店でも家でも、器でおいしく

<1>冷菜やデザートが映える、シャンパングラス/石澤季里さん

料理やデザートのおいしさを演出するなら、器にもこだわりたい。
“食の目利きたち”が敬愛する、器づかいがステキな人やお店をご紹介する連載が始まります。

クープ型のシャンパングラスで涼やかなおもてなし

今回の推薦者 … 畑中三応子さん(フードジャーナリスト)
紹介される人 … 石澤季里さん(ジャーナリスト、カルチャーサロン「プティ・セナクル」主宰)

「いつもすてきなアンティークの器で料理やお菓子、飲み物でもてなしてくれます。器と食べ物の組み合わせに、歴史や文学、風俗的な背景などもさらりと反映したり、南仏の骨董(こっとう)市で買った器にプロヴァンス風の料理を盛って思い出も楽しんだりと、豊富なアイデアでいつも楽しませてくれます」

フードジャーナリストの畑中三応子さんが紹介してくれたのは、東京・経堂にてフランス貴族の暮らしを通して、アンティーク誕生の舞台裏を学ぶカルチャーサロン「プティ・セナクル」を主宰する石澤季里さん。ジャーナリストとしてフランス・パリで暮らしながらフレンチ・アンティークの研究を重ねた石澤さんから、器づかいについて教えていただきました。

<1>冷菜やデザートが映える、シャンパングラス/石澤季里さん

石澤季里(いしざわ・きり)
ジャーナリスト。カルチャーサロン「プティ・セナクル」主宰。成城大学文芸学部ヨーロッパ文化学科在学中より雑誌ライターとして活動を開始。フランス料理を専門分野に決め、89年渡仏。様々な女性誌で特集ページを持つ一方、アンティーク鑑定士養成学校IESAに通い、アンティーク全般について学ぶ。93年同校卒業。帰国後、カルチャーサロン「プティ・セナクル(旧アンティーク・エデュケーション)」開校。著書に『パリ 魅惑のアンティーク』(CCCメディアハウス刊)など

1996年に『ヨーロッパのアンティーク市旅ガイド』を出版し、パリの蚤(のみ)の市がそれほど認知されていなかった日本にその楽しみ方を伝えた石澤さん。「知り合いでもない限り、パリで暮らす方のご自宅に入る機会はないので、アンティーク市には現地の暮らしが透けて見えるおもしろさがあります」

繊細で美しい、アンティークのシャンパングラス

パリに留まらず数々のアンティーク市を巡ってきた石澤さんのお気に入りは、フランスのシャンパングラス。特におすすめは、1920~1930年代のアール・デコ時代に作られたクープ型。

<1>冷菜やデザートが映える、シャンパングラス/石澤季里さん

クープ型の中でも、脚まで空洞になったシャンペノワーズは注ぎ入れたシャンパンが底から泡立つ様子が美しく、おもてなしにぴったり

本場ではシャンパンはテーブルではなく、人が集うサロンのような場で飲むケースが多いそう。「フランスでは、シャンパングラスはダイニングテーブルに並べる必要がないので、他のグラスとセットでそろえる必要はありません」

<1>冷菜やデザートが映える、シャンパングラス/石澤季里さん

デンマークの蚤の市やパリのクリニャンクールなどで購入。シャンペノワーズは出会えるチャンスが少ないので、多少デザインが違っても見つけたら購入している

クープ型のシャンパングラスには脚が空洞になっていないタイプもあり、口が広いので、ムースやゼリーなどの料理やスイーツの器としても使えます。

<1>冷菜やデザートが映える、シャンパングラス/石澤季里さん

石澤さんが今回ご紹介してくれたおもてなしの一品は「トウモロコシのムース コンソメのせ」。トウモロコシを電子レンジにかけて火を通したら実を軸から外してミキサーにかけ、塩・胡椒した後、軽く泡立てた生クリームとゼラチンを流しこんで固める。冷蔵庫に入れて冷えて固まった市販のコンソメスープをムースの上にのせて、チャービルを飾ることで華やかに

ムースを入れたシャンパングラスには、受け皿としてデンマークで購入したカモメのモチーフのガラス皿を。ムースを口に運びやすいアイスクリームスプーンを添えることで、おもてなし感のあるセッティングになります。

<1>冷菜やデザートが映える、シャンパングラス/石澤季里さん

「カモメ柄は海に囲まれたデンマークの器のモチーフに頻繁に使われています。このお皿を使うと、デンマークの北の海が思い出されて懐かしい気持ちになります」(石澤さん)

和物の器とも好相性

涼しさを演出するにはガラス皿が合いますが、季節や気分に応じて器を替えると印象が変わります。例えば、青森・弘前の骨董屋の片隅に忘れ去られていたという九谷焼を。シャンパングラスと和物の器は、お正月のおもてなしなどに重宝します。

<1>冷菜やデザートが映える、シャンパングラス/石澤季里さん

「金沢の前田家は小さな藩だったため、大きな藩ににらまれないようにと、自分たちは戦より工芸に力を入れていることをアピールしていたそう。そのおかげで、九谷焼や金沢漆など、工芸の技術が発達しました。松竹梅など、吉祥文様が盛りだくさんなのでお正月にも使えますし、どことなくシノワズリーで中華にも合いますね」(石澤さん)

ガラスでも和皿でも、立ち上がりのある5寸皿(直径15cm)はバランスがいいという。「立ち上がりがあると汁物を盛り付けても受け皿としても使えるので、汎用性(はんようせい)が高いです。セットでなくても、2枚ずつ別のものを購入して、いろいろなデザインを楽しんでもいいと思います」

日本の食卓に合うデザート皿と7寸皿

国内外問わず、アンティーク食器を長年追い続けてきた石澤さんは、直径21センチのデザートプレートをよく使用するそう。「海外のディナープレートは27センチあり、肉を盛り付けるのには向いていますが、日本人には大き過ぎると思います。日本の食卓に合うのは、デザートプレート。和皿では7寸皿と言われているサイズです。お箸を置いても、しっくりきます」

<1>冷菜やデザートが映える、シャンパングラス/石澤季里さん

石澤さんのお気に入りのデザート皿と7寸皿。デンマークの陶磁器ブランド「ロイヤル コペンハーゲン」のデザートプレートのほか、ルーブル美術館やオペラ座といったフランスの名所が描かれたシリーズなど、おもてなしの場に登場すると思い出話に花が咲くものばかり

また、小さなお皿も使い勝手がよく、蚤の市などで見つけるとつい購入してしまうという石澤さん。日本では愛らしく遊び心が感じられる豆皿が人気を呼んでいるが高価なものが多く、それに比べて海外の小さなお皿は、お手頃価格で購入できるのだとか。

<1>冷菜やデザートが映える、シャンパングラス/石澤季里さん

「砂糖やオリーブ、チョコレートなどの小さなスイーツを置いても様になる。箸置きにもできるので、シチュエーションに合わせて使っています」(石澤さん)

<1>冷菜やデザートが映える、シャンパングラス/石澤季里さん

オランダで購入したというデルフト焼きの小皿。花屋や水くみなど、仕事をするオランダの人々が描かれているのがユニーク

和食器や洋食器など、異なるデザインの小皿を食卓に取り入れても食卓が華やぎます。そのまま置いては統一感のない印象を与えてしまいますが、大きめのお盆やトレーなどにのせるとまとまりが出ます。

<1>冷菜やデザートが映える、シャンパングラス/石澤季里さん

古美術を扱う東京・目白の『山法師』で購入したというお盆。お盆の縁を飾る漆で留めた卵殻がアクセントに

フランスでは至る所でマーケットが行われており、アンティークを扱う蚤の市とはまた違う「ヴィド・グルニエ(Vide grenier)」と呼ばれるマーケットも。“物置小屋を空にする”という意味があり、プロの商人ではなく、一般人が自宅の不用品を売るフリーマーケットのようなものが楽しいと語る石澤さん。

「100軒出店している規模なら小ぶりな市で2時間ほどで回れます。大規模なものなら300軒ほど出店していて、見て回るのに半日はかかりますね。1万円もあれば十分お買い物を楽しめるので、ヨーロッパに旅行に行くのならマーケット巡りをするのもおすすめです。『ヴィド・グルニエ』以外にも『ブロカント(brocante)』と呼ばれる、アンティークまではいかないヴィンテージものを販売する市もあります」

「すべてのアンティークを使うたびに、楽しかった旅の思い出がよみがえります。アンティークと旅。私の二大偏愛です」という石澤さん。アンティークに出会う旅に出かけて、器とともに毎日を楽しく彩る暮らしを送ってみてはいかがでしょうか。

今回の推薦者
畑中三応子 (はたなか・みおこ)

編集者、ライター、フードジャーナリスト。『シェフ・シリーズ』『暮しの設計』(ともに中央公論社)の元編集長。料理本を幅広く手がけるかたわら、流行食関連の研究や執筆も行う。著書に『ファッションフード、あります。——はやりの食べ物クロニクル』(紀伊國屋書店、ちくま文庫)、『カリスマフード 肉・乳・米と日本人』(春秋社)など。第3回「食生活ジャーナリスト大賞」では「ジャーナリズム」部門の大賞を受賞。

(文・久保田真理 写真・齋藤暁経)

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<2>素材そのものの色みを生かす、白い皿/カンティーナ カーリカ・リ

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