このパンがすごい!

未体験のもちもち感! 新麦で作る岩手「もち姫食パン」/PanoPano

 季節は収穫の秋。一足先に7月、岩手で収穫された新麦が、乾燥工程や製粉を経て、9月28日、ついに解禁となった。かつては南部小麦で名をはせた麦どころ、岩手。まったく新しい特徴をもつ品種が登場、日本のパンシーンをリードする存在となっている。その名も「もち姫」。

未体験のもちもち感! 新麦で作る岩手「もち姫食パン」/PanoPano

もち姫食パン

 生食パンがブームだが、盛岡で話題を呼んでいるのは、PanoPanoの「もち姫食パン」。未体験のもちもち感が衝撃を与えている。

 この食パンをスライスしようとしても一筋縄ではいかない。包丁を動かせばパンもいっしょに揺れ動き、やっと切ったと思ったらあまりのしっとり感ゆえに、吸盤のように刃に張り付いて離れない。なんというテクスチャーなんだ!

 濃厚に焼けた耳、特にてっぺんのたまらない香ばしさ。中身からはバターがミルキーに香っている。さて食べてみよう。もっちりなんて甘っちょろいものではない。むにゅんむにゅんもわんもわん。顎(あご)の力はあえなく吸い取られ、口腔(こうこう)がマッサージされるかのようなやわらかさ。ふにゅーと溶けていき、ミルキーな甘さの中にお米のようなフレーバーがかすかにたなびく。

未体験のもちもち感! 新麦で作る岩手「もち姫食パン」/PanoPano

究極のチーズトースト

 生でおいしいこのパンが、焼けばさらに化ける。PanoPanoのイートインスペースで提供される「究極のチーズトースト」。もち姫食パンをバルミューダでトースト、あつあつで提供される。とろり溶けたコルビージャックチーズ。パンもまたチーズとシンクロ。びよーんと伸び、とろーんととろける奇跡。一方でチーズのかかっていないところは、超ぱりぱり。快感にわななき、腰を抜かしそうになる。

 もち米やもち大麦のように「もち性」をもった小麦が「もち姫」。盛岡の研究機関(東北農業研究センター)で世界に先駆けて開発されたものだ。2006年にデビューしながら、長くマイナーな存在にとどまっていたが、2015年にPanoPanoがもち姫食パンを開発。その熱意に応えるように、県内の紫波町で生産がはじまった。

 それまで栽培されていた品種に比べ、もち姫の収量は3倍。しかも、生産者にとっては、自分の育てた小麦がどこにいくかわからなかったのに、もち姫は紫波町からそう遠くないPanoPanoで食パンとして売られているのを見たり、食べたりできる。生産者もよろこび、自治体は町おこしの起爆剤にしようと意気込む。もちろん地元の製粉会社で製粉。品種の開発から、生産、製粉、パンの製造まですべて岩手で行われる小麦なのだ。

未体験のもちもち感! 新麦で作る岩手「もち姫食パン」/PanoPano

塩バターロール

 PanoPano店長・菊池正延さんは、もち姫のよさをこう考える。
「もち姫には保湿性があります。のど越しがスムーズ。飲み物がなくても食べられる食パン。西洋人に比べて唾液(だえき)が少ない日本人に向いています」

 以前のもち姫食パンは、外国産小麦とのブレンドで作られていたが、菊池さんは、地元との連携をさらに進めるべく、岩手県産100%で作ることをもくろんだ。課せられるハードルは高い。ボリュームを出し、驚異的な食感はそのままに、やわらかすぎる生地を支え、腰折れを防がなくてはならない。もち姫に加え、同じく岩手県産の「銀河の力」、そして「ゆきちから」。特徴のちがう三つの小麦が「三本の矢」の教訓さながらに支え合う。濃厚に焼いた耳のおいしさは、腰折れ防止のため、長時間焼くことで皮を厚くしたことの副産物だ。

未体験のもちもち感! 新麦で作る岩手「もち姫食パン」/PanoPano

PanoPanoコッペ(あんバター)

 もち姫食パンの生地は、成型を変え、PanoPanoコッペ(あんバター)になる。まるでコッペ型の餅。低反発枕のごとくむにゅーんと沈み、もわーんと戻ってきて、ちゅるちゅるとろける。そのときのお米に似たフレーバーもまた、あんこと絶妙の相性。あんバタの新たな地平線を切り開く。

 誰もが一瞬で虜になる、岩手自慢のもち姫食パン。この9月には2店舗目もオープン、連日完売と聞く。岩手生まれ岩手育ちのこのパンを食べに、ぜひ盛岡を訪れてほしい。

PanoPano 盛岡向中野店
岩手県盛岡市向中野5-31-15
019-613-6262
8:00 ~ 19:00
月曜休(祝日は営業)
https://panopano.jp

>>フォトギャラリーはこちら ※写真をクリックすると、くわしくご覧いただけます。

■「世田谷パン祭り2019」池田浩明さんがワークショップ開催!
池田浩明(パンラボ) × 石島久美子(チーズプロフェッショナル)による、1日限りのスペシャル講座。
おなじみのパンに世界のいろんなチーズをはさんでカスタマイズしてみましょう。「こんなのあり?」という反則の組合せをご提案、みなさまに試食していただきます。
ずるいチーズパン祭り
【日程】2019年10月14日(祝)
【時間】11:00-12:00
【会場】IID 世田谷ものづくり学校 3F:2-A教室(301号室)
>>詳しくはこちら

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PROFILE

池田浩明

佐賀県出身。ライター、パンの研究所「パンラボ」主宰
日本中のパンを食べまくり、パンについて書きまくるブレッドギーク(パンおたく)。編著書に『パン欲』(世界文化社)、『サッカロマイセスセレビシエ』『パンの雑誌』『食パンをもっとおいしくする99の魔法』(ガイドワークス)、『人生で一度は食べたいサンドイッチ』(PHP研究所)など。国産小麦のおいしさを伝える「新麦コレクション」でも活動中。最新刊は『パンラボ&comics 漫画で巡るパンとテロワールな世界』(ガイドワークス)

http://panlabo.jugem.jp/

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