装いの物語り

「自分とリンクする」お守りのようなカメオのネックレス モトーラ世理奈さん

 
「装い」という言葉を辞書でひくと、「身なりを整えたり、身を飾ったりすること。また、その装束や装飾」という意味に加えて、「準備すること。用意。したく」とある。人は、TPOに応じて装っているのだとすれば、人の数だけ「装い」の個人史があり、ファッションにはきっと、思い出や記憶とリンクする、ごくパーソナルで断片的な物語が宿ることがあるのだ。「物を語る」ことで浮き上がる、そんな「物語」をさまざまな方の声を通して伝えていくこと、それが「装いの物語り」という連載のスタイルです。
(文・構成:山口達也 写真:服部恭平 キャスティング:和田典子)

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モデルとして『装苑』や『花椿』といった数々のファッション誌のページを飾りながら、俳優、歌手としても活躍の場を広げているモトーラ世理奈さん。誌面でのぞかせるプロフェッショナルな表情よりも、ぐっと朗らかな空気をまとっていた。

彼女の「物語り」は、今年敢行したアメリカでのロードトリップ中に購入したというこのネックレスのエピソードから始まった。

「これです」と物静かに口にして、華奢(きゃしゃ)なゴールドチェーンにカメオのペンダントトップが付いた首元のネックレスをくいっと引っ張り上げて見せてくれた。

「自分とリンクする」お守りのようなカメオのネックレス モトーラ世理奈さん

「車でサルべーション・マウンテンに向かう途中の何もない砂漠の道沿いに、ガレージセールと書かれた看板が立っていたので立ち寄ってみたんです」

家具からおもちゃまでが密集した物の山から、彼女の目を一瞬で奪ったのがこの小さなネックレスだった。「奥の方に座っているおじいちゃんに『これはいくら?』と聞くと、他のものも合わせて『4ドルでいいよ』って。売る気がないのか、むしろ持って行っていいよみたいな感じでした(笑)」

物の価値は、百人百様だ。モトーラさんは、導かれるように手にとったその小さなカメオのネックレスを、約半年前からほぼ毎日身につけていると言う。

「LAの違うお店で買った指輪も体の一部のようになっているし、そうですね、ちょっとお守りみたいな感覚があるのかなと思います」

直感で、心が動いた瞬間だった。

「東京でなく、あの場所で見つけたこと。その出会いにピーンときたんです」

惹(ひ)きつけられる物の共通点を尋ねてみると、自分らしい表現を探すかのように、少しだけ沈黙の時間が流れた。

「身につけるものや着るものが自分とリンクしていると感じられるかどうか……」と、言葉がこぼれた。

「もともとアクセサリーそのものに強い興味があったわけではないし、高価なものをつけたいという気持ちもあまりないんです。そのかわり、本当に自分が気に入ったものを見つけたら必ず買おうと決めていました。だからなのか、出会ってすぐにこれからもずっと持っていたいなって気持ちになったんです」

モデルの仕事で気づいた

モトーラさんは「本当に好きなもの」という言葉をたびたび口にする。

70年代の生地をリメイクしたもので、古着屋で購入したというレトロな小花柄のマキシスカート。小花のスタッズ(びょう)付きのスニーカー。手首のヘンプは、お母さんとおそろいなのだという。斜め掛けしたバッグにはたくさんのぬいぐるみとキーホルダー。「だんだん増えていってしまうんです(笑)」。今日も彼女は“お気に入り”の装いに包まれている。

「自分とリンクする」お守りのようなカメオのネックレス モトーラ世理奈さん

「中学生や高校生の頃は、すごく仲の良い友達との間で可愛い服装の“答え”のようなものが数パターン決まっていた感覚があって。その選択肢の中で自分に似合う服を着ることが楽しかった」

しかし、高校生で始めたモデルの仕事が、彼女自身の装いに変化をもたらしていった。

「仕事の現場でデザイナーの方と話したり、今まで触れることのなかった少し変わった服を見て実際に着てみたりを重ねていくうちに、流行(はや)っているものがすべてじゃなくて、本当に自分が好きだと思うものに正直でいいんだと気づきました」

その頃に購入したダボっとしたシルエットの、シンプルな紺色のワンピースに対する友人たちのリアクションを、今でもよく覚えているという。

「そのワンピースを着て一番仲良しの友達と遊んでいたら『魔女みたいだね』って言われて。そっかぁ、みんなはそう思うんだなって(笑)」

モトーラさんにとって親友同士の中にあった“答え”のひとつではなく、「“決まっている枠”から外れた初めての一着」だった。

「魔女って言われても、自分が心から好きだと思って着ている。『私はこれを可愛いと思うんだ』と、客観的に自分のことを見ることができてから、自分を表現するうえでファッションが欠かせない存在になると感じ始めたんです」

自分は嫌だと思っていたことを……

今年、モデルデビューから5年を迎えた。7月には歌手デビューを果たし、2020年まで出演した映画の公開が何本も控えている。表現者として、軽やかにチャレンジを続ける20歳のモトーラさんに、今の道を歩むきっかけについて尋ねた。

「自分とリンクする」お守りのようなカメオのネックレス モトーラ世理奈さん

「モデルになりたいと小学生の頃から思っていたんです。同時に『自分がモデルになれるわけない』とも思っていました。そんな中で、顔がいい、表情がいいねと本気で言ってくれる人がいた。それが自分の表現になるということを、出会った人の言葉で知ることができました」

たしかに自分らしさや個性の発見は、さりげない一言がきっかけになるのかもしれない。

「私にとっては歌も同じでした。『歌ってみたら?』と話をいただいたときも最初は、歌うことは好きだけど決してうまくない。自分の声を好きじゃない。私が歌って誰が聴いてくれるんだろうって思ったんです。

それでも、私の声をすごくいいねって。自分が嫌だと思っていた部分を、それがいいんだと言ってくれた。だから、新しい自分の表現として挑戦してみても面白いのかなって」

装いも、自己表現も、彼女の変化には“自分以外”の存在があった。自身と“リンク”する物との縁を感じる力と、自身の個性に投げかけられる一言をすっと吸収する彼女のスタイルが、誰のまねでもない表現につながっているのだ。

「自分とリンクする」お守りのようなカメオのネックレス モトーラ世理奈さん

モトーラ世理奈(もとーら せりな)
モデル、俳優。1998年、東京都生まれ。2015年1月号の『装苑』でモデルデビュー。『花椿』など雑誌や広告で幅広く活躍。ダブル主演をつとめた映画『少女邂逅』で映画デビュー。2019年には映画『おいしい家族』、映画『ブラック校則』、2020年には主演映画『風の電話』、主演映画『恋恋豆花』の公開が続く。今年7月3日には、「いかれたbaby」で歌手デビュー。

映画「ブラック校則」ヒロイン役(11月1日公開)
https://bla-kou.jp/

映画「風の電話」主演(2020年初春公開)
http://kazenodenwa.com/

映画「恋恋豆花」主演(2020年2月公開)
http://is-field.com/renren/index.html

 
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  • PROFILE

    • 山口達也

      ライター/エディター
      大学在学時より東京を拠点に国内外のファッションデザイナーやクリエイター、アーティスト、ファッションウィークなどを取材・執筆。近年は『i-D Japan』『Them』『AXIS』など様々なメディアに寄稿。

    • 服部恭平(写真)

      写真家/モデル
      2013年からファッションモデルとして活動し、数々のランウェイショーに出演。モデル活動の傍ら、プライベートなライフワークでもあった写真作品が注目を集め、近年は写真家としても活躍。

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