このパンがすごい!

前歯と奥歯が大喜び! 焼きたて「ぱっつん」ベーグル/SIDEWALK STAND BAISEN & BAGEL

前歯と奥歯が大喜び! 焼きたて「ぱっつん」ベーグル/SIDEWALK  STAND BAISEN & BAGEL

アジアーゴ + メープルウォルナッツ

 前歯は噛(か)み切りたいと待ち構えている。奥歯は噛み潰したいとうずうずしている。歯が、歯として生まれてきた本能をフルに満たしてくれる食べ物こそベーグルである。

 しかし、日本のベーグルは、奥歯ぎゅうぎゅう感覚こそ思いのまま満たしてくれるものの、前歯ぱっつんの快楽まで味わわせてくれるベーグルはそれほど多くない(個人的感想)。
 そこへ現れた「SIDEWALK STAND BAISEN & BAGEL」。目黒川から1本奥に入った、2階建の一軒家。西海岸をほうふつとさせる店舗で、自家焙煎(ばいせん)したコーヒーと、その場で焼くベーグルが食べられる稀有(けう)な店。そのベーグルは、前歯と奥歯をともによろこばせた。

前歯と奥歯が大喜び! 焼きたて「ぱっつん」ベーグル/SIDEWALK  STAND BAISEN & BAGEL

シナモンレーズン+ロックススプレッド、自家製水出しコーヒー

 「シナモンレーズン+ロックススプレッド」。いざ前歯をむき出して飛びかかれば、くにゅっと沈み、ぱきっと割れる。奥歯で噛めばむぎゅーと潰れる。ぎゅーぎゅー噛みしめているうちにちゅるりと溶けた麦が口の中に香ってくる。ロックススプレッドは、クリームチーズにスモークサーモンとディルを混ぜ込んだもの。ひんやりとしたクリームチーズとあたたかな麦の香ばしさが出会い、やがてはもろともにとろけて麦もチーズもひとつの快楽の流れとなる。

 「もちもち」ではなく、よりNY的な「ぱっつん」。その食感にどのようにたどりついたのか。絶対的なオーナーシェフが店を引っ張る一般的なベーカリーと異なり、チームで作りあげた。

前歯と奥歯が大喜び! 焼きたて「ぱっつん」ベーグル/SIDEWALK  STAND BAISEN & BAGEL

店内風景

 在米経験のあるオーナーのイメージは、NYベーグル。ベーグル店で修業経験のあるスタッフはいなかったが、「ベーグル部」を結成、チームで研究がはじまった。その活動は「いっしょにいろんなベーグルを食べて、『自分たちがおいしいと思うベーグル、これだよね』」と語り合うことだったと、中心になって開発に携わった立石健人さんはいう。

 知り合いのベーグルショップで研修、日本だけでは情報が限られるため、ネットを駆使して現地の情報をかき集めた。

「YouTubeを見て、ミキシングのシーンで粉袋が出てきたときに止めて、どんな粉か確認したり」

 国産小麦も試したが、理想の食感に近づいたのは、アメリカの製粉会社「ボブズ・レッドミル」との出会い。粒子が粗めのアメリカの製粉は、歯切れよさ、麦の香りの濃厚さを出すのに一役買ってくれる。甘さは砂糖ではなく、モルト(大麦の麦芽エキス)をたくさん入れることでコクを出し、ミキシングも日本で一般的な縦型ミキサーではなく、アメリカでよく使用されるスパイラルミキサーを使用することに行き着いた。
 よそから完成品を買ってくるのではなく、作れる人を外部から招くのでもなく、「ベーグル部」というチームで。

「時間がかかるが、順を追って、丁寧にやっていく。外からぽんときてやっても、サイドウォークの味はできない。みんなで話しあうことで、『サイドウォークってこうだよね』という共通語ができる」と全店舗を統括する今谷忠弘さん。

 おしゃれなインテリア。その中でテーブルは日曜大工のようなクラフト感があった。これもスタッフのひとりが手作りしたものだという。

「気持ちいい場で、いいスタッフがいれば、駅から近くなくても、お客さんは来てくれます。その上で、最終的にいいお店になるには、『人の手』が入ることが大事です」

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ショコラサンド

 「ショコラサンド」は冷蔵ケースで冷やされているため食感はちがい、みしみしみしと抵抗しながら割れていく。濃厚にカカオの練りこまれた生地と、濃厚でビターなチョコクリーム。「むぎゅう」と「とろーり」、あたたかさと冷たさ。カカオの香りをあふれさせながら、二つのテクスチャーが麦のとろけの奔流へと合流していく。ここにコーヒーを流し込み、ほろ苦い液体で一気に流し去ってしまう快楽たるや。焙煎とベーグル。ともに手作りであるゆえの、心あるペアリングだった。

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外観

SIDEWALK STAND BAISEN & BAGLE
東京都目黒区青葉台1-15-9
03-6277-5714
9:00~19:00
無休
https://sidewalk.jp

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PROFILE

池田浩明

佐賀県出身。ライター、パンの研究所「パンラボ」主宰
日本中のパンを食べまくり、パンについて書きまくるブレッドギーク(パンおたく)。編著書に『パン欲』(世界文化社)、『サッカロマイセスセレビシエ』『パンの雑誌』『食パンをもっとおいしくする99の魔法』(ガイドワークス)、『人生で一度は食べたいサンドイッチ』(PHP研究所)など。国産小麦のおいしさを伝える「新麦コレクション」でも活動中。最新刊は『パンラボ&comics 漫画で巡るパンとテロワールな世界』(ガイドワークス)

http://panlabo.jugem.jp/

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