店でも家でも、器でおいしく

<2>素材そのものの色みを生かす、白い皿/カンティーナ カーリカ・リ

料理やデザートのおいしさを演出するなら、器にもこだわりたい。連載「店でも家でも、器でおいしく」は“食の目利きたち”が敬愛する、器づかいがステキな人やお店をご紹介します。

シンプルな白い皿が、料理のおいしさを引き立てる

今回の推薦者 … 日置武晴さん(写真家)
紹介される店 … イタリアン「Cantina Carica.ri(カンティーナ カーリカ・リ)」

「ここ何年かの流行のお店では、和テイストの器にあえてセンターを外して盛り付けているところが多いように感じますが、僕は白いお皿を使って、素材の色や盛り付けのセンスで勝負しているフレンチやイタリアンが好みです。そういった点で、カジュアルなイタリアンですが『ステキだなぁ』と思う店があります」

これまでに数々の料理写真を撮影してきた写真家の日置武晴さんが教えてくれたのは、東京・目黒にあるイタリアン「カンティーナ カーリカ・リ」(以下、カーリカ・リ)。

素材の色みやうまみをそのまま生かした料理を、素朴な白い皿に盛り付けてサーブしています。男性、女性を問わずに支持される器づかいとは?

<2>素材そのものの色みを生かす、白い皿/カンティーナ カーリカ・リ

東急東横線・学芸大学駅にあるオステリアバル「リ.カーリカ」の2号店。イタリア・トスカーナで修行したほか、フレンチや和食の経験も持つ堤亮輔オーナーシェフによる、旬の素材を生かした独創性のあるメニューが好評

今年9月末でオープンして4年になる東急東横線・都立大学駅の高架下にあるオステリアバル「カーリカ・リ」は、イタリアでワイン蔵を意味する「カンティーナ」を店名に冠している通り、レンガを配した壁と打ちっぱなしの床が、ワイン蔵の雰囲気を醸し出しています。
キッチンを囲むコの字型のカウンターには、オーナーがイタリアから持ち帰ったという肉料理用の無骨な木製のプレートや、8種類あるという様々なサイズの白い皿が積み重なっており、小気味よく働くスタッフの様子を眺めることができるのも、オープンキッチンならでは。

店長の石黒誉久さんによると、このお店では馬肉のタルタルを黒い皿に、肉料理を木のプレートにサーブする以外は、ほとんどの料理に白い皿を使用しているという。
「本場イタリアでも白いお皿を使うことが多く、リムと呼ばれる皿の縁に絵柄や色が入るくらいですね」

お店で使われる8種類の白い皿は形、サイズ、深さを変えているだけではなく、使われている色にもこだわりがあるそう。
「白でも微妙な色の違いがある。青みがかった白は料理が冷たく見えてしまうので、料理をおいしそうに見せてくれる白い皿を選んでいます。店内ではクロスなどを敷かず、深い茶色のカウンターやテーブルの上に直接料理を置くので、茶色とのコントラストでお皿の白が余計に映えるのだと思います」

<2>素材そのものの色みを生かす、白い皿/カンティーナ カーリカ・リ

 

盛り付け用の皿に欠かせない、白い皿の“リム”

取材に訪れた8月中旬にサーブしていたメニュー「水ナスとパルミジャーノ」は、リムを含めて外径20.5センチ(内径15センチ)の白い皿に、さっぱりとした味わいが涼を呼ぶ水ナスとパルミジャーノ・レッジャーノを盛り付け、オリーブオイルを振った前菜にぴったりな一品。

<2>素材そのものの色みを生かす、白い皿/カンティーナ カーリカ・リ

「白い器に淡いトーンの料理、そして軽やかなチーズのコントラストが好きです」と日置さんがお気に入りの一品と紹介してくれた「水ナスとパルミジャーノ」

パルミジャーノは粉状にすると味が強くなってしまうため、ピーラーで粗く削ることで水ナスの味もしっかり立たせられるのだとか。水ナスとパルミジャーノの味わいが、徐々に口の中で混ざり合っていくのを楽しめます。

薄い黄緑色の水ナスに白いパルミジャーノ。これを白い皿に合わせるのは味気なく、おいしそうに見せるには難度が高いように感じてしまいますが、「リムがあることで盛り付け用の皿という印象が強くなり、オリーブオイルの緑も入ることで白い皿でもまとまりが出ます」という石黒さんの言葉通り、小さな一品として存在感を放っています。

生産者の思いをフィーチャーする白い皿

なじみのイタリアンメニューであるカプレーゼ。トマトとバジルとの組み合わせが定番ですが、ここ「カーリカ・リ」では季節の野菜やフルーツと合わせたメニューを供しています。

握りこぶしほどある大きさのモッツァレラチーズに、旬を迎えていた桃を。冬にはイチゴや洋ナシを合わせることもあるそう。
「モッツァレラチーズは1年中生産されるものなので、旬の食材と合わせることで季節感を出し、チーズとの味の融合を楽しんでもらえれば」とシェフの服部新さん。

<2>素材そのものの色みを生かす、白い皿/カンティーナ カーリカ・リ

取材時の8月中旬には「熊本県菊池 原田さんの手作りモッツァレラと桃」を、外径22.5センチ(内径14センチ)、深さ3センチほどの円形の皿に盛り付けてサーブ。「シンプルで深さのあるこの皿は、スープやパスタ、サラダと汎用性が高いんです」(石黒さん)

桃のピンクとコショウの黒、オリーブオイルのグリーン、そして、白いモッツァレラ。これらのコントラストは、白い皿の上だからこそ、素材の色みを引き立て、おいしさを演出しています。ペアリングのドリンクには、ノンフィルターのスパークリングワインを。後味が桃のようで、この前菜との相性もぴったりです。

<2>素材そのものの色みを生かす、白い皿/カンティーナ カーリカ・リ

イタリア・トスカーナのワインメーカー「PACINA(パーチナ)」の生産者が来店した際に書いてもらったというサイン。店内の壁には、様々なワイン生産者のサインが書かれている

「カーリカ・リ」はこちらの店舗のほか、隣駅の学芸大学駅にある1号店、3号店と合わせて3店舗を展開しています。オーナーの堤亮輔さんは、自らの足で全国をまわり、おいしさを実感した食材を確かな生産者から仕入れており、モッツァレラの生産者の原田さんもその1人。

週2回熊本から直送されるモッツァレラは鮮度が抜群で、香りがよく、硬すぎず、柔らかすぎないほど良い弾力。そして、日本人が好む、上品なクリーミーさがあります。「自ら酪農を手がけ、ピザ専門店を営む立場でチーズづくりをしている原田さんに、同じ飲食店を営んでいる者として正直な感想を伝えています。生産者というより、一緒に試行錯誤してより良いものを目指す仲間という意識です」と石黒さん。

「カーリカ・リ」では、食材の持つ味わいを最大限に楽しむためにあえて素材を絞り込み、メインの食材を前面に、その周囲に野菜などを付け合わせるスタイルをとっています。ポークやトリッパのカツレツ、マグロ、アユなどのメインは、カットやスライスをせずにドンと大胆に盛り付けるスタイル。

それを受け止める白い皿は、キャンバスのような役割で、メインと付け合わせの食材を引き立てます。そんな潔い盛り付けが、男女問わず支持を得る秘密なのかもしれません。

<店舗情報>
住所 東京都目黒区中根1-5-2
電話番号 03-5726-9629
営業時間 ランチ:日~木曜12:00〜14:30(L.O.14:00)、ディナー:月〜木曜18:00~22:00(L.O.)、金曜 18:00~24:00(L.O.)、土 曜17:00~24:00(L.O.)、日曜 17:00〜21:00(L.O)
定休日 無休

今回の推薦者
日置武晴 (ひおき・たけはる)

写真家。1964年東京生まれ。婦人生活社、柴田書店の社員カメラマンを経て、フリーに。主に雑誌や書籍の料理撮影で活躍する。関わった本に、福田里香『果物を愉しむ100の方法―お菓子とリキュールと保存食―』、ドミニク・コルビ『フランス料理13章―日本で究めるモダン・クラシック―』(ともに柴田書店)、米沢亜衣『イタリア料理の本』(アノニマ・スタジオ)など多数。

(文・久保田真理 写真・齋藤暁経)

<1>冷菜やデザートが映える、シャンパングラス/石澤季里さん

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<3>様々な表情を見せる、陶芸家・中里花子の器/手島幸子さん

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