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「ジョーカー」にアメコミ映画初の栄冠 ベネチア国際映画祭

「ジョーカー」にアメコミ映画初の栄冠 ベネチア国際映画祭

金獅子賞を受賞した「ジョーカー」のトッド・フィリップス監督と主演のホアキン・フェニックス/Reuters

第76回ベネチア国際映画祭が8月28日(現地時間)から9月7日、イタリアの水の都で開かれました。映画賞シーズンの話題作のプレミア上映の場としても注目が高まる「世界最古の映画祭」。コンペティション部門ではホアキン・フェニックス主演の「ジョーカー」(10月4日公開)が最高賞の金獅子賞を獲得し、アメリカンコミック発の映画が三大映画祭の頂点を初めて制しました。

「ジョーカー」にアメコミ映画初の栄冠 ベネチア国際映画祭

授賞式のレッドカーペットでファンにサインする「ジョーカー」のホアキン・フェニックス/Reuters

「ジョーカー」はバットマンの宿敵ジョーカーの原点を描いたオリジナルストーリー。「ハングオーバー!!」シリーズなどのコメディで知られるトッド・フィリップス監督が社会の抑圧が生んだ心の闇を見据えた意欲作で、圧倒的な存在感を放ったホアキン・フェニックスも賞賛を集めました。

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コンペ部門の審査委員長ルクレシア・マルテルはアルゼンチン出身の映画監督。塚本晋也監督も審査員を務めた/Reuters

審査委員長のルクレシア・マルテル監督は、「ビジネス面を重視する映画業界でリスクを取ってこのような映画を作ったことは、米国のみならず世界全体にとって価値がある」とたたえました。昨年の金獅子賞作品「ROMA/ローマ」は米アカデミー賞監督賞など、一昨年の「シェイプ・オブ・ウォーター」は米アカデミー賞の作品賞を受賞しており、「ジョーカー」も今年の映画賞レースの大本命として注目を集めそうです。

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ロマン・ポランスキー監督に代わって「J’accuse」の銀獅子賞を受け取ったエマニュエル・セニエ/Reuters

次席にあたる審査員大賞はロマン・ポランスキー監督の「J’accuse(原題)」。19世紀末のフランスで無実のユダヤ人将校がスパイ罪に問われた「ドレフュス事件」を元にしたサスペンスです。1977年に起こした少女レイプ事件により米国では「逃亡犯」扱いになっているポランスキー監督のコンペ参加は#MeTooの支持者らから批判を浴び、「芸術作品と作者は切り離して考えるべきか否か」をめぐる議論も招きました。イタリアが米国と犯罪人引き渡し条約を結んでいるため、監督本人は映画祭を欠席。同作の出演者でもある監督の妻のエマニュエル・セニエが代理で受賞しました。

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女優賞のアリアンヌ・アスカリッド。受賞作「Gloria Mundi」は夫のロベール・ゲディギャンの監督作/Reuters

監督賞の銀獅子賞は「About Endlessness(原題)」のロイ・アンダーソンが獲得。「さよなら、人類」で2014年の金獅子賞に輝いたスウェーデンの鬼才監督が2作連続の受賞を果たしました。女優賞は「Gloria Mundi(原題)」で刑期を終えた男と再会する元妻を演じたアリアンヌ・アスカリッド。男優賞は「Martin Eden(原題)」で上流階級の女性と恋に落ちた船乗りの青年を演じたルカ・マリネッリが選ばれました。


「ジョーカー」にアメコミ映画初の栄冠 ベネチア国際映画祭

「Martin Eden」で男優賞に選ばれたイタリアの俳優ルカ・マリネッリ/Reuters

脚本賞は初のアニメーションに挑んだ「継園台七号(原題)」の楊凡(ヨン・ファン)。1960年代末の香港を描いた作品ですが、大規模な民衆デモの光景が香港の現実と重なり話題に。審査員特別賞はフランコ・マレスコ監督がシチリア島のマフィア撲滅運動を追ったドキュメンタリー「The Mafia Is No Longer What It Used to Be(英題)」。アメコミ映画、アニメ、ドキュメンタリーと多彩なジャンルに光をあてる受賞結果となりました。

是枝、オダギリ 国境を超えた映画作り


「ジョーカー」にアメコミ映画初の栄冠 ベネチア国際映画祭

オープニング作品に選ばれた「真実」の是枝裕和監督とカトリーヌ・ドヌーブ/Reuters

21作品が競ったコンペ部門では、是枝裕和監督の「真実」が日本人監督作品で初めて映画祭の開幕作品に選ばれました。自伝を出版したばかりのフランスの大物俳優(カトリーヌ・ドヌーブ)と米国で暮らす脚本家の娘(ジュリエット・ビノシュ)をめぐる物語で、ドヌーブとビノシュはこれが初共演。秋のパリを舞台に、久々に再会した家族の嘘と真実、過去と現在が軽やかなタッチで描かれます。 是枝監督にとっては初めての外国語作品でしたが、海外メディアでは「クレジットの監督名を見なければフランス人監督の映画だと思ったかもしれない」と真実味ある人間描写が高く評価されました。


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「サタデー・フィクション」の娄燁監督と出演のオダギリジョー、マーク・チャオ、コン・リー(右から)/Reuters

中国の娄燁(ロウ・イエ)監督の「サタデー・フィクション」にはオダギリジョーや中島歩が出演。太平洋戦争前夜の陰謀渦巻く上海租界を舞台に、コン・リー演じる俳優がスパイとして暗躍するモノクロのサスペンスです。オダギリの長編監督デビュー作「ある船頭の話」(9月13日公開)も、期待の新鋭が集うヴェニス・デイズ 部門で上映。10年越しで温めて来た自作脚本を王家衛(ウォン・カーウァイ)作品で知られる人気撮影監督クリストファー・ドイルと組んで映画化した作品で、マルチな才能が脚光を浴びました。


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「アド・アストラ」の公式上映に出席したブラッド・ピット。同作のプロデューサーも兼ねた/Reuters

ほかにもブラッド・ピットが父の謎を探す宇宙飛行士を演じるSF映画「アド・アストラ」(ジェームズ・グレイ監督/9月20日公開)、アダム・ドライバーとスカーレット・ヨハンソンが劇作家の夫と女優の妻を演じた「マリッジ・ストーリー」(ノア・バームバック監督)、メリル・ストリープ主演の「ザ・ランドロマット -パナマ文書流出-」(スティーブン・ソダーバーグ監督)などの話題作が登場。授賞式やレッドカーペットの模様はフォトギャラリーをご覧ください。

(文・深津純子)

>>続きは画面下のギャラリーへ ※写真をクリックすると、くわしくご覧いただけます。

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