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有村架純さん「幼いときから感じていた。人一倍頑張って生きていかなければいけないと」

有村架純さん「幼いときから感じていた。人一倍頑張って生きていかなければいけないと」

俳優・有村架純さんが、8月4日から放送の「連続ドラマW そして、生きる」(WOWOW)でヒロインを演じます。作品にどう向き合ったのか、有村さんにとって「生きる」とはどういう意味があるのか。作品のことから演技の悩みまで率直に語ってくださいました。

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連続テレビ小説「ひよっこ」(NHK)のヒロインをはじめ、いまや国民的俳優として多くの作品で活躍する有村架純さん。「連続ドラマW そして、生きる」の脚本は、その「ひよっこ」を手掛けた岡田惠和さんだ。

「岡田さんは日常を丹念に描き、日常で使うセリフがよく出てくるんです。『ひよっこ』でもそうでしたが、それぞれのキャラクターを愛情を持って書いてくださっているという印象があります。いてもいなくてもいいキャラクターは1人もいない。愛情深い方だと思います」

震災後の東北と東京を舞台に、運命に翻弄(ほんろう)されながらも生きる男女を描いたヒューマンラブストーリー。瞳子(有村)は3歳で両親を交通事故で亡くし、理髪店を営む伯父(光石研)に育てられる。夢は俳優になることだ。19歳になった瞳子は、東京で開催されるオーディションに挑戦するため上京するが、その前日、東日本大震災が起きる。半年後、気仙沼でのボランティア活動に参加した瞳子は、東京から来ていた大学生、清水清隆(坂口健太郎)と出会い、恋に落ちる。

有村架純さん「幼いときから感じていた。人一倍頑張って生きていかなければいけないと」

複雑な家庭環境、将来に対する夢や不安、すれ違いの恋……。いくつもの荒波を乗り越えて生きる瞳子は、演じるのが難しく、やりがいもあっただろうキャラクター。「かなり難しかったのでは」と問うと、「難しかったです」と即答した。

「瞳子はさらっと演じてしまうと面白くないと思ったので、いつもだったらやらないこと、例えば、セリフの吐き方や息継ぎをいつもと違うリズムでやってみたりしました。難しかったのは、あることがあって清隆と連絡を絶ち、1人で決断をして人生を歩いていくと決めてからですね。何かが重なる時ってタイミングが悪く重なったりするじゃないですか。ネタバレになってしまうので詳しくは言えませんが、瞳子の人生に次々とつらいことが降ってくるんです」

いくつものつらいことを乗り越えていく瞳子。そんな彼女に有村さん自身は似ているところはあったのだろうか。

「私も自分が決めたことは最後までやり遂げたいという性格です。頑固なので(笑)。ただ、瞳子ほど男前ではないですね。瞳子は本来、素直に生きるのだとしたら多分違う道を選んでいたんです。でも、そうもいかない理由があって……。

自分でこう生きていくって決めたから、本当の気持ちと裏腹であってもそれで生きていくんだ、って決意した。私は素直に生きたいと思っちゃうタイプなので、瞳子のような強さはきっとない。でも、生きていく上で、自分の思う通りでないことを選択しなければいけないことがある、ということは瞳子から学びました」

有村架純さん「幼いときから感じていた。人一倍頑張って生きていかなければいけないと」

生きるって難しい。自分の思う通りの人生を歩める幸運な人なんて、そう多くはないはずだ。だからこそ、瞳子のように強い意志を持ってどんな道を進んでも後悔しないように、自分の幸せを見つけたい。有村さんの話を聞いていると、彼女もそんな「生きる」ことを実践してきた人のように思える。

「お仕事を始めて上京した時、『家族を養えるくらい頑張って、これまで私にかけてきてくれた分を親に返せたら』と思いました。小学生の頃には、わが家の経済状況は良くないんだなと思っていましたし、金銭面で苦労した母の背中を見ているから、人一倍頑張って生きていかなければいけない、と幼いながらも感じとっていました。

そういうこともあって、今俳優をしているからこそ親に対してできることがありますし、守れるものがある。俳優というお仕事に就いて良かったなと思っています」

オファーは引きも切らない人気者。ところが、意外にも俳優を「向いていない」と思ったことが何度もあるというから驚いた。

「お芝居をしながら、『こんなに豪華なキャストの中で私1人浮いているな』とか、『私が入ると作品が安っぽく見えちゃうな』とか思っちゃうんです(苦笑)。そういうことを思うと、『私って向いていないんだろうな』って。これまで厚みのある俳優さんたちをたくさん見てきたので、『それだけの厚みを持つためにはどうしたらいいんだろう』って今も日々考えています」

必要なのはまず、「見てくださる方から真に信頼してもらえる役者さんになる」ことだと話す有村さん。

「例えば、原作ものの作品ですごく人気のあるキャラクターをやることなった時に、『ちょっとビジュアルは違うかもしれないけど、この人だったら芝居もできるから安心だ』と思ってもらいたい。そう思ってもらえない時点でダメだな、ってすごく思います」

有村架純さん「幼いときから感じていた。人一倍頑張って生きていかなければいけないと」

もちろん足りないものを補うといっても、そう簡単ではない。そんな中で有村さんが意識するのは、人間力を鍛えることだ。

「演じる場合も結局、その役者の人間性が画面に映るというか、少なからずその人自身が反映される部分もあると思うんです。だから、自分の人間力や経験を積んでいかないと深い厚みのあるお芝居はできないのかなと。ただ、最近はそんな自分が発する言葉さえも噓に思えてしまう。偽りで言っているんだろうとか、なんか全部が薄っぺらく思えちゃうんですよ」

考えては語り、考えては悩み……。それも、がむしゃらに走り続けた新人期を乗り越えたからこそに違いない。悩む有村さんには申し訳ないが、さらに前進するには悩むしかない。もっと成長したいともがく姿は何とも好ましく映った。

では、有村さんにとって演技を続けることの喜びとは何なのか。

有村架純さん「幼いときから感じていた。人一倍頑張って生きていかなければいけないと」

「重たい作品や重たい役が多いからこそだとは思いますが、お芝居を続けることは苦しいです。でも、今まで役を一生懸命やり切るためにいろんな力を使って、私としては身を削りながらやってきました。本当に毎日1つ1つを乗り越えていく感覚だったと思います。それが自分の充実感だったり幸福感だったり。さらっと終わってしまうよりも、いろんな山があった方が自分も頑張れますし、くじけそうになりながらも壁を乗り越えたことで自分に『勝った!』と思えるから楽しい(笑)。

ありがたいことに、自信につながる現場をたくさん経験させていただいてきたので、それは自分の中ではある種の自負として残るものなんだろうな、と思っています。ただ、現場でやってきたことが結果につながっているかは、見てくださるお客様が判断すること。お客様に届かなかったらまだまだ努力が足りない。やっぱりそういう壁があるからこそ頑張れるんですね。仕事は単にこなすものではないというか(笑)。私はいただいたお仕事に自分を注ぎ、一歩ずつキャリアを積んでいく。そのスタンスはどんな経験を積んでも変わらないでいたいなと思っています」

有村さんの話を聞けば聞くほど、人生を自らの手で切り開いていく瞳子の姿と重なって見えた。これからどんな役者になっていくのか、彼女の役者人生をもっともっと見たい。

(文 坂口さゆり)

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有村架純(ありむらかすみ)
1993年2月13日、兵庫県出身。2010年、ドラマ「ハガネの女」(朝日系)でデビュー。13年の連続テレビ小説「あまちゃん」で注目を集める。映画「ビリギャル」(15年)も話題に。代表作に「いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう」(16年、フジ系)、17年の連続テレビ小説「ひよっこ」(NHK)など多数。「紅白歌合戦」の司会やCMなど各方面で活躍中

ドラマ「連続ドラマW そして、生きる」

出演:有村架純、坂口健太郎、知英、岡山天音、萩原聖人、光石研、南果歩ほか。監督:月川翔 脚本:岡田惠和 音楽:村松崇継 8月4日から毎週日曜夜10時(全6話)
※第1話無料放送【番組特設サイト】
https://www.wowow.co.jp/dramaw/ikiru/

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