パリの外国ごはん

チキン・エブリデイ! 誠実なフライドチキンと至極真っ当なポテト「Gumbo Yaya」

パリ在住のフードライター・川村明子さんと、料理人の室田万央里さんが、気になる外国料理のレストランを通してパリを旅する連載「パリの外国ごはん」。今回は、連載初の「アメリカ料理」です。実は唐揚げが(前回登場の)ソーセージよりも大好き、という川村さんに室田さんが提案したというフライドチキン、果たしてそのお味は……?

チキン・エブリデイ! 誠実なフライドチキンと至極真っ当なポテト「Gumbo Yaya」

イラスト・室田万央里

チキン・エブリデイ! 誠実なフライドチキンと至極真っ当なポテト「Gumbo Yaya」

チキン・エブリデイ! 誠実なフライドチキンと至極真っ当なポテト「Gumbo Yaya」

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私は大の唐揚げ好きだ。前回さんざんソーセージが好きだと書いたが、鶏の唐揚げにはかなわない。だから、「すごく気になっているフライドチキンのお店がある」と万央里ちゃんからメッセージが来た時には、ヤッホー!と声をあげたいくらいだった。彼女は、その店のサイドメニューに興味があって、サイドメニューだけを全部食べたいと言った。日本の鶏の唐揚げとアメリカのフライドチキンはだいぶ違うけれど、フライドチキンもやはり大好物だ。「じゃあ、チキンは私にお任せください」。かくして、この連載初となるアメリカ料理の店に行くこととなった。

チキン・エブリデイ! 誠実なフライドチキンと至極真っ当なポテト「Gumbo Yaya」

見ただけで元気になるような看板(写真・川村明子=以下同)

10区と19区の狭間にあるコロネル・ファビアン広場からちょっと入った抜け道に、ガンボ・ヤヤはあった。真っ赤な下地に、白抜きで書かれた店名は、それだけで元気になりそうな雰囲気で、その下のサザン・キッチンの文字と、さらに入り口の上に掲げられたチキン・エブリデイの文句に、いいねいいね、と心が躍る。

小さな店内は8割がた埋まっていた。客層が若い。隣のテーブルの2人組は、ハンバーガーを食べている。メニューに目を落として、思わず、感心してしまった。メインが9品あり、最後に書かれた一つは、ベジプレート。そのほかの8品すべてに、フライドチキン、の表記があった。ハンバーガーも、ワッフルで挟んだバーガーと、普通にバンズを使ったものの2種があるも、中身は同じで、いずれの主役もフライドチキンだ。

これは楽しい。子供の頃の感覚がよみがえる。チキンを2ピースにビスケットをつけるか、チキンフィレサンドにするか。これは私にとって、おそらく永遠に、例外なく毎度迷う選択だ。サイドメニューには、コーンブレッドもあったが、私の頭の中で描いている、スコーンを柔らかくしたような、かのファストフード店で“ビスケット”と呼ばれていたものとは違いそうだ。この店ではそれよりも、自家製と書かれたワッフルを食べるべきだろう。

最初に食べるものは、「フェイマス・チキン&ワッフル」だな

チキン・エブリデイ! 誠実なフライドチキンと至極真っ当なポテト「Gumbo Yaya」

メニューには、8品が並んでいるものの、チキン2ピースに付け合わせを2種か3種組み合わせるか、ワッフルとセットにするか、もしくは、もも肉ではなくフィレ肉にするか、それをバーガー風にするかの違いがあるのみで、あくまでも主役はフライドチキン。そのフライドチキンの味付けが異なるわけではなく、複雑な選択肢ではなかった。一つだけ、揚げたチキンをマリネ液に浸し、食パンに乗せて出す、と記された、スパイシーの注意書きのついたNashville Hot Chickenがあった。自家製ワッフルが売りのようなのに、わざわざ食パンがここで登場していることに興味が湧いた。

ただ、私の迷いはそこではなくて、フィレ肉にするかもも肉にするか、だ。これが、全くのプライベートで、そして自分一人で食べるのであれば、フィレ肉にしただろう。基本的に、フライドチキンは胸肉が好きなのだ。でも、店を発掘するような感じで訪問している今回、最初に食べるものは、「フェイマス・チキン&ワッフル」だな、と腹が決まった。Famousと謳(うた)っているくらい自慢の一品なのだ、きっと。

この「フライドチキンで勝負!」と感じられるメニューを前に、万央里ちゃんは「チキンは頼まずサイドメニューだけにする」と言っていたが、その主役となると思われていたマカロニ&チーズは、夜のみの提供と言われてしまった。そこで急きょ、Nashvilleチキンを頼むことに。サイドメニューでは、コールスローと、ホウレン草&アボカドのサラダを注文した。

どれくらい待っただろうか。20分、いや、もう少しかかったと思う。私たちのテーブルだけが遅いのではなく、どのテーブルも出てくるまでに時間がかかっていた。「これ、注文が入ってから揚げてるっぽいね」「そうだね」と言いながら、フライドチキンへの気持ちが募った。

チキン・エブリデイ! 誠実なフライドチキンと至極真っ当なポテト「Gumbo Yaya」

famousチキン&ワッフル

期待が大いに高まったところへ出てきたチキンは、ワッフルの上に乗っていた。ワッフルが添えてあるのではなく、その上に乗っている。そのいでたちは、人格があるかのようだった。これほどまでに誠実な表情のフライドチキンを見たことがあったかな?と思ったほどだ。そしてその時点で、もうおいしいことは決まっていた。衣にはハーブとみられる粒々や何かしらのスパイスだろう赤い点々が見て取れたけれど、さして問題ではなかった。

一口食べたら、じっくり時間をかけて揚げた、作りたての味が詰まっていた。それを受け止めるのに、粉糖の振りかけられたワッフルというのは絶妙なアイテムだった。このワッフルがまた、しっとりしながら軽やかで、モタっとしておらず、なんともいい塩梅だ。

チキン・エブリデイ! 誠実なフライドチキンと至極真っ当なポテト「Gumbo Yaya」

コールスローとホウレン草&アボカドサラダ

コールスローはフレッシュでさっぱりしている。わかりやすい味付けが身上のファストフードの代表格のような食べ物になりうるのに、どこにも媚(こ)びが顔をのぞかせていなかった。やっぱり、誠実なのだ。

チキン・エブリデイ! 誠実なフライドチキンと至極真っ当なポテト「Gumbo Yaya」

Nashville Hot Chicken

夏前に行ったレユニオン島料理の店で、ピーマンの一皿を「岩男くん」と私は命名したが、Nashvilleチキンはその親戚みたいな姿をしていた。食パンに乗っているその見た目にちょっと違和感を覚えるのは、おそらく食パンがトーストもされていない、白いままだからだろう。ソースがたっぷりかかったメンチカツを食パンに挟むなら、私はトーストしていないパンがいい。だから、こっちもまた食べる前から好印象だった。

「カラムーチョみたいだよ。アッコちゃん大丈夫かなー?」と万央里ちゃんに言われながら食べてみると、コチュジャンに赤パプリカを加えたような味に思えた。味噌カツを食べているみたいでおいしい。

チキン・エブリデイ! 誠実なフライドチキンと至極真っ当なポテト「Gumbo Yaya」

全部揃ってから、ポテトがないことに気づいた

フェイマス・フライドチキンにはポテトが付いているものと思い込んでいたら、付いていなかったので追加した。そうしたら、シンプルでちょっと武骨なポテトが出てきた。

チキン・エブリデイ! 誠実なフライドチキンと至極真っ当なポテト「Gumbo Yaya」

それで、フライドポテトを追加

誠実なフライドチキンと至極真っ当なポテトを食べて、店を出る頃には、じんわり優しい気持ちになっていた。

Gumbo Yaya Chicken And Waffles ガンボ・ヤヤ
3 Rue Charles Robin, 75010

PROFILE

  • 川村明子

    東京生まれ。大学卒業後、1998年よりフランス在住。ル・コルドン・ブルー・パリにて製菓・料理課程を修了後、フランスおよびパリの食にまつわる活動を開始。現在は執筆のほか、パリで活躍する日本人シェフのドキュメンタリー番組『お皿にのっていない時間』を手掛けている。著書に『パリのビストロ手帖』『パリのパン屋さん』(新潮社)、『パリ発 サラダでごはん』(ポプラ社)、昨年末に『日曜日はプーレ・ロティ』(CCCメディアハウス)を出版。
    noteで定期講読マガジン「パリへの扉」始めました!

  • 室田万央里

    無類の食べ物好きの両親の元、東京に生まれる。
    17歳でNYに移り住んだ後、インドネシア、再び東京を経て14年前に渡仏。
    モード界で働いた後に“食べてもらう事の喜び”への興味が押さえきれずケータリング業に転身。
    イベントでのケータリングの他、料理教室、出張料理等をパリで行う。
    野菜中心の家庭料理に妄想気味のアジアンテイストが加わった料理を提供。理想の料理は母の握り飯。未だその味に到達できず。
    Instagram @maorimurota

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