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ヘアメイクアップアーティスト・計良宏文さん、裏方を超えた取り組み

ヘアメイクアップアーティスト・計良宏文さん、裏方を超えた取り組み

写真家で華道家の勅使河原城一との共作を前に話す計良宏文

ヘアメイクアップアーティスト、計良(けら)宏文(47)が注目されている。広告や雑誌、ファッションショーの舞台裏で、モデルにヘアスタイリングとメーキャップを施すのみならず、現代美術や伝統芸能などと幅広く協業。裏方を超えた取り組みを紹介する個展が開かれている。

多分野でのコラボを個展で

枠にとらわれず、限界を作らず。計良は、多様な分野に越境しながらヘアメイクの可能性を広げている。

所属する資生堂から派遣され、2003年にニューヨークとパリ・コレクションに初参加。その後マーク・ジェイコブスやコシェ、イッセイミヤケのショーに携わり、17年に東京で開催されたドルチェ&ガッバーナのオートクチュールコレクションではヘアチーフを務めた。

幼少期から絵やプラモデルが好きだったといい、現代美術家の森村泰昌らとも協業。人形遣いの勘緑(かんろく)とのコラボでは、文楽人形のかしらも制作した。

そんな活動が評価され、個展「May I Start? 計良宏文の越境するヘアメイク展」が埼玉県立近代美術館(さいたま市)で始まった。

会場には、服をまとい、ヘアメイクが施されたマネキンやウィッグ、ヘッドピースがずらり。日本のアンリアレイジ、リトゥンアフターワーズなどのブランドが、過去にパリや東京コレクションで発表した作品だ。ショーの舞台裏で計良が手がけていたヘアメイクを自身が再現した。

華道や文学と「クリエーティブ性伝えたい」

ヘアメイクアップアーティスト・計良宏文さん、裏方を超えた取り組み

(右)アンリアレイジ2018年秋冬作品、(中)ソマルタ2019年春夏作品、(左)リトゥンアフターワーズ2016年秋冬作品の妖怪メイク

アンリアレイジの2018年秋冬では、光学フィルムを使ったヘッドピースを制作し、見る角度によって反射光の色が変化する偏光パールを用いたメイクを提案。ソマルタの19年春夏では、縄文土器の装飾イメージから、髪の毛を立体的に編み込んだ。リトゥンアフターワーズの16年秋冬では妖怪をモチーフにした特殊メイクを作った。

ヘアメイクはブランドや作家の世界観をより具現化するが、ショーや撮影が終われば落とす。計良は「一瞬で消えるはかないものを、どう形に残せるか。芸術として残していけるかはまだ疑問」と胸中を明かしつつ、「あくまでも裏方だが、ファッションや美術の最前線に寄り添っている自負はある。クリエーティブ性を伝えたい」と話す。

デザイナー坂部三樹郎との新作映像も公開。約40のスクリーンに映るのは、髪形も化粧も多様な女性たちだ。実は同一人物で、一人の女性がヘアメイクで多彩に変化する様を表現した。

ヘアメイクアップアーティストに焦点を当てた企画は、公立美術館ではきわめてまれだ。大浦周学芸員は、「ヘアメイクには、表現をより高い次元に引き上げる重要な役割がある。もっと認知されていい存在だとわかってもらうきっかけになれば」と期待する。

ヘアメイクアップアーティスト・計良宏文さん、裏方を超えた取り組み

坂部三樹郎と共作した新作映像

文化的価値、高める試み

ヘアメイクを含む化粧は多くの人にとって生活の一部で、「芸術」として顧みられることはほとんどなかった。今回の展覧会は、その定義を考察し、文化的価値を高める試みにもなりそうだ。

化粧文化研究者ネットワーク代表の北山晴一立教大学名誉教授は「非常に良いところに目をつけた」と評価する。ヘアメイクや化粧は本来、顔や髪だけでなくボディーペインティングなど含めて「身体に何らかの手を加える表現」だが、「顔に施すものという狭義的意味が浸透し、広義的な意味は一般に知られていない」と指摘。計良の現代美術や文楽とのコラボなどを紹介することで、「本来の化粧やヘアメイクアップアーティストのあり方を知ってもらう良い機会になる」と話した。9月1日まで。月曜休館(8月12日は開館)。
(松沢奈々子)

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