朝日新聞ファッションニュース

環境と創造性と、力強く 20年春夏パリ・コレ

今月1日までの9日間、2020年春夏パリ・コレクションが開かれた。ファッション産業が地球環境に及ぼす影響を問われるなか、かつてないほどサステイナブル(持続可能)なもの作りへの強いメッセージが発信された。一方で、ファッションの美的な創造性の復権を目指すブランドも目立った。

「目を覚ませ」演出でも主張

環境と創造性と、力強く 20年春夏パリ・コレ

ステラ・マッカートニー

シマウマ、カメ、アルマジロ……。ステラ・マッカートニーは、荘厳なオペラ座の壁一面に交尾中の動物たちの映像を映し続けた。環境が悪化する地球を救うために目を覚ませ、とのメッセージだ。

マッカートニーは01年から、革の使用を止めるなどサステイナブルなもの作りを進めてきた先駆者。今回は花びらモチーフや英国の田舎で撮ったマーガレット畑の写真をプリントしたドレスなどフェミニンな作風で、新作の服の75%に再生ポリエステルやエコファーを使用するなど、過去最高に環境に配慮した。招待状には「世界が変化を切望する今、行動することは我々の義務」との言葉があった。

環境と創造性と、力強く 20年春夏パリ・コレ

(左)クリスチャン・ディオール、(中央)マリーン・セル、(右)サカイ

クリスチャン・ディオールは、会場に170本の樹木を持ち込み、林に仕立てた。専門業者が栽培した木で、付けたタグのQRコードから植え替え地などをたどれる仕組み。庭師だった創始者の妹をヒントにした作品は、ワークウェア調が中心。自然素材ラフィアの小さな花刺繍(ししゅう)を施すなど凝った手仕事も。
デザイナーは地元紙に「私たちに向けられた問題の解決策を探らねば。服も1シーズンで時代遅れにならないものを目指した」と話していた。

新進マリーン・セルのテーマは、前回同様「核戦争後の世界」。生き残った人々が集まって暮らすイメージだ。会場は雨がそぼ降る郊外の草むらで、観客席は武骨な鉄管。中古のカーテンで作ったドレスなど、約半数がリサイクル素材。そんな服を、妊婦や犬連れ、老若男女のモデルが着た。デザイナーは「何もなくなった時、私たちはどうするのかを見せたかった」。

日本発のサカイは世界地図の柄の服を発表した。デザイナーの阿部千登勢はその意図を「地球環境ももめごとも、幸せな方に向かえばいいと思って」と話した。
期間中、パリ・コレを運営する協会も環境問題について「責任を認識し、取り組んでいく」との異例の発表をした。

刺繍やフォルム、優雅な美

環境と創造性と、力強く 20年春夏パリ・コレ

(左)ドリス・ヴァン・ノッテン、(中央)ヴァレンティノ、(右)ノワール・ケイ・ニノミヤ

一方で、ファッションの美を改めて追求する動きも。

ドリス・ヴァン・ノッテンは、1980~90年代に一世を風靡し、現在は舞台衣装を手がけるクリスチャン・ラクロワを迎えて一回限りの共作を発表した。金刺繍が肩から首につながるドレスや花のように大きくふくらむコート。ヴァン・ノッテンのシックな色や形と、ラクロワのダイナミックな造形や装飾性が絶妙な調和を生んだ。「ファッションが工業製品になり下がったいまこそ、プロがつくる正真正銘の美の創造物を送り出す時だと思った」とヴァン・ノッテンは語った。

ヴァレンティノは、何の変哲もない白いコットンポプリンのシャツをプリーツや刺繍によって優雅に仕立てた。

ノワール・ケイ・ニノミヤの模造パールで覆ったドレスや雲のようにふわふわと浮かぶチュールのドレスにも目を見張った。「自分のクリエーションの基本に戻って、新しく美しいものを探した」と二宮啓は話した。

環境と創造性と、力強く 20年春夏パリ・コレ

(左)ニナ・リッチ、(中央)セリーヌ、(右)シャネル

ニナ・リッチは、若々しく大胆なクチュール的な作りが印象的だった。
セリーヌは前回に続く70年代調。なかでもボヘミアンスタイルが、すっきりとした華麗さを放っていた。
カール・ラガーフェルド亡き後2度目のパリ・コレに臨んだシャネルは屋根の上を模した会場で、オレンジや赤のミックスツイードのジャンプスーツなどを並べた。

環境と創造性と、力強く 20年春夏パリ・コレ

(左)イッセイミヤケ、(右)コムデギャルソン

イッセイミヤケは、84年生まれの新デザイナー、近藤悟史による初のショー。風をはらむコートや、跳び上がると揺れて上下するドレスなど、創始者三宅一生の作風をほうふつとさせた。色や形の軽さ、スケートボードに乗るモデルなど現代的な表現に拍手が湧き起こった。

12月にウィーン国立歌劇場で上演されるオペラ「オルランド」の舞台衣装を担当するコムデギャルソンは、メンズに続いて同作をテーマにした。冒頭では花飾りやジャカードなど古典的な要素を組み合わせた造形で、ラストは黒いコートとドレスがつながったモダンな服。デザイナーの川久保玲は「最初より最後の服の方が前進しているでしょ」と語った。環境問題や創造性の面で次の段階に進まなければならない、現在のファッション界を暗示しているようだった。

(編集委員・高橋牧子)

<写真は大原広和氏とRunway-Photographie撮影>

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