ART&MOVIE

沢尻エリカさん「年代ごとにすべきことが必ずある。今は、ちょうどシフトチェンジの時かな」

映画『パッチギ!』で数々の新人賞を受賞した10代。20代は主演作が続く中、映画『クローズド・ノート』の舞台挨拶(あいさつ)での発言が物議をかもした。そして30代を迎えた俳優・沢尻エリカさんが、映画『人間失格 太宰治と3人の女たち』では太宰治を愛する3人の女性のひとり、太田静子を演じている。愛人という存在とは思えない明るさとピュアさで突き進む静子は、沢尻さんにとってどんな人物に映ったのだろうか。

「実花さん(蜷川監督)からのオファー、かつ小栗(旬)くんが主演ということで決めました」

出演を決めた理由を、潔い言葉でそう語る。監督の蜷川実花さんとは、映画『ヘルタースケルター』から2度目のタッグとなる。現場で監督から言われた言葉は、「とにかくハッピーでルンルン。いつもの可愛い感じで」だったと振り返る。

「今回の役は、重い要素が一切ないんです。最初に実花さんからオファーをいただいた時、『次はどんな重い役が来るんだろう』と身構えていたところがありました。まず脚本の静子の部分だけを読んでみたら、楽しそうじゃん!って。これがもっと重い役だったら、引き受けていなかったかもしれないですね(笑)」

沢尻エリカさん「年代ごとにすべきことが必ずある。今は、ちょうどシフトチェンジの時かな」

太田静子は、作家を目指す太宰の弟子であり愛人でもある。豊かな文才としたたかさで太宰を惹(ひ)きつける。遠方から恋文で思いを募らせ、「子どもが欲しい」と懇願、太宰の子を身ごもる女性だ。

「静子に共感する部分は、一切ないです。でも、恋をするハッピーな気持ちは共感できますよね。ただ静子は、一番欲しいものを手に入れた女性だから余裕があるのかな。どんな恋愛でも3カ月で熱も冷めてくると思いますし、手に入れたものがある分、彼女なりに成立していたんじゃないかと思います。きっと静子のように考える人はいるんじゃないですか」

究極のダメ男だが同時に魅力のある太宰治を演じるのが小栗旬さん。現場でもムードメーカーになり、ヘビーなシーンを牽引(けんいん)していた。

「重いシーンを撮影しているけど、撮影の待ち時間にはみんなでトランプをしたりゲームをしたり、和気あいあいとしていました。小栗さんはすごくフレンドリーで嫌な感じが一切ないんです。内面に人を惚(ほ)れさせてしまう何かを持っている方だと感じましたね。とにかく、小栗さんが本当にカッコ良かった、それに尽きます」

沢尻エリカさん「年代ごとにすべきことが必ずある。今は、ちょうどシフトチェンジの時かな」

監督・蜷川実花さんらしいこだわりのセットや衣装も健在。ゴージャスでこだわり尽くされた映像美や世界観の素晴らしさは見逃せない。

「実花さんは、すべてにおいて貪欲(どんよく)でとにかくパワフル! この作品の魅力のひとつは、女性たちの覚悟みたいな部分を描いているところだと思います。太宰治が主人公ではありますが、太宰を取り巻く3人のただの女性たちではなくて、ダメで魅力的な男に振り回されて、それでも強く生きていく。それぞれのストーリーを太宰だけの視点ではなく、別の視点からも描けるのは、実花さんだからできたことだと思います」

美しいシーンのひとつには、小栗さんと沢尻さんの色っぽいシーンも。沢尻さんの美しい背中と、しなやかな広背筋に目を奪われる。

「今回は、それほどでもないですよね。『ヘルタースケルター』の時は、ガンガンいこうぜ! みたいなノリもあって(笑)。私は作品に必要であれば、体のどこが見えてもいいし、脱ぐことには抵抗がないんです。今回、自分の中ではおとなしめだったかな(笑)。体の見えるシーンを撮るから引き締めるというよりは、30代になって体づくりのため3年くらい日常的にトレーニングを続けています」

沢尻エリカさん「年代ごとにすべきことが必ずある。今は、ちょうどシフトチェンジの時かな」

日々のトレーニングやメンテナンスを欠かさなくなった沢尻さん。息抜きは、週1回の外食とお酒を楽しむ時間だと言う。

「理想を言えば、毎日おいしいごはんとお酒を飲みたいけど、むくみやすいし太りやすいんですよ。だから週1回。出かけると誘惑が多くてつい不摂生しちゃう。だから、無駄に出歩かないようにしています。それに、10代や20代のときは問題なくても、30代になると如実に体に現れますね。年代ごとにすべきことが必ずあると思いますし、楽しみもね。今は、ちょうどそのシフトチェンジの時かなと思っています。

仕事も遊びも手を抜かず、全力で楽しみたいから、海外旅行に行ったり、温泉に行ったり、キャンプに出かけたりして。ただ今年は、大河ドラマ『麒麟がくる』の撮影があるので、1年間は仕事に集中しようと思っています」

沢尻エリカさん「年代ごとにすべきことが必ずある。今は、ちょうどシフトチェンジの時かな」

沢尻さんの俳優としてのキャリアは順風満帆だが、結婚願望や出産などこれからのことも気になるところだ。

「幸せは人によっても違いますしね。キャリアのこと、結婚するしないどちらの人生もあるわけで、理想と現実は違うし、正解もない。計画通りに行くかどうかも分からないし……。自分なりに何が一番幸せかを見つけなきゃいけないと思います」

10代から第一線を走り続け、トップ俳優として駆け抜けてきた今。「演じたい」思いは変わらず、輝きをさらに増し続けている。そのモチベーションになっているものとは?

「単純に芝居が好きなんだと思う。演じることが好きなんです。違う世界を見られる楽しさ、自分じゃない人間になれる面白さ。それに興奮し続けているからでしょうか。正直、芝居の上手、下手とかは全然気にしていないんです。評価もあまり気にしていません。自分が楽しくやれていることが重要で、それを与えてもらっている今、素晴らしい環境で芝居ができることに感謝しかないです」

(文 武田由紀子)

    ◇

沢尻エリカ(さわじり・えりか)
1986年4月8日生まれ、東京都出身。『パッチギ!』(05/井筒和幸監督)で数々の新人賞を受賞し、同年のテレビドラマ「1リットルの涙」(CX)での高い演技力が評価される。主な映画出演作に『手紙』(06/生野慈朗監督)や『クローズド・ノート』(07/行定勲監督)、日本アカデミー賞優秀主演女優賞を受賞した『ヘルタースケルター』(12/蜷川実花監督)、『新宿スワン』(15/園子温監督)、『不能犯』(18/白石晃士監督)、『食べる女』(18/筒井ともみ監督)、『億男』(18/大友啓史監督)など

沢尻エリカさん「年代ごとにすべきことが必ずある。今は、ちょうどシフトチェンジの時かな」

映画『人間失格 太宰治と3人の女たち』

天才作家、太宰治。身重の妻・美知子とふたりの子どもがいながら恋の噂が絶えず、自殺未遂を繰り返す――。その破天荒な生き方で文壇から疎まれているが、ベストセラーを連発して時のスターとなっていた。太宰は、作家志望の静子の文才に惚れこんで激しく愛し合い、同時に未亡人の富栄にも救いを求めていく。ふたりの愛人に子どもがほしいと言われるイカれた日々の中で、それでも夫の才能を信じる美知子に叱咤され、遂に自分にしか書けない「人間に失格した男」の物語に取りかかるのだが……。
監督:蜷川実花
脚本:早船歌江子
出演:小栗 旬 宮沢りえ 沢尻エリカ 二階堂ふみ
成田 凌/千葉雄大 瀬戸康史 高良健吾/藤原竜也
配給:松竹、アスミック・エース
9月13日(金)ロードショー
公式サイト/http://ningenshikkaku-movie.com
© 2019「人間失格」製作委員会

「ジョーカー」にアメコミ映画初の栄冠 ベネチア国際映画祭

トップへ戻る

「元・底辺中学校」の日常から世界が見える ブレイディみかこさん(前編)

RECOMMENDおすすめの記事