をかけて丁寧に作られていたものなのか、身に染みてわかりました。店頭と本部、両方の立場を経験したことで、より商品への理解や愛着が深まりましたし、多くの人が一生懸命作った商品をより多くの人にお届けしたいという気持ちが強くなりました」

化粧品会社勤務/横山優さん(35歳)

横山さんが発案したスティック状美容液「ザ・タイムR デイエッセンススティック」。乾燥した部分にひと塗りするだけで日中の乾いた肌が整うと、発売以来の大人気商品に

本部で5年経験を積み、横山さんは再び店頭に戻ることになる。34歳のときにはブランド初の直営店となるルミネ有楽町店に配属、そして今年、直営路面店となる「IPSA AOYAMA」のショップディレクターに抜擢された。

「ショップディレクターは経験したことがあったのですが、『IPSA AOYAMA』は路面店ということで、それまで百貨店や商業施設の中に入っていたカウンターとはまったく違った店舗形態です。

店舗の空間そのものがブランドのメッセージというか、コンセプトを表すものですから、接客に加えて店舗の雰囲気づくりや、そこで働くスタッフたちの教育など、いっそう力を入れて取り組まないといけないことがたくさんあります。ブランド初の取り組みで、まだ手探りの部分もありますが、だからこそ刺激的で楽しいと思えることも多いんです」

入社16年目に巡ってきた大きなチャレンジ。不安がないと言ったら嘘になるが、ワクワクする気持ちの方がずっと大きい。

「私は思い立ったら行動してみよう!というタイプで、その時々の気持ちに正直に動くタイプなのですが、今振り返ってみると、福岡で勤務したことも、本部で商品開発やマーケティングの仕事に挑戦したことも、全部が今につながっているように思うんです。現場のことも本部のこともわかる今だからこそ、ブランドとしての大きなチャレンジに楽しみながら取り組めているのかなと。仕事をやる上で、無駄なことなんて何もないんだなって、今は思います」

化粧品会社勤務/横山優さん(35歳)

専門学校時代に教わった大切なことのひとつが「丁寧な掃除」。ショップディレクターとなった今、今度はスタッフたちにその大切さを伝えている

目下の目標は、訪れる人にとって居心地のいい店をつくること。そのためにいつも心に留めていることがある。

「店舗で働くスタッフのモチベーションや気分って、お客様にそのまま伝わると私は思っていて。だからこそ、一緒に働くスタッフたちが充実した気持ちで働ける環境をつくっていきたいなと思っています。

イプサの接客は、お客様の悩みに寄り添って、その人だけのレシピをつくるようなもの。中には長年同じスタッフの元を訪れてくださるお客様もいらっしゃいますので、「IPSA AOYAMA」もそんな風に、『また行きたいな』、『あそこに行けば安心だな』と思っていただけるような場所になれたら、そんなにうれしいことはないです」

東京ではたらく女性へ、パーソナルな5つの質問

◎休日はどう過ごしている?
録画した番組を見たり、本を読んだり。家でのんびり過ごすことが多いです。

 

◎東京で好きな場所はどこ?(理由も)
恵比寿。ほどよく大人の雰囲気で、おいしいお店が多いので。

 

◎最近うれしかったことは?(できれば仕事以外で)
差し入れでおしゃれなアイスクリームをいただいたこと(無類のアイス好きなので)

 

◎100万円あったら何に使う?
半分は両親に贈って、残りは旅行に行ったり、おいしいものを食べたりします。

 

◎今日の朝ごはん、何食べた?
ごはん、納豆、ワカメのお味噌汁。

■イプサ

PROFILE

  • 小林百合子

    編集者
    1980年兵庫県生まれ。出版社勤務を経て独立。山岳や自然、動物、旅などにまつわる雑誌、書籍の編集を多く手がける。女性クリエイター8人から成る山登りと本づくりユニット〈ホシガラス山岳会〉発起人。著書に『最高の山ごはん』(パイ・インターナショナル)、『いきもの人生相談室』(山と溪谷社)、野川かさねとの共著に『山と山小屋』(平凡社)など。

  • 野川かさね(写真)

    写真家
    1977年神奈川県生まれ。山や自然の写真を中心に作品を発表する。クリエイティブユニット〈kvina〉、自然・アウトドアをテーマにした出版・イベントユニット〈noyama〉の一員としても活動する。作品集に『Above Below』(Gottlund Verlag)『with THE MOUNTAIN』(wood/water records)、著書に『山と写真』(実業之日本社)など。
    http://kasanenogawa.net/

パーソナルファッションアドバイザー:モトコさん(39歳)

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