パリの外国ごはん

バナナのフライにルガイユ、南の風が吹くアンティル諸島料理「Corossol」

バナナのフライにルガイユ、南の風が吹くアンティル諸島料理「Corossol」

イラスト・室田万央里

バナナのフライにルガイユ、南の風が吹くアンティル諸島料理「Corossol」

バナナのフライにルガイユ、南の風が吹くアンティル諸島料理「Corossol」

7月に食べに行ったレユニオン島料理は、酷暑が過ぎ去っても、夏らしいお天気の続いたパリで食欲を誘うものだった。できることならば南の島で食べてみたいけれど……まずはパリで、代替案とは行かないまでも、夏気分を満喫しつつ島の料理を楽しめる場所に行くことにした。

レピュブリック広場の少し南に位置するマルシェ・デザンファン・ルージュは常設市場で、野菜や魚を売るスタンドがいくつかと、テイクアウトのできる飲食店が軒を連ねる。飲食店はどこもカウンターにスツールか、テーブルを並べていて、週末の昼時ともなると大変な混雑だ。場内の4分の3程度は屋根があるけれど、真ん中に設置されているから周りの少し外れた部分には屋根がなく、いずれにしてもドアはないから、半分屋外で、屋台のような気分を味わえる。

バナナのフライにルガイユ、南の風が吹くアンティル諸島料理「Corossol」

色とりどりのチョークで書かれた黒板メニュー。左がドリンクのメニュー

この市場の端っこに、アフリカ&アンティル諸島の料理をうたった店が1軒ある。チョークで書かれた黒板メニューが楽しげで、いつもちらっと横目に通り過ぎていた。随分と前からあるとは思うのだけれど、アンティル諸島というのが未知の世界で、少し距離を感じていたのだ。

それが、レユニオン島料理に興味がわいたことで、一気に垣根が取り払われた。恥ずかしながら、そもそもアンティル諸島ってどこだ? アフリカ? それとも中米? と全然確かじゃなくて、検索してみたら、なるほど、西インド諸島のことだった。ドリンクメニューにラム(酒)の項目が作られているのにも納得だ。

料理名には、レユニオン島料理の店と同じものがいくつか見て取れた。中でも驚くのはブーダンだ。どちらの店でも表記は、“ブーダン・クレオール”(クレオール風のブーダン)。こういうところに、フランスの文化が流れ込んだ形跡がわかる。

ブーダンも大いに気になるけれど、今回は、レユニオン島の料理と食べ比べてみたかった。それで、前菜はサモサやバナナのフライなどの揚げ物盛り合わせを、メインには前回食べ損ねたルガイユ(トマトがベースの煮込み)を注文。万央里ちゃんは迷わず、ベジタリアンプレートに決めていた。

バナナのフライにルガイユ、南の風が吹くアンティル諸島料理「Corossol」

揚げ物の並んだショーケース

テイクアウトもできるフライが並んだショーケースの上には、大きなガラスの壺(つぼ)が並んでいる。中に漬け込まれているのはショウガのようだ。お酒はきっとラム酒だろう。壺のふたに巻いてあるアフリカンテイストの布も可愛くて、飲んだら踊り出したくなりそうだ。

じわっと汗をかく暑さの中、外の風を感じる環境でこういう料理はうれしい。もう15年くらい前だろうか。パリの高級住宅地にあったモーリシャス料理の星付きレストランで食事をした時に、バナナの葉に包まれた料理が出てきて、私は違和感を覚えた。こんなに冷房の効いたところじゃなくて、生ぬるい空気の中で食べたいよなぁと思ったのだ。その点、このマルシェ内の店は、気分が盛り上がる。

バナナのフライにルガイユ、南の風が吹くアンティル諸島料理「Corossol」

ひき肉入りサモサやバナナのフライの盛り合わせ

揚げ物の盛り合わせには、サラダが添えられていた。高さのあるガラスの器にサラダ。ここにエビでも刺さっていたら、途端に海辺のバカンス気分になりそうだ。私はこの中で、何よりもバナナのフライが楽しみだった。
バナナは2種類盛られていた。一つは甘みが少なくボソっとして、サツマイモみたい。もう一つはよく知るバナナの味で、甘みが強く、ちょっと酸味があって、とろっとしている。一つの素材をこうして食べ比べられるのは面白い。これがかぼちゃでもサツマイモでもきっと同じように発見があるだろうなぁと思う。

2種のバナナの横に、コロンと丸いお団子を揚げたようなものが転がっていて、何かと思ったら、これもバナナの味がした。バナナケーキを揚げたような感じで、おいしい。ただ、生地は弾力があって、かなりしっかりしている。小麦粉じゃなさそうだ。キャッサバ粉かタピオカ粉でも使っているのかな。でもこの、モチっとした食感は好きだ。歯応えがあるのがいい。

バナナのフライにルガイユ、南の風が吹くアンティル諸島料理「Corossol」

ころんと丸いボウル状のものの中身はバナナケーキの味

結局、サラダを境に半分がバナナで、反対側はひき肉や野菜が詰められたものだった。そのうちの一つ、緑野菜の詰められたものが、何を具材にしているのかしばらくわからなかった。深い緑色をしている。揚げ物メニューに列記されている野菜はポロネギだけだ。

ちょびちょび食べては、味をみる。ホウレン草のようにえぐみがあるわけではなく柔らかい味だけれど、葉は厚みがあり、やわじゃない。しばらくして、これはポロネギの緑の部分だけを使っているのではなかろうか、と思い至った。だしをとるのに緑の部分だけを使うことはあっても、具として緑の部分だけを使うことは、なかなかない。これはうれしい発見をした。

バナナのフライにルガイユ、南の風が吹くアンティル諸島料理「Corossol」

メインのベジタリアンプレート

バナナのフライにルガイユ、南の風が吹くアンティル諸島料理「Corossol」

メインに頼んだソーセージ入りのルガイユ

ごはんがこんもり盛られて出てきたルガイユには、ゴロゴロとソーセージが入っている。私はソーセージが大好きなのだ。汁はさらっとしているが、これがなかなかにスパイシー。ショウガがたっぷり入っている。たまにシャキシャキいうくらい。ニンニクも遠慮なく入っている。もしかしたら唐辛子も少し加えられているかもしれない。でも、ショウガが何よりも効いている。

少し苦みを含んだ風味はパプリカだろうか。トマトの皮があるから、水煮缶ではなくフレッシュなものを使っているようだ。そして、ソーセージ。粗びきで、スモーキーで、皮がバリッと香ばしい。このソーセージの味に、パプリカらしき風味がとてもあっている。

ボリュームがあってすごくおなかいっぱいになったけれど、胃もたれすることもなく、意外に、わりとすぐに小腹が空いた。これはいい!!と、2日後、テイクアウトをしに買いに行った。

バナナのフライにルガイユ、南の風が吹くアンティル諸島料理「Corossol」

Corossol コロッソル
39, rue de Bretagne 75003
01-48-87-32-71
10時~17時(木~22時、土~20時)
月休み

PROFILE

  • 川村明子

    東京生まれ。大学卒業後、1998年よりフランス在住。ル・コルドン・ブルー・パリにて製菓・料理課程を修了後、フランスおよびパリの食にまつわる活動を開始。現在は執筆のほか、パリで活躍する日本人シェフのドキュメンタリー番組『お皿にのっていない時間』を手掛けている。著書に『パリのビストロ手帖』『パリのパン屋さん』(新潮社)、『パリ発 サラダでごはん』(ポプラ社)、昨年末に『日曜日はプーレ・ロティ』(CCCメディアハウス)を出版。
    noteで定期講読マガジン「パリの風と鐘の音と。」始めました!

  • 室田万央里

    無類の食べ物好きの両親の元、東京に生まれる。
    17歳でNYに移り住んだ後、インドネシア、再び東京を経て14年前に渡仏。
    モード界で働いた後に“食べてもらう事の喜び”への興味が押さえきれずケータリング業に転身。
    イベントでのケータリングの他、料理教室、出張料理等をパリで行う。
    野菜中心の家庭料理に妄想気味のアジアンテイストが加わった料理を提供。理想の料理は母の握り飯。未だその味に到達できず。
    Instagram @maorimurota

《パリの外国ごはん そのあとで。》猛暑だから! レユニオン島のトマトカレーとサバのサモサ

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《パリの外国ごはん そのあとで。》アンティル諸島風、ソーセージのルガイユと野菜プレートで夏を締める!

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