上間常正 @モード

魅力的に感じなければ始まらない 小泉環境相のセクシー発言の意味とは?

今回はちょっと番外風に、環境大臣として初入閣した小泉進次郎氏の〝セクシー発言〟について。ニューヨークで先月開かれた国連気候行動サミットの時の共同記者会見で、「気候変動問題に取り組むことはクールでセクシー」との発言がかなりの反響を呼んだ。具体策についての質問には何も答えなかった(答えられなかった?)ことへの批判も多く、自民党内までも含めた小泉バッシングの動きまでも起きているようだ。だがこの問題については、もう少し考えてみてもいいと思う。

魅力的に感じなければ始まらない 小泉環境相のセクシー発言の意味とは?

気候行動サミットに合わせて開かれたイベントで談笑する小泉進次郎環境相(右)=2019年9月22日、ニューヨークの国連本部、松尾一郎撮影

彼の演説や、特にキャッチフレーズのような短い発言は、熱がこもっていてかなり魅力的に聞こえる。大臣としてはまだ若くて、爽やかそうなルックスも影響しているだろう。しかしその発言をよく聞いてみると、意味が通らないことが多い。沖縄の県紙で見た記事によると、彼のそうした発言がツイッター上で話題になっていて、「小泉氏が言いそうなこと」を想像した投稿で面白さを競い合っているという。

たとえば、「年末年始。年の瀬。師走。こういう言葉を聞くたびにね、いつもこう思ってきました。もうすぐ新年だな、と」、「皆さん、私は、みなさんに、12時の7時間後は7時であり、19時でもあるということを真剣にお伝えしたい」……。なかなかの傑作ぞろいで、「本家ほど意味不明のことを言ってる人はまだいない! 本家つよいな!」などとの余裕をかました投稿もある。

これらの投稿は知的ユーモアがあって、小泉氏への個人攻撃やからかいを意図したものではない。しかしあえて言えば、彼だけではなく、また政治の世界に限らず多方面でまかり通っている「言葉の軽さ」への鋭い揶揄(やゆ)だと受け取ることもできるだろう。言葉の軽さということなら安倍首相の方がずっと本家にふさわしいし、短フレーズの演説スタイルということでは彼のパパ小泉純一郎元首相がまさに本家なのだ。

魅力的に感じなければ始まらない 小泉環境相のセクシー発言の意味とは?

千葉県南房総市役所近くの災害廃棄物の仮置き場を視察したあと、被災者に声をかける小泉進次郎環境相=2019年9月16日、南房総市、松尾一郎撮影

では小泉新環境相は本家などには値しない、出来がまあまあの単なる亜流に過ぎないのかといえば、必ずしもそうではない。今回のセクシー発言は、会見で同席していた国連気候変動枠組条約(UNFCCC)のクリスティアナ・フィゲレス前事務局長が先に使った言葉へのアドリブの引用だった。そのとっさの感覚的反応はなかなかのものが秘められている、と言ってよい。

なぜかと言えば、「軽さ」というのは時として物事の本質を最もシンプルで軽やかに表現して伝えることができるからだ。くどくどと理詰めで説明するよりも、大切なことは感覚で伝え合う方がずっと効果的なのだ。気候変動や自然環境問題の危機への対処については、多くの人は理屈でいくら説明されてもそれに感覚的に魅力を感じなければ、現状の快適さや便利さを変えてみようとはしない。この場合の「セクシー」とは言葉を変えて言えば、「おしゃれ」で「カッコいい」ということだろう。

不謹慎だとか、具体策がないという理由による今回の小泉バッシングは、このことが分かっていないからだ。現段階ではまず「セクシーでなければ」と言えばいいのだ。少なくとも、この問題を知らんふりしているアメリカへの忖度(そんたく)があるに違いないだろう環境省の役人が書いた作文を棒読みするよりずっといいし、彼が実際にそうしなかったことはとてもよかったのだ。

具体策については、環境大臣になったばかりなのだからまだ特にないのは当たり前だ。これから体験や知識を深める中で進めていけばよい。ただし、彼の軽さが本家の父親と拮抗、またはそれを凌ぐようになれるとしたら、さっさと育児休暇をとって考えてみるか、逆に結婚を首相官邸で発表しなければよかったと思うのだが……。

おしゃれでカッコいい、ということでいえば、トップファッションの表現ではすでに数シーズン前から気候変動や自然環境についての危機感へのメッセージを強く打ち出すブランドが増えてきている。

魅力的に感じなければ始まらない 小泉環境相のセクシー発言の意味とは?

クリスチャン・ディオールの新作 2020年春夏パリ・コレクションより 撮影:大原広和

魅力的に感じなければ始まらない 小泉環境相のセクシー発言の意味とは?

ステラ・マッカートニーの新作 2020年春夏パリ・コレクションより 撮影:大原広和

ファッションなのだからおしゃれなのは当たり前とも言えるのだが、具体的にどんなことがおしゃれなのかという点においては、ファッションの表現も大きく変わり始めているのだ。

PROFILE

上間常正

ジャーナリスト、ファッション研究者。1972年、東京大学文学部社会学科卒、朝日新聞社入社。記者生活の後半は学芸部(現・文化くらし報道部)で主にファッションを担当。パリやミラノなどの海外コレクションや東京コレクションのほか、ファッション全般を取材。2007年に朝日新聞社退社、文化学園大学・大学院特任教授(2019年3月まで)としてファッション研究に携わる。現在はフリーの立場で活動を続けている。

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