朝日新聞ファッションニュース

ナチュラルに、サステイナブルに 20年春夏、ミラノ&ロンドンコレクション

2020年春夏ミラノ、ロンドン・コレクションが9月23日まで開かれた。深刻な財政危機を抱えるイタリアと、EU離脱問題に揺れる英国。いずれの都市でもフラワーチルドレンなど、1960年代末から70年代前半の反体制的な自然回帰のロマンチックスタイルを、現代的に解釈した作品が目立った。

70年代スタイル 現代的に解釈

ミラノでは、69年のウッドストック音楽祭をほうふつとさせるようなフラワーチルドレンやヒッピー風のスタイルが目白押しだった。花柄のビッグドレスやサファリスーツ、タイダイ模様にパッチワーク……。

ナチュラルに、サステイナブルに 20年春夏、ミラノ&ロンドンコレクション

ジル・サンダー

なかでも、当時の気分をとり入れながらも単なるビンテージ風ではなく、シンプルに軽く仕立てたブランドが光った。筆頭はジル・サンダー。ゆったりとしたシルエットや天然繊維のラフィア使いなどは当時の雰囲気だが、素材や形に堅さと柔らかさなど相対立する要素を組み合わせ、ノーブルな印象を作り出した。

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(左)プラダ、(右)グッチ

プラダは驚くほどの簡素さ。襟が長いレトロなカシミヤシルクのポロシャツに、ごくシンプルなシルクのタイトスカート。白いガーゼのドレスも。ジャケットはクラシックな形だが、袖はいま風のボリュームだ。
必要最低限に削り込んだ服からは、社会に広がるあらゆる過剰さからの決別とも思える潔さが伝わってくる。「複雑さの解毒剤」。広報によると、デザイナーにはそんな意図があったという。

グッチもいつもの過剰さは消えていた。ゆるりとしたカフタンやデニムのパッチワークなど、主に70年代調。ショーの冒頭、質素な拘束衣風を着たモデルたちが空虚な表情でベルトコンベヤーのランウェーの上を流されていった。

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(左)ヌメロ・ヴェントゥーノ、(右)エトロ

他にヌメロ・ヴェントゥーノエトロもデザインにひとひねり加えた70年代調を並べた。

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ミッソーニ

自然回帰の流れと共に、環境保護やサステイナブル(持続可能)のアピールも。ミッソーニはフィナーレで、70年代の香り漂うスタイルに太陽電池のライトを持たせた。

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ヴェルサーチェ

ジャングルを模した舞台演出やプリントも多かった。ヴェルサーチェは20年前にグーグルが画像検索を作る契機となった、米グラミー賞歌手ジェニファー・ロペスが着たジャングルプリントを復刻。フィナーレでロペスが実際に着て歩き、会場を沸かせた。

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ジョルジオ・アルマーニ

大御所ジョルジオ・アルマーニは「地球」をテーマに、花や植物のモチーフを用いながら、素材とシルエットが微妙に響き合うような感覚の服を見せた。地元紙にアルマーニは「自分の周りで起きていることを観察し、守っていかなければ」と語った。

ミラノ・コレクションはここ数年、参加ブランド数が減るなど低迷が続いていた。しかし、伊ファッション企業の団体トップで、ヘルノのクラウディオ・マレンツィ社長は「品質やサステイナビリティーの面で実績があるからこそ、今が大きなチャンス」とみる。「よくできた商品への需要が高まる中、素材から仕立てまで質と創造性をもってまかなえる国は他にはないから」と話した。

クラフト感や詩情織り交ぜ

ロンドン・コレクションは、デザインフェスティバルとの同時開催により、街のあちこちにアートやファッションの活気がみなぎっていた。

ナチュラルに、サステイナブルに 20年春夏、ミラノ&ロンドンコレクション

(左)J・W・アンダーソン、(右)シモーネ・ロシャ

J・W・アンダーソンは、会場に毛糸を材料にする工芸作家の作品を並べて、70年代調のゆったりとした自然派スタイルにクラフト感や詩情を織り交ぜた作品を見せた。暖かみのある毛糸の刺繍(ししゅう)や花をかたどったブラジャー形の刺繍を施したシャープなドレスなど、現代版フラワーチルドレン。

市内中心部から車で北に30分。丘の上の古い劇場でショーを行ったシモーネ・ロシャは、フリルを重ねたパフスリーブのドレスなどドリーミーなスタイル。ワラ状の粗野な素材を合わせて、ナチュラルな印象に。

ナチュラルに、サステイナブルに 20年春夏、ミラノ&ロンドンコレクション

(左)バーバリー、(右)トーガ

人気デザイナーのリカルド・ティッシが手掛けて3シーズン目のバーバリーは、得意のトレンチコートのバリエーションをそろえた。解体して再構築したような仕立てやスカーフの切り替えなどに、ティッシらしい暗いロマンチシズムが漂う。

日本から参加のトーガは、テーラードジャケットとパンツのマスキュリンスーツに透明ビニールの花飾りを加えた。デザイナーの古田泰子は「ファッションという無駄を作るぜいたく。必要としないものを作ることでうまれる何かを見てみたかった」との言葉を資料に添えた。

来月末に期限が迫る英国のEU離脱問題は、ファッション界でも関税や雇用、生産などに関わる様々な支障が予想されている。英国のあるブランドの役員は「欧州内で生産しているので、価格の高騰が心配」と話した。イタリアでは「離脱すれば英国の失うものが大きい」との声が多い。あるブランドの社長は「どの国でも企業の経営戦略の予測が不可能な時代になったことは確か」と語った。

(編集委員・高橋牧子)

<写真は大原広和氏とRunway-Photographie撮影>

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