リノベーション・スタイル

築70年の家を住み継いでいく、リノベーションの可能性

 
【山の根の平屋】
Fさんご家族
神奈川県逗子市 89.40平米/築約70年

神奈川県逗子の昔ながらの住宅地に、今回のお宅がありました。逗子といえば海を連想しますが、こちらは山のエリアです。祖父母によって約70年前に建てられた木造住宅をお母さまが住み、今度はお子さんであるFさんが住み継ぐことになりました。そのタイミングでリノベーションを希望されたのです。

リノベーションを依頼されたのは、Fさんのお姉さんです。地域に精通したお姉さんは、新しい家が増えて変わりゆく街の風景を少し残念に思っていたそう。できれば、築70年の古い家を、いい形で住み継いでいきたいと考えていました。とはいえ、1940年代に建てられ、家族が増えて増築されたり、1990年代には火事があって応急処置をしたりと、家自体の老朽化は進んでいました。

今回の希望は、思い出のある古い家に安心して、子どもたちと一緒にのびのびと暮らせること、そして、地域の公民館のようにたくさんの人が集うオープンな雰囲気にしたいとのことでした。

築70年の家を住み継いでいく、リノベーションの可能性

室内から玄関方面を見る。天井には、古い梁と新しい梁が並ぶ

Fさんやお姉さんと相談した結果、元々あった柱や天井などは、古い家の記憶とともにできるだけ残すことにしました。そして、家自体は、用途を限定しない大きなフリースペースにし、子どもたちが自由に走り回れるような回遊性をもたせました。

同時に、耐震補強と断熱工事には力を入れました。新しい柱を追加したり、金具で補強したり、高性能のサッシに交換するなど、古い家に違和感なく組み合わせるようにしたのです。

築70年の家を住み継いでいく、リノベーションの可能性

構造部分

インテリアは柱や天井などをそのまま見せた、シンプルなものにし、性能向上のための要素をプラスしていきました。これが、素材そのものの魅力を引き出すことになり、合理的だけどほっとできる雰囲気になりました。

もうひとつ、この家の特徴的な部分は、庭から家に入れる大きなサッシとデッキです。体調を崩して施設に入居されているお母さまが、車椅子で入れるようにしたスロープつきの「第2の玄関」です。道路に面した庭から自由に出入りできることもあり、近所の子どもたちが遊びにくるときの出入り口になっています。

築70年の家を住み継いでいく、リノベーションの可能性

ウッドデッキが、室内と外をゆるやかにつなぐ

この「第2の玄関」は、オープンセキュリティーという考え方から、私たちブルースタジオが提案しました。近所つき合いが活発だという地域性を生かし、閉ざすのではなく、あえてオープンに。気楽に出入りできる「第2の玄関」によって、人がどんどん集まるようになりました。人が集うことにより、防犯性を向上させていきます。
また、外塀をあえて低くしたのも、同じ考え方からです。人の目に触れやすくして安全に暮らすという、逆転の発想です。

古い家は建て直そうというのが、今までの考え方でした。お金を出せば、新しい家は手に入れられます。でも、家族が育んできた思い出は、一度家を壊してしまうと再び買うことはできません。家を住み継ぎたいと考えている方は、リノベーションで実現できることを知っておいてほしいと思います。

築70年の家を住み継いでいく、リノベーションの可能性

TVや本などを置く棚は造作した。圧迫感がでないよう上は空いている

Fさんとお姉さんにきく
リノベーションQ&A

1 今回のリノベーションで一番大切にしたことはなんですか?
 
車椅子で生活している母が、家に無理なく帰ってこられるような、バリアフリーであることです。スロープのある大きな出入り口は、母にとっても私たちにとっても快適です。また、昔からあるものと、新しいものとを調和してもらうことも大切にしました。例えば、玄関の木製扉は今まで使っていたものを利用しました。思い出のあるものを活用できたのは、うれしいですね。
もうひとつ、子供たちが楽しくのびのびと過ごせることも希望しましたが、これも実現できました。

築70年の家を住み継いでいく、リノベーションの可能性

建物の外観。玄関の大きな建具は以前のものを使っている

2 リノベーションをして、生活が変わりましたか?

家中が広いフリースペースのようなので、子どもたちが元気に遊べるようになりました。近所のお友達がたくさん遊びに来るようになり、まるで公民館か図書館のようですね。庭からの出入り口は、お友達にも出入りしやすいようです。
そして、家事がしやすくなり、子どもたちと一緒に料理や掃除をするようになりました。

築70年の家を住み継いでいく、リノベーションの可能性

玄関を背にしてキッチン方面を見る

3 家の中でどんなことをしている時間がお気に入りですか? 

子どもたちが家の中で遊んでいるのを眺めているのは、楽しい時間です。それから、晴れた日にウッドデッキで、ごはんを食べるのもお気に入りですね。夏はプールを出したり、バーベキューをしたり、ウッドデッキがあることで楽しさが広がりそうです。
子どもたちは、屋根裏部屋(秘密基地)でのおやつタイムがお気に入りです。

(構成・文 大橋史子)

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PROFILE

石井健

「ブルースタジオ」執行役員
1969年、福岡県生まれ。「ブルースタジオ」執行役員。日本のリノベーション・シーンの創世期から600件以上を手がけてきた。「カンブリア宮殿」(テレビ東京系)でも「古い物件の家賃を倍にする不動産集団!」として紹介される。「郷さくら美術館」(東京・中目黒)で2012年度グッドデザイン賞受賞。また「賃貸アパート改修さくらアパートメント」(東京・経堂)で2014年度グッドデザイン賞受賞。 著書に『リノベーション物件に住もう』(共同編集/ブルースタジオ)、『MUJI 家について話そう』(部分監修)、『リノベーションでかなえる、自分らしい暮らしとインテリア LIFE in TOKYO』(監修)。
ブルースタジオへのリノベーションのご相談は、隔月開催のセミナーや、個別相談で承っています。
http://www.bluestudio.jp/

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