このパンがすごい!

東京駅にリアルなイタリア登場。店内で焼くパニーニとフォカッチャ/Eataly

東京駅にリアルなイタリア登場。店内で焼くパニーニとフォカッチャ/Eataly

パニーニ各種

 リアルなイタリアが東京駅にある。「Eataly」はイタリア産食材のセレクトショップであり、それら垂涎(すいぜん)の食材を目の前でパンにはさんでもらって食べられる贅沢(ぜいたく)この上ない場所。この夏から、イタリア産の小麦粉を使ったパニーニとフォカッチャを、店内のオーブンで焼きはじめた。

 パニーニカウンターにときめかずにいられない。「ポルケッタ」「カポナータ」「カプレーゼ」など7種類の具材をはさんだパニーニがショーケースに並ぶ。中でも、バラ色の肉片「プロシュット」(燻製(くんせい)を経ないイタリア産の生ハム)が私の目に留まり、舌なめずりを抑えられない。

東京駅にリアルなイタリア登場。店内で焼くパニーニとフォカッチャ/Eataly

パニーニ プロシュット。ルッコラを追加

 パンは注文後にトーストされ、供される。上の部分はぱりぱり、下はかりかりとして、パウダー状に崩壊。さすがイタリア産小麦は香ばしく、甘み、旨味(うまみ)は上あごのあたりに輝かしく照射される。一方、むっちりとエロティックな舌触りとともにとろけていくプロシュットは「肉肉しい」を超え、「肉肉肉しい」とでもいうべきか。塩味を乗り越えて広がる旨味は、小麦の味わいと合流することでネクストステージへ昇華。ここにワインを流し込むのは、まるでパンとともにイタリアを飲み干す体験だ。

東京駅にリアルなイタリア登場。店内で焼くパニーニとフォカッチャ/Eataly

ムリーノマリーノの小麦粉

 ピエモンテ産を石臼挽(び)きした、イタリア・ムリーノマリーノの小麦粉。天然石を、代々継承された技術でたたいて調整し、ゆっくり挽くことで「活(い)きた状態」の小麦粉が得られるという。香りが活き、風味の成分を作りだす酵素が活きているということなのだろう。

 Eatalyはこれを日本に直輸入する。商品開発にたずさわる渾川(にごりかわ)駒子さんはこう説明する。
「小さな生産者を守ることで、昔ながらの良質な食料品を残すことが、Eatalyの役割です」

 イタリアの伝統的な食文化もEatalyは守る。パニーニは、副材料にイタリア産オリーブオイルと塩(と若干の砂糖)を使い、本国と同じ低温長時間発酵で作られる。具材との組み合わせも伝統的なもの。Eatalyの本部が承認した組み合わせ以外、決して商品として出せないという。

「数えきれないぐらいNGが出ました。たとえば、海のものと山のものを混在させてはいけない。魚介とチーズという組み合わせは決してありません。イタリアは地産地消の文化。強いカンパニズモ(郷土愛)を持っている人たちなんです」

東京駅にリアルなイタリア登場。店内で焼くパニーニとフォカッチャ/Eataly

フォカッチャ パンチェッタ ペコリーノ。提供時、あたためられ、チーズが溶けている

 ふわふわなパンだと思っていたフォカッチャの、意外なむっちり感に驚かされた。正確にはぎゅっぎゅっと2、3度、押し潰れてから、切れる。それは、食べにくいというより、黒糖かカステラかという豊かな甘さを十分に堪能するための時間だ。「パンチェッタ ペコリーノ」というトッピングを選択。牛乳の瞬間保存か? というほどミルキーなペコリーノと、ぷにっとして明るい旨味をにじませるパンチェッタと、小麦の甘さが、せめぎ合い、しのぎを削る。

東京駅にリアルなイタリア登場。店内で焼くパニーニとフォカッチャ/Eataly

ピッツァ サルシッチャ

 店内のピッツァオーブンで焼き上げられるピッツァも、ムリーノマリーノが使用される。「ピッツァ サルシッチャ」をテーブルに置かれた瞬間、小麦から、肉から、トマトから豊かな旨味の合わせ技がもうもうと舞い上がっていた。いてもたってもいられず噛(かじ)りつく。ピッツァ用粉としてオーソドックスな「00」番なのに、あまりにも濃厚に、香ばしさ、甘さ、スパイシーさがあふれだす。その耳たるや。むにっとしたアルデンテ感は、筋肉質の耳たぶと言うにふさわしい。

東京駅にリアルなイタリア登場。店内で焼くパニーニとフォカッチャ/Eataly

カンノーリバー

 デザートはカンノーリ バーで。『ゴッドファーザー』に登場することでも知られる、官能のちくわ状焼き菓子。ムリーノマリーノを焼きあげた生地のかりかりに、リコッタのとろとろ。麦とチーズを合わせただけの単純極まりない組み合わせのすごさ。二つの素材の出会いは天の配剤であろう。

 これらすべてのメニューは、イートインも、テイクアウトも可能だ。旅行に出発する前、これらのパンやお菓子をワインとともに持ち出せば、新幹線は時速300kmのイタリアンバールに変身するだろう。

■Eataly
東京都千代田区丸の内1-9-1、JR東日本東京駅B1
03-3217-7070
info@eataly.co.jp
無休 8:00-23:00(レストランは11:00から。日曜日及び連休の最終日は22:00まで)

>>店内やパンの写真をもっと見る ※写真をクリックすると、拡大表示されます

こんなお店もおすすめ

  • 東京駅にリアルなイタリア登場。店内で焼くパニーニとフォカッチャ/Eataly

    ホテルのベーカリーで味わう「流星の口溶け」/パレスホテル東京 スイーツ&デリ


    千代田区・丸の内

  • 東京駅にリアルなイタリア登場。店内で焼くパニーニとフォカッチャ/Eataly

    新宿の名店、「パン対ゴハン。」のポスターと共に復活/ル・プチメック日比谷


    千代田区・有楽町

  • 東京駅にリアルなイタリア登場。店内で焼くパニーニとフォカッチャ/Eataly

    食べ手が思わずひざを打つ、絶妙の一手で目覚める味 / ブーランジェリーレカン


    中央区・銀座

  • 東京駅にリアルなイタリア登場。店内で焼くパニーニとフォカッチャ/Eataly

    映画『アメリ』を思い出し……美しい花のパン「アメリ」/ COURTESY(コーテシー)


    港区・赤坂

  • 東京駅にリアルなイタリア登場。店内で焼くパニーニとフォカッチャ/Eataly

    これはおにぎりではないか! 総菜ベーグルという新境地/123ベーグル


    中央区・日本橋

  • <バックナンバー>
    まとめて食べたい!「このパンがすごい!」記事一覧
    地図で見る

    PROFILE

    池田浩明

    佐賀県出身。ライター、パンの研究所「パンラボ」主宰
    日本中のパンを食べまくり、パンについて書きまくるブレッドギーク(パンおたく)。編著書に『パン欲』(世界文化社)、『サッカロマイセスセレビシエ』『パンの雑誌』『食パンをもっとおいしくする99の魔法』(ガイドワークス)、『人生で一度は食べたいサンドイッチ』(PHP研究所)など。国産小麦のおいしさを伝える「新麦コレクション」でも活動中。最新刊は『パンラボ&comics 漫画で巡るパンとテロワールな世界』(ガイドワークス)
    http://panlabo.jugem.jp/

    壁の黒板に注目! 新麦「ゆきちから」から黒平豆まで、未知なる岩手への扉が次々開く/ポルト・ドゥ

    一覧へ戻る

    国産小麦ごとにバゲットを味わう。パン飲みバル「さかなパン店」ついに常設化!/チェスト船堀

    RECOMMENDおすすめの記事