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こぎん刺しのアクセント まとふ「深い物語性」、生地作りから模索

モード×匠

こぎん刺しのアクセント まとふ「深い物語性」、生地作りから模索

こぎん刺しが施された、まとふの(左)2019年秋冬コレクション=野村洋司氏撮影(右)2019年春夏コレクション=大原広和氏撮影

日本の美意識に目を向けた服作りを続けるまとふ。2019年春夏コレクションからは「手のひらの旅」をテーマに各地の手仕事を作品にとりいれている。最初の「旅先」は、青森県・津軽地方。農民が育んだ刺繍(ししゅう)「こぎん刺し」のモダンな幾何学模様が、ジャケットやストールを彩る。

こぎん刺しのアクセント まとふ「深い物語性」、生地作りから模索

弘前こぎん研究所では、まとふの今年の秋冬物のストールにこぎん刺しが施されていた=青森県弘前市

張り詰めた空気の中、図案を見ながら、針の先で布目を横一線にひろっていく。弘前市の弘前こぎん研究所で、まとふの今年の秋冬物のストールにこぎん刺しが施されていた。丁寧に糸目を調整。糸が何度も往復するうちに、雪の結晶のような模様が現れてきた。

研究所で普段使っている麻布は服にするのが難しいため、デザイナーの堀畑裕之と関口真希子は生地から作った。こぎん刺しは目をひろって糸を通すので、服地も目の粗い生地でなければならない。19年秋冬作品では、ウール地を何種類も試し織りした。

この協業は17年、弘前市の依頼で、こぎん刺しをあしらった付け襟や付けカフスをシャツなどにつける作品を伊ミラノで発表したのがきっかけ。今回、まとふの19年春夏と秋冬の作品を共に手がけた。堀畑は、こぎん刺しの魅力について「深い物語性がある」と言う。

江戸時代、津軽の農民たちは麻布の着物を少しでも暖かく丈夫にするため、藍染めの布に白い糸で模様を刺した。農家の女性たちが農作業の合間に、家族のために一針一針手を動かしたのがこぎん刺しだ。だが、明治中期以降、流通が盛んになり、安い綿布が広まるなどして廃れていった。

こぎん刺しのアクセント まとふ「深い物語性」、生地作りから模索

まとふのデザイナー、堀畑裕之(左)と関口真希子

研究所は1942年設立(62年に社名変更)。毛織物を手がけながら、初代所長らが農家から古いこぎん刺しの着物や布を借りるなどして、約600種類の模様を集めた。地元でこぎん刺しを見直そうという地道な活動の中、民芸運動を展開した柳宗悦がこぎん刺しを再評価した影響も大きかったという。

今は3代目の成田貞治所長(70)のもと、従業員のほか、登録された約130人が自宅で刺し、名刺入れやブックカバーといった小物を中心に、物産館や百貨店などで販売。研究所に勤めて40超の三浦佐知子さん(70)は、まとふとの協業について「私たちがいつも考えているものとは違う意外性があった。外からの視点がないと、新しいものはできない」。関口は「伝統だけど新鮮、今着たいと思ってもらえるか。デザインでアップデートしなければ」と話す。

「こぎんは音楽のよう」と例えるのは、成田所長だ。「基本のドレミファソラシドがあって、オクターブやシャープで違う音楽ができる。こぎんも基礎的な模様があり、組み合わせによっていくらでも違う模様ができる」。法人として、売れるものを作り、こぎん刺しを伝えていくことにこだわる。「伝統は趣味では消えてしまう。商売でつなげていかないと。一個人でなく法人なら何百年も伝統をつなげられる」と話す。

まとふは、今後も各地の手仕事と協業を続けていく。堀畑は言う。「今まであったもの、見過ごされてきたものの新たな魅力を発見し、使う喜びを作りたい。渋くて誰も手をつけないものを見ると、『良いものにしたい』と燃える」(神宮桃子)

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