花のない花屋

出来なくなってしまった旅行。おばあちゃんに南国の花を

〈依頼人プロフィール〉
和久井誓子さん 38歳 女性
東京都在住
会社員

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出雲に住んでいる祖母はとても優しくおおらかな人で、私の大好きなおばあちゃんです。「おばあちゃん」扱いされるのは好きじゃないようで、いつもかわいく、若々しい雰囲気があり、国内外問わず旅をするのが大好き。まだ海外旅行が高嶺(たかね)の花だった時期から、祖父と2人であちこち出かけていました。私も旅行が好きで、アクティブなのは間違いなく祖母譲りでしょう。

祖母にはいま、子どもが4人、孫が11人、ひ孫が13人いますが、その中でも私は大学生になるまで近くに住んでいたこともあり、いつも大好きな祖母にべったりでした。

おばあちゃん、母、私の女3人で旅をしたことも何度もあります。また、私が中国を1人で旅しようとして両親に反対されたときは、「ツアーだったらおばあちゃんが連れていってあげる」といって、一緒に中国を旅してくれました。

いつも年齢を感じさせず、年をとってからもパソコンを習いに行ったり、「せいちゃんと同じ携帯電話がほしい」とスマートフォンを持ったり、遊びに行くと「パンのランチを作ったよ」とおしゃれなおもてなしをしてくれたり。こんな風に年をとれたらいいな……と思う私の憧れの存在です。

ところが、元気だと思っていたおばあちゃんも寄る年波には勝てないようで、昨年米寿を迎えてからは、足がパンパンにむくんでひざが痛くなったり、体が思うように動かなくなったりしてきたようで、少し心配しています。先日はLINEにこんなメッセージが届きました。

「いっぱい写真ありがとう。楽しそうでうらやましい! 私、老化現象と闘ってる! うまくメールがうてない! ひざが痛くて歩けない! 目がくしゃくしゃで読めない! 頭が理解不能! もうまともに相手にならんよ! この先どうしたらいいか悩みます。(私の息子の)湊ちゃん元気? がんばれ、(祖母ができるのは)応援のみ!」

おばあちゃんはケアハウスに住んでおり、母や家族がサポートしているので不安はありませんが、あれだけ遠出が好きだったおばあちゃんが思うように動き回れないのはふびんでなりません。私もいまは東京で働きながら子育てをしており、なかなか会いに行くこともできません。

そこで、珍しいお花を集めて、南国の島で海を眺めている気分になれるようなトロピカルな花束をおばあちゃんに送っていただけないでしょうか。おばあちゃんの家の前には日本海が広がっています。出雲は日照時間も短く、どんよりとした日が多いですが、そんな気候を吹き飛ばすような明るい花束を見て、海外旅行に行ったような気分にさせてあげられたらうれしいです。また、90歳近くになって初めて見るような植物が入っていたらステキだなあと思います。よろしくお願いいたします。

出来なくなってしまった旅行。おばあちゃんに南国の花を

花束を作った東さんのコメント

今回は南国のイメージをご希望でしたので、トロピカルな植物をたくさん使いました。大きなプロテアをはじめ、かんざしのような形のラン「カンザシ」やパフィオペディラム、ピンクとイエロー2種のピンクッション、サラセニア、ストレチアやヘリコニアなど、個性的な形の花々ばかりです。ちなみにサラセニアは、中の花の部分と外側を別々にして生けています。

南の国の植物はインパクトがありますが、優しい雰囲気も出したかったので、周りには可愛らしいヒペリカムの実と、リボン巻きにしたドラセナの葉を挿していきました。色も少し抑えめにし、やわらかい感じにまとめています。

全体的に持ちもよく、そのままドライフラワーにもしやすい花ばかりですので、長く楽しんでくださいね。

出来なくなってしまった旅行。おばあちゃんに南国の花を

出来なくなってしまった旅行。おばあちゃんに南国の花を

出来なくなってしまった旅行。おばあちゃんに南国の花を

出来なくなってしまった旅行。おばあちゃんに南国の花を

(写真・椎木俊介/ライター・宇佐美里圭)

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  • フラワーアーティスト・東信 (あずままこと)

    出来なくなってしまった旅行。おばあちゃんに南国の花を

    1976年生まれ。
    2002年より花屋を営み続け、現在は東京・南青山にてオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。2005年よりフラワーアーティストとして、ニューヨーク、パリ、ドイツ、ブラジル等、国内外で精力的な活動を展開。独自の視点から花や植物の美を表現し続けている。
    作品集に「ピエール・エルメ サティーヌ」「ENCYCLOPEDIA OF FLOWERSII 植物図鑑」(ともに青幻舎)など。

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    http://azumamakoto.com/

    PROFILE

    椎木 俊介(写真)

    ボタニカル・フォトグラファー

    2002年、東信とともに、銀座にオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。東が植物による造形表現をはじめると時期を同じくして、カメラを手にし、刻々と朽ちゆき、姿かたちを変容させていってしまう生命のありようを写真に留める活動に傾倒していく。日々、植物に触れ、その生死に向き合ってきたからこそ導き出すことのできる、花や植物のみが生来的に有する自然界特有の色彩や生命力、神秘性を鋭く切り取っていく。

    2011年に初の作品集となる東信との共著『2009-2011 Flowers』(青幻舎)を発表以降、常に独特の視点ですべての東の作品を捉え続け、近年は映像制作にも力を入れ、多岐にわたる活動を行っている。

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