このパンがすごい!

「パン飲み」の次は「おうちで」。パン職人vs料理人の規格外バトル/ブラン ア ラ メゾン

「パン飲み」の次は「おうちで」。パン職人vs料理人の規格外バトル/ブラン ア ラ メゾン

大宮のパンのシェフ和田尚悟さん(左)、虎ノ門の料理のシェフ大谷陽平さん

料理人とパン職人がタッグを組み、パンと料理とワインのマリアージュを追求、「パン飲み」で一世を風靡(ふうび)した虎ノ門のBlanc(ブラン)。今度は大宮に、和田尚悟さん率いるパン部門が独立、地域密着のベーカリーとなった。よそいきではなく、日常で、家族で使ってもらえる店にしたいと、Blanc à la maison(ア ラ メゾン=おうちで)と名付けた。

「パン飲み」の次は「おうちで」。パン職人vs料理人の規格外バトル/ブラン ア ラ メゾン

茄子とベーコンチーズ

充実の総菜パン。料理的な感覚で自由に素材を組み合わせ、固定観念に縛られない。「茄子とベーコンチーズ」はさすが埼玉、「ソース代わりに」岩槻のねぎみそを使用する。
ねぎみそとベーコン、和と洋の旨味(うまみ)が重なりスパークする。ナスがジューシーにあふれ、みずみずしいパン生地はいっしょにちゅるんと溶け、かすかなミルキーさをにじませる。

表面ぱりぱり、噛めばぱふぱふやわらかいこの生地、フランスパンではなく、あえてソフトフランスにしている。北海道産「はるきらり」というもともと軽さとミルキーさのある小麦ベースに、若干の脱脂粉乳によってそれらを強調する塩梅(あんばい)がエロティックだ。
「歯もすんなり入って、料理も邪魔しない。具材が主役だから、パンは少し横にずれてもらって」

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牛蒡とチーズとハニーマスタード

「牛蒡(ごぼう)とチーズとハニーマスタード」「柿とサラミ」などあまりの斬新さに名前だけでよだれがでる総菜パンのみならず、バゲット型に成形した「ソフトバゲット」にも使用。バゲットとしては規格外の薄皮がばりばり。中身はふるっとして、しっとりで、じゅわんと溶ける。最近見かけることがすくなくなったクラシックなバゲットのような軽やかさ。それはなぜなのか。

「コンベクションオーブン(対流を起こして加熱するオーブン)で焼くようなやわらかい生地を平窯(通常のオーブン)で焼くことで、ふわっと軽く仕上げています。大谷さん(料理人)に言われてやってみたら、おいしいのができた」
バゲットに向かないと思われている加水の多い生地をあえてバゲットとして焼く逆転の発想が、抜群に食べやすいバゲットを生んだ。

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季節のクリームパンとその断面

「クリームパン」を二つに割ってみよう。クリームの香り、小麦の香り、両方が立ちのぼるではないか。なつかしい×なつかしい。昔のコッペパンみたいに、甘くなくて、麦の香りがする上に、クリームもまた昔っぽく、小麦の分量が多く、ぽてっとしているのだ。クリームもちょっと少なめで、小麦の風味をしっかりと感じさせてくれる。

この一見なつかしいパンも、和田さんの斬新な発想が冴(さ)える。ぼいんぼいんと跳ねる生地は、牛乳100%に水も20%も加えた超高加水。しかもクリームは、バニラに代わってトンカ豆を使用。杏仁(あんにん)のような甘い甘い香りは、バニラ以上にエキゾチックで刺激的だ。

「パン飲み」の次は「おうちで」。パン職人vs料理人の規格外バトル/ブラン ア ラ メゾン

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カレーパンとその断面

パン職人と料理人のタッグ、というBlancの真骨頂がいちばんよく表れたのが「カレーパン」。私が食べた日はエビとワタリガニのビスク風味。猛烈なるダシ感、カニミソ感が、スパイス感とともに口に満ち、鼻に抜けまくる。そこに合わせるドーナツ生地はコーンフラワー(とうもろこし粉)を配合するユニークさ。甘すぎず、歯切れよく、食べ口軽やかで、おフレンチなカレーにしみじみと合う。

「虎ノ門で作ったシェフおまかせのカレーです。余った食材も活用し、日替わりで作っています。カレーといっしょにパテ・ド・カンパーニュを入れた日もあって、旨味がダブルになって、ものすごくうまかった」

Blancにタブーはなく、おいしければなんでもあり。「おまえがそうくるなら、こっちはこうだ」とばかり、パン職人と料理人が発想のバトルを繰り広げるジャムセッション。そこへ近々菓子職人も加入、トリプルタッグになる予定。これからどんなことをやらかしてくれるのか、大宮が気になって仕方ない。

Blanc à la maison
ブラン ア ラ メゾン
埼玉県さいたま市中央区上落合8-3-26
03-6273-3164
8:00〜18:30(売り切れ終了)
土日祝10:00〜18:30(売り切れ終了)
https://www.instagram.com/blanc_a_la_maison/

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PROFILE

池田浩明

佐賀県出身。ライター、パンの研究所「パンラボ」主宰
日本中のパンを食べまくり、パンについて書きまくるブレッドギーク(パンおたく)。編著書に『パン欲』(世界文化社)、『サッカロマイセスセレビシエ』『パンの雑誌』『食パンをもっとおいしくする99の魔法』(ガイドワークス)、『人生で一度は食べたいサンドイッチ』(PHP研究所)など。国産小麦のおいしさを伝える「新麦コレクション」でも活動中。最新刊は『パンラボ&comics 漫画で巡るパンとテロワールな世界』(ガイドワークス)

http://panlabo.jugem.jp/

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