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太古へいざなう人間ドラマ『恐竜まみれ』『恐竜の魅せ方』

太古へいざなう人間ドラマ『恐竜まみれ』『恐竜の魅せ方』

撮影/猪俣博史

今年は恐竜本ルネサンス!

東京・上野の国立科学博物館(科博)で「恐竜博2019」が開催中ですが、今年もたくさんの恐竜関連の本が出ています。今までにない切り口の本も多い中で、今回は「恐竜博2019」に関わるお二人の本をご紹介します。

まずご紹介する小林快次さんの『恐竜まみれ ―発掘現場は今日も命がけ―』は、博物館の展示に絶対欠かせない恐竜化石の発掘記です。舞台はアラスカやカナダ、モンゴルのゴビ砂漠、そして北海道。巨大なグリズリーと対峙(たいじ)するシーン、不安定な小型飛行機に揺られる臨場感あふれる描写と、読み手もあっという間に発掘現場である辺境の地へ連れていかれます。

化石を見つけるために露頭(ろとう〈地層や岩石が直接地表に現れている場所〉)に目を凝らし、道具を片手に掘り出す作業をする。まるで自分までくたくたになったと錯覚するような、リアルな文章で埋め尽くされています。

太古へいざなう人間ドラマ『恐竜まみれ』『恐竜の魅せ方』

『恐竜まみれ―発掘現場は今日も命がけ―』小林快次 著 新潮社 1,450円(税抜き)

なかなか化石が見つからずへとへとになった状態での食事の描写もすばらしく、普段の生活では絶対にNGと思っていた「温かいビール」も、世界のビールがうまい状況ベスト3に入るのでは!と感じられるほど。そして日本初の全身骨格「むかわ竜」の発見記では、様々なドラマの末に標本が目の前にある奇跡を知ることができます。

何よりこの本の魅力は、小林先生の語り口。率直で飾り気のない文体、人類の共通財産である化石の盗掘への警告や、サイエンスへの提言。「おわりに」で、「今後の夢や野望? そんなの知ったことではない」と言い放ち、お酒を片手に次の発掘を考えるくだりは、人の生き方としても大いに参考になります。

大人ならではの楽しみ方

次にご紹介する本は、発掘された化石をいかに展示し、世の中にその魅力を伝えるかに奔走する人々のドラマが描かれた『恐竜の魅(み)せ方 展示の舞台裏を知ればもっと楽しい』。著者は科博で長年にわたり「恐竜展」の監修を手がけてこられた、科博の大人気「恐竜博士」こと真鍋真先生です。

骨格標本を立ち上がらせる技、誰も見たことのない恐竜という生き物を、研究者から与えられる正確な科学知識を基にイラストや造形物で再現する技とともに、宣伝や空間展示のプロといった「恐竜博2019」に様々な関わり方をされている人たちが登場します。

デイノニクスのホロタイプ標本の来日までの交渉や移動の苦労などは、今回の展示に崇高ささえも感じることができますし、あのグッズの製作にはこんな努力があったのか!と知ってしまった今、ショップで散財してしまうのは必至です。

太古へいざなう人間ドラマ『恐竜まみれ』『恐竜の魅せ方』

『恐竜の魅せ方 展示の舞台裏を知ればもっと楽しい』真鍋真 著 CCCメディアハウス 1,400円(税抜き)

同じ目的を持った人々が作り上げる、まるで「華麗な文化祭」のような「恐竜博」の裏側に、展示室の標本の後ろに、こんなにもたくさんの人生を垣間見ることができるのは、経験と想像力を蓄えた大人ならではの楽しみ方です。

第6章の真鍋先生による「恐竜学」への誘いも同様です。あっという間にたくさんの恐竜を覚える子どもたちのような楽しみ方ができなくても(恐竜キッズたちは本当にすごいです)、「考えるモード」そして「観察」により、どんな恐竜でも楽しめるようになるとのこと。それは人生100年時代に生きる私たちが日々携えていきたい能力にも思えます。仲間を大切にし、そして「恐竜学」の楽しさを多くの人たちと共有したいという、真鍋先生の情熱と実直さにあふれた本です。

世界を舞台にした発掘という宝探し、そして化石を手掛かりにする謎解き、そして関わる人々の熱い思い。読めばきっと自分ならではの楽しみ方を見つけられて、「恐竜学」の魅力を再発見することができる、そんな2冊です。

(文・川村 啓子)

PROFILE

蔦屋書店 コンシェルジュ

12人のブックコンシェルジュの皆さんに、
そのとき、一番おすすめの本を週替わりで熱くご紹介いただいています。
●代官山 蔦屋書店
間室道子(文学)
●二子玉川 蔦屋家電
岩佐さかえ(健康 美容)/大川 愛(食)/北田博允(文学)
嵯峨山 瑛(建築 インテリア)/中田達大(ワークスタイル)/松本泰尭(人文)
●湘南 蔦屋書店
川村啓子(児童書 自然科学)/重野 功(旅行)/羽根志美(アウトドア)
八木寧子(人文)/若杉真里奈(雑誌 ファッション)

川村啓子(かわむら・けいこ)

湘南 蔦屋書店 児童書・自然科学コンシェルジュ。
読書といえば小説が主で大学も文学部、ずっと「人間のこと」ばかり考えてきましたが、このお仕事に出会ってからは「人間以外のこと」を思う時間が増えました。
今気になっているのは放散虫。「自然界は美しいものだらけです」。

どこで何を食べようか『マレーシア 地元で愛される名物食堂』

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