このパンがすごい!

大人気イタリアン「ヒラコンシェ」平子シェフの濃密な“ライブ”に泣く/アマムダコタン

大人気イタリアン「ヒラコンシェ」平子シェフの濃密な“ライブ”に泣く/アマムダコタン

店内風景

 次から次へ女子が吸い込まれていく。天井からたくさんのドライフラワーをつり下げた、美意識あふれる店舗。そこに並ぶのは、イタリアンをほうふつとさせる、おしゃれでボリューミーな総菜パン。ソーセージははみ出し、てんこ盛りの野菜はこぼれ落ちる。心をきゅんとさせ、おなかもぐーぐーいわせる、ロマンチシズムと食欲が駆け抜ける2頭立て馬車。

大人気イタリアン「ヒラコンシェ」平子シェフの濃密な“ライブ”に泣く/アマムダコタン

ダコタンバーガー

 具もアイデアもあふれる「ダコタンバーガー」。一度手にしたが最後、無我夢中で取っ組み、食べ狂わねばならない。赤キャベツのコールスローの酸味、オリーブオイルのコク、夏野菜の甘さと香り、サルシッチャの肉々しさ、自家製マヨのまったりクリーミー。旨味(うまみ)と旨味の2乗、めくるめく混然一体。

 これに使われるパンもエッジが効いている。具材をがっぷり四つで支えるのは、ルヴァンによるパン。重く見えながらぷっつり歯切れ、穀物のつぶつぶ、発酵の酸味も相まって、味覚の躁(そう)状態に拍車をかける。

 福岡で大人気のイタリアンレストラン「ヒラコンシェ」の平子良太シェフがついにパン屋に乗りだした。名店「パンストック」にスタッフを派遣、ノウハウの吸収に努めた。料理人が挑んだパン屋、いったいどんな店になったのか?

大人気イタリアン「ヒラコンシェ」平子シェフの濃密な“ライブ”に泣く/アマムダコタン

チキンととうもろこしのサラダ ほうれん草のスティックロールサンド

「(料理人の)僕がパン屋の厨房(ちゅうぼう)に立っているわけで、そうなると普通にはいかず(笑)、『これ巻き込んだらどうなる?』『揚げたらどうなる?』とか、ちょこちょこ言っちゃうんですよね」

 話しているだけで湯水のごとくアイデアがあふれる人。上記ダコタンバーガーなら「野菜3種類は季節で変わります。ナス、カボチャ、パプリカ、金時ニンジン、ズッキーニ、カブ……。厚めにカットして、オーブンでしっかり焼いて、オリーブオイルを軽くかけて。サルシッチャ(腸には詰めない)を、パテみたいにフライパンで焼き付けて、赤キャベツマリネものせる」。

 具材はハムに至るまでほぼすべて手作り。朝買い出しに行き、旬の素材を見てイメージをふくらませ、アドリブでパンに仕上げる。
「そのときの気候、ノリ、余った材料、お客さんを見ながら。プライスカードもその場で手作り。めちゃくちゃライブ感ある。僕もスタッフもわくわくしながらやってます」

大人気イタリアン「ヒラコンシェ」平子シェフの濃密な“ライブ”に泣く/アマムダコタン

タンドリーチキンとグリルオニオンサンド

「タンドリーチキンとグリルオニオンサンド」。甘、辛、酸、旨、苦……情報量が多すぎてうれしい悲鳴をあげる、パンのサーカス。衣ざくざく、鶏ぱっつり。スパイシーな辛みが口の中に広がり、そこにトマトソースのフルーティーさ、ぷちぷち弾けるコーンなど野菜のジューシーさが絡み合って、味覚のネクストステージへ。オイリーさは、底のほうで息を潜めていたグリルオニオンと、伏兵コールスローによってさっぱりと。「こんなに食べきれなーい」はずが、ぺろっと完食。

「小さい頃、母がソーセージをフライにしてくれるのが大好きで。サンドはひとつの会社、ファミリーと考えます。大黒柱はお肉。それを支えるのは野菜。お兄ちゃんがナス、次男がカボチャとか。主菜はしっかり主張させ、野菜は甘くて、ソースを刺激的にしたりして、バランスを取る」

大人気イタリアン「ヒラコンシェ」平子シェフの濃密な“ライブ”に泣く/アマムダコタン

フルーツサンド。アマムダコタンカフェのテイクアウトメニュー

 最近、数軒先にカフェをオープンさせた。アマムダコタンで買ったパンをもちこみ、ドリンクを注文。ロマンティックな空間で、悠々と食べ狂うことができる。平子シェフが手がけるイートインメニューもただ事ではない。

「フルーツサンド」は、泡のように消え、唾液(だえき)の流れの藻くずとなる。完熟し、とろとろとなったイチジク、ふわふわ食パンにふわふわクリーム。かなりのボリュームだったものが、胃袋にワープ、しゅわっと瞬間的に消失。後にフルーツとミルクの甘い香り、そして感動の記憶が濃密に跡を留める。

「楽しくて、わくわく。お客さんの心を動かしたい、感動させたいっていうのが、めちゃくちゃある。『泣きそうになりました』ってけっこう言われます」
 パンで泣く。そんな体験をしに、福岡へ飛ぶ価値はある。

アマムダコタン
福岡市中央区六本松3-7-6
092-738-4666
10:00~19:00
日曜営業
定休日 水曜日
https://www.instagram.com/amam_dacotan/

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PROFILE

池田浩明

佐賀県出身。ライター、パンの研究所「パンラボ」主宰
日本中のパンを食べまくり、パンについて書きまくるブレッドギーク(パンおたく)。編著書に『パン欲』(世界文化社)、『サッカロマイセスセレビシエ』『パンの雑誌』『食パンをもっとおいしくする99の魔法』(ガイドワークス)、『人生で一度は食べたいサンドイッチ』(PHP研究所)など。国産小麦のおいしさを伝える「新麦コレクション」でも活動中。最新刊は『パンラボ&comics 漫画で巡るパンとテロワールな世界』(ガイドワークス)

http://panlabo.jugem.jp/

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