花のない花屋

「子育て卒業」を喜びに。ステキな恋人と巡りあえた娘へ

〈依頼人プロフィール〉
河村詩織(仮名)さん 60歳 女性
愛知県在住
レカンフラワー作家

    ◇

26歳の一人娘が、先日はじめて家を出て、恋人と同居し始めました。私としては、同居したいと聞いたとき、「え、結婚する前に同居?!」と正直戸惑いましたが、まわりに相談すると「今の時代ふつうよ」。夫も「一度家を出た方がいいんじゃない」とのことで、反対していたのは、実際は私1人だけでした。

相手は娘の3歳年下で、娘が大学時代に夢中になっていた、よさこい踊りで出会った人です。遠距離恋愛を経て改めて近くにいたいと思い、一緒に住むことを決めたそうです。

今は実家から車で30分ほどのところに2人は住んでいますが、会うたびにあまりに幸せそうなので、「すばらしい選択をしたんだな」と少し感動しています。

娘は、私が妊娠中毒症になった末、絶対安静の1カ月を経て1260グラムの極低出生体重児で生まれてきた子です。「生まれてきてくれてありがとう」という当初の気持ちを忘れないように育ててきましたが、私たちも母と娘。娘が思春期のときはバトルもいろいろとありました。

いま思えば、私が「すべて自分が正しい」と思い込み、相手の考えに聞く耳を持たなかったのが原因だったのでしょう。あるとき、娘とのバトルに疲れ果て友達に相談したところ、「自分が変わるしかないよ」と言われ、そうか!と腑(ふ)に落ち、自然に自分のスイッチを替えることができました。

するとどうでしょう。信じられないほど自分がラクになり、まるでブラックホールから一瞬でお花畑へ出たようでした。そして、そこにいたのはにこにこと笑っている娘でした。でも、娘はきっとそれまでもずっと笑顔だったはず。その笑顔に気づかなかったのは私です。

私と娘との関係はいろいろな時期がありましたが、彼女が今はステキなパートナーに出会い、新しい一歩を歩んでいると思うと、感慨もひとしおです。

そこで「生まれてきてくれてありがとう」「人生に幸あれ!」という気持ちを込めて、幸せが飛び出すような花束を作っていただけないでしょうか。娘はピンクのバラが好きなので、ピンクのバラをメインに私の好きなあじさいを加え、愛を感じられる花束にしてもらえるとうれしいです。また、後にレカンフラワーの作品にして飾りたいので、ドライフラワーになりやすいアレンジにしていただけないでしょうか。

この記念の花束を胸に、「子育て卒業」の寂しさをよろこびに変え、新しい家族の関係を楽しんでいきたいです。よろしくお願いいたします。

「子育て卒業」を喜びに。ステキな恋人と巡りあえた娘へ

花束を作った東さんのコメント

リクエストにお応えし、ピンクのバラとアジサイをメインにした花束です。バラはラロックという変わった種類と、カンタービレというスプレー咲きの2種類を使いました。子育て卒業とのことだったので、かわいらしいというよりは、大人っぽくまとめることを意識しています。

アジサイは人気のある花材で、最近は年間を通していろいろな種類のものが手に入るようになりました。今回は花弁がフリルになったアジサイを挿しました。

バラとアジサイの下は、トルコキキョウをたくさん使ってボリュームを出し、ドラセナのリーフワークで全体を締めています。

お母様と娘さんのステキな関係をお花で表現したつもりです。これからもどうかまた別の形でいい関係が続きますように。

「子育て卒業」を喜びに。ステキな恋人と巡りあえた娘へ

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「子育て卒業」を喜びに。ステキな恋人と巡りあえた娘へ

(写真・椎木俊介/ライター・宇佐美里圭)

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    フラワーアーティスト・東信 (あずままこと)

    「子育て卒業」を喜びに。ステキな恋人と巡りあえた娘へ

    1976年生まれ。
    2002年より花屋を営み続け、現在は東京・南青山にてオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を

    構える。2005年よりフラワーアーティストとして、ニューヨーク、パリ、ドイツ、ブラジル等、国内外で精

    力的な活動を展開。独自の視点から花や植物の美を表現し続けている。
    作品集に「ピエール・エルメ サティーヌ」「ENCYCLOPEDIA OF FLOWERSII 植物図鑑」(ともに青幻舎)

    など。

    facebook

    instagram

    http://azumamakoto.com/

    PROFILE

    • 宇佐美里圭

      1979年、東京都生まれ。東京外国語大学スペイン語学科卒。在学中、ペルー・クスコにて旅行会社勤務、バルセロナ・ポンペウファブラ大学写真専攻修了。ワールドミュージック誌、スペイン語通訳、女性誌、『週刊朝日』編集部を経て、『アサヒカメラ』編集部。料理研究家・行正り香さんの書籍を多数手がける。ラテン音楽、山、ワインが好き。

    • 椎木 俊介(写真)

      ボタニカル・フォトグラファー

      2002年、東信とともに、銀座にオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。東が植物による造形表現をはじめると時期を同じくして、カメラを手にし、刻々と朽ちゆき、姿かたちを変容させていってしまう生命のありようを写真に留める活動に傾倒していく。日々、植物に触れ、その生死に向き合ってきたからこそ導き出すことのできる、花や植物のみが生来的に有する自然界特有の色彩や生命力、神秘性を鋭く切り取っていく。

      2011年に初の作品集となる東信との共著『2009-2011 Flowers』(青幻舎)を発表以降、常に独特の視点ですべての東の作品を捉え続け、近年は映像制作にも力を入れ、多岐にわたる活動を行っている。

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