このパンがすごい!

夏の入道雲のようなリュスティックの香りと、自由形アイスパンの衝撃/パラオア

夏の入道雲のようなリュスティックの香りと、自由形アイスパンの衝撃/パラオア

リュスティック

 リュスティックとは、小麦と塩とパン酵母(イースト)だけのシンプルなパン。水をたくさんふくませた、たっぷんたっぷんの生地を、蒸気の力で上へと持ち上げる。だが、パラオアの「リュスティック」はさらに斜め上をいく。食べる前から食べたような気がするパン。ナイフを入れただけで、それほど強烈に小麦の香りが湧き上がるのだ。

 まるでそばがきみたいに、香りは濃厚すぎる。しっとりなめらかな中身がむにっと舌に触れると、十勝産小麦「キタノカオリ」のフレーバーが、夏の空をいく入道雲みたいに、口の奥から鼻腔へもうもうとせり上がる。後味にひたすら心地いい甘さ。

夏の入道雲のようなリュスティックの香りと、自由形アイスパンの衝撃/パラオア

リュスティック断面

 なんでこんなに麦が香るのか。池口康雄さんが操る、0℃のマジック。48時間もの間、0℃の冷蔵庫内で、生地を熟成させる。麦と水がしっかり結びつき、舌触りも口溶けもなめらかになるとともに、小麦は分解、糖分やアミノ酸に変わる。

 バゲットも製造に3日かけるという。

「最初の日にポーリッシュ種(少量のパン酵母を使った水分の多い生地を寝かせて香りをだす製法)を作り、2日目に本ごね。そこから一晩0℃でおきます」

 池口さんが好んで使う、灰分(ミネラル分)の高い石臼挽き小麦。リュスティックにはキタノカオリ、バゲットには十勝産ホクシン、熊本産、福岡産と2種のミナミノカオリ。風味となりうる成分の絶対量が多いから、0℃のマジックを経て、化ける。噛(か)めば噛むほど旨味(うまみ)がじんじんと舌を揺らす。
「極力イーストは少なくしています。発酵のメカニズムによって発酵フレーバーが出てくる、そこが好きでやってるんで」

夏の入道雲のようなリュスティックの香りと、自由形アイスパンの衝撃/パラオア

極厚乾塩ベーコンのカスクルート

「極厚乾塩ベーコンのカスクルート」は、バゲットに、厚さ約8mmのベーコンをただはさんだだけのもの。それがすごい。小麦の旨味と豚の旨味が激突するではないか。脂は垂れ落ち、待ち構えるバゲット生地がそれを受け止め、旨味と旨味は口の中でぐるぐるまわり、麦にくらくらしているのか、豚にノックアウトされているのか、もうわからなくなる。

夏の入道雲のようなリュスティックの香りと、自由形アイスパンの衝撃/パラオア

ハード、セミハードパンを使った惣菜パン、おやつパン

 ハード系だけの店ではない。商品構成はポップでバラエティに富み、ファミリーで楽しめる。カレーパンは、自家製のフィリング。挽肉、そしてレンズ豆を使う趣向。黒っぽくなるまでじっくり揚げた生地がじゅくじゅく旨味を発し、トマトの甘酸っぱさが跳ね、レンズ豆のコクはやさしく。スパイスは、クミンとカルダモン。辛くはなく、素材の甘さとさわやかさに満たされる。

 そして、人を糖分のパラダイスへと運んでいくとんでもないサービスがはじまっていた。ブリオッシュなどのパンに、注文後アイスをはさんでくれるアイスパンは、いまや夏の定番となり、もはや驚くほどではない。パラオアでは、なんとすべてのパンに+200円でハーゲンダッツのバニラをはさめる。カスタマイズの絶対自由。メロンパン? フレンチトースト? きなこ揚げパン? ドーナツ? パン・オ・ショコラ? 迷いに迷った末、シナモンロールを選択。

夏の入道雲のようなリュスティックの香りと、自由形アイスパンの衝撃/パラオア

シナモンロールにプラス200円でハーゲンダッツのバニラをのせる

 ナイフで切り込みを入れられ、大口を開けたシナモンロールにハーゲンダッツ様がどすん。私も大口で対抗する。ひやひやからのじゅじゅーん。アイスとシナモンシュガーのW糖質ブーストが、シナモンロールの限界地点をやすやすと突破。シナモンロールのミルキーさ、バニラのまったり感は、食べるそばからシナモンのすーすー感に染め上げられる。甘々すぎる?  否、糖質リミッターを解除してしまったことへの背徳感こそが逆に、無上の調味料なのである。

 飛び道具に目を奪われているばかりではなく、シナモンロールの食感のすばらしさに刮目(かつもく)しなければならない。歯切れ、そしてつるんとして、むにっとした舌触り、歯応え、とろけ感。シナモンロールのイメージに合わせ、同じ菓子パン生地を使うあんぱんなどとは発酵の取り方を変え、前日に成型してから0℃で冷蔵するからこそ(他のパンは生地の状態で冷蔵し当日に成型)。発酵にかける池口シェフの情熱はあらゆるパンに沁みこんでいる。

■パラオア
千葉県鎌ヶ谷市新鎌ヶ谷4-6-28
047-468-8046
9:00~19:00(売り切れ閉店)
月曜火曜水曜休み
https://www.palaoa.jp

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PROFILE

池田浩明

佐賀県出身。ライター、パンの研究所「パンラボ」主宰
日本中のパンを食べまくり、パンについて書きまくるブレッドギーク(パンおたく)。編著書に『パン欲』(世界文化社)、『サッカロマイセスセレビシエ』『パンの雑誌』『食パンをもっとおいしくする99の魔法』(ガイドワークス)、『人生で一度は食べたいサンドイッチ』(PHP研究所)など。国産小麦のおいしさを伝える「新麦コレクション」でも活動中。最新刊は『パンラボ&comics 漫画で巡るパンとテロワールな世界』(ガイドワークス)

http://panlabo.jugem.jp/

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