<5>漫画家 ヤマザキマリさん×川島蓉子さんPR
sponsored by グランドセイコー 対談「宝の10年~あなたは、どう過ごしますか~」
苦行はいっぱいあるけど、だからこそ面白いことをしながら生きていく

ヤマザキマリさん(右)と川島蓉子さん(撮影・馬場磨貴)
「宝の10年」ーーと聞いて、いつのことを思うだろうか。
キラキラしていた20代? 一生懸命働いていた30代?
それともまさに「いま」だろうか。
&w連載「ひとむすび」の著者・川島蓉子さんと、
さまざまな分野で挑戦を続ける女性に、
「宝の10年」について語り合っていただく連続対談。
その人たちが何を大切にしながら生きてきたのか、
自分らしく働き続けるために、何を大事にしているのか……。
少し先でいま、同じ時を生きる2人の女性が交わす言葉を通して、
私たちもまた、これからの10年を見渡せるような、
そんな対談をお届けする。
第5回のゲストは、古代ローマを舞台にした漫画「テルマエ・ロマエ」の作者として知られる漫画家・文筆家のヤマザキマリさんだ。(構成・坂口さゆり 写真・馬場磨貴)
◇
川島 今年は「テルマエ・ロマエ」が刊行されて10年だと伺いました。この10年を振り返ってどのように感じていますか。
ヤマザキ 私の場合どうも10年周期でターニングポイントがあるようなのですが、この10年は1年か2年くらいの速さで通り過ぎていったような感覚です。「テルマエ・ロマエ」が刊行されたあと、すぐに「マンガ大賞」と「手塚治虫文化賞短編賞」という大きな賞を二ついただき、さらに映像化も決まりました。すべてがひっくり返ったような激変の10年間でした。
川島 ものすごい脚光を浴びましたものね。たくさんお仕事の依頼も来たでしょう?
ヤマザキ それはありがたいんですが、あまり良いことばかりだったとも言えず……。それまでは絵だけで食べていくのが難しかったこともあり、漫画を描いてくださいという依頼があればどんどん引き受けていたんですが、寝る時間も旅に行く時間もなくなってしまった。私は計画を立てて行動するタイプではないんですよ。なるようになると思っているのだけど、それでいろいろ大変な思いもしています(笑)。
川島 でも、締め切りはどうするんですか?
ヤマザキ それはしっかり守ります。締め切りはざっくり頭にあるんです。自分が時間を作る。ヤマザキ時間を。そして守る。時間を守らなくてはいけないと思うのは、いろんな人たちに迷惑をかけてしまわないようにという配慮からです。だって、漫画が遅れることでアシスタントさんや編集者や印刷所が困る。もし自分が締め切りを守らない漫画家の担当編集だったらすごく嫌だなと思う(笑)。
川島 それはわかっていてもできない人がたくさんいるし、売れたら態度が変わる人もいますからすばらしいですね。ヤマザキさんが仕事を引き受ける時の基準はなんですか。
思いをためると精神的じんましんが出る。作品を出さなきゃ!って
ヤマザキ 例えば、「イタリアのことを連載してください」と言われた時は、日本で広がっているイタリアのイメージに若干違和感を感じたり、自分が見てきたイタリアや知っているイタリアと何か違うと思ったりした時に、「これは自分の見解を発信しなくてはいけない」と思うんです。テレビのすてきな旅番組のように旅で出会う誰もが「うちでコーヒー飲んでいくかい?」なんて誘い込んでくるなんて、滅多にないです。そういうのを見ていると、「うーん、これは真実ではないなあ」と思ってしまうわけですよ。そんな思いをためておくと、消化不良を起こしてブツブツ精神的じんましんが出てくる感じになるので、感じたことは形にして出しておこうと思うんですよ。
川島 表現したいし、伝えたいんですね。

ヤマザキ 表現よりも、内側にあるものを表に出したい、という気持ちですね。表現はそのための手段。そういった思惑は時間とともに自然に消化されていくこともあるんですが、どうしても思ったこと、考えていることを形に変えて自分の外に出さないと、という思いに駆られることがある。それが私にとっての作品です。
川島 出したいものを形にしていく時に表現者としてうまくいかない時もあるでしょう?
ヤマザキ 漫画はすごく大変です。文字と違って、自分の頭の中で漠然と描かれているイメージを全部作っていかなければいけない。映画を一人で作っているようなものですから。原作から脚本からカメラから役者から美術もなにもかも。総合芸術という形態ですね。
川島 それはわかりやすいわ。描くのが大変でも漫画をやめられないのはなぜでしょうか。
ヤマザキ 漫画の表現が一番自分に向いているみたいなんです。文字では開けないことがあるんですよ。「スティーブ・ジョブズ」を漫画にした時にいろんな資料を読みました。いろんな専門用語がカタカナで書いてありますけど、漫画はそれを全部絵で開示していかなければならない。
川島 難しいですね。
ヤマザキ だけど、そうしなければジョブズはそれの何が良かったのかが読む人には伝わらない。私は、ジョブズが惹(ひ)かれたものを、彼の心の葛藤を、彼の代わりに絵にして人々に伝える役目を引き受けたんだ、と思ってやっていました。
川島 そういう時はジョブズが憑依(ひょうい)している感じですか。
ヤマザキ 憑依というより見張られている感じがします。「そのコマ、ダサい! 描き直し!」と言われているような気がするんです。まあそれだけじゃないですけど、ジョブズがこれを見たらどう反応するだろう、というイメージを常に抱きながら描いていました。
川島 私は文章を書くので客体が一人だとある時期、憑依するんですよ。ジョブズのような大物が取りついちゃうと大変でしょうね。
ヤマザキ 彼は本当に一筋縄ではいかない難しい人ですが、不思議なことに感情移入のできた人ではありました。最初この仕事の依頼があったときはお断りをしたんです。でも、アップル製品が大好きだった息子にジョブズを知りもしないで断るなんてと怒られて。ジョブズの本を読み始めたら、冒頭で彼の子ども時代がすごく自分とシンクロしたんです。規制されたものをことごとく壊し、ボーダーの外へ出ていく。私と全く同じでした。私はきれいに飾られていたひな壇を全部引っ張って、雪崩のように崩れたおひな様の前で笑っている写真が残っているんですが、きちんとそろっているものを見ると壊したくなるんです。行くなと言われる場所があれば、この目で見て確かめたくなるんです。
川島 既成概念にとらわれることが嫌なんですね。
ヤマザキ そうなんです。ジョブズって、最初に面接に行ったゲーム会社では裸足でロン毛で風呂にも入ってなかった。ぷんぷん臭っている人が社長室の机の上にいきなり足を乗っけて、「俺を雇ってくれてもいいぜ」って言ったらしい。にもかかわらず、ジョブズはその会社に雇われたんですよ。ジョブズもすごいけど、そういう面倒臭そうな人を排除しない会社もすごいと思うんです。見た目がそういう人であっても、何かいいものを持っていそうだ、際立った何かがありそうだ、と感じとることのできる審美眼。外見にごまかされて内にある本当に大事なものを見抜けなくなるということがなかったんだなぁと。
美しい夕暮れを見た時に美しいと思うのは、生きることを肯定する術

川島 ヤマザキさんの話はすごく本質を突いていますよね。
ヤマザキ それはわかりませんが、私はすぐにあらゆることに違和感や疑問を感じてしまうんです。人生で様々な経験をしてくると、どうも人々の言葉やメディアの報道に猜疑(さいぎ)的になってしまって。北海道で子供時代を過ごした影響もあるのかもしれませんが、人間はもっと自然を体で受け止めながら、人間が作った以外のものから感性や直感力を磨いたり学習をするべきなんじゃないかと思っています。経済的に豊かであることばかりが本当に良い生き方と言えるのか、不安を回避したり、利便性を追求することばかりが果たして人間にとって良いことなのだろうか、といつも訝(いぶか)しんでいる。美しさも、人々が「美しい」と示すものばかりではなく、自分にしかわからない美しさもあるはずなのに、価値観の共有を強制されるのは息苦しいな、とか、そんなことをいつも思っている。
川島 美しさってなんなんでしょうね。ジョブズも美にすごくこだわったと思うんですよ。だからあそこまでできちゃった。
ヤマザキ そうですね。人間の持つ価値観の基準は歴史を見ても時代によって変わっています。縄文時代に好まれたのはふくよかな女性で、現代ではスマートな女性というように。美は継続性・永続性がないものだと思うんですが、中には普遍的なものがあります。例えば、人は太陽が昇ってきたのを見た時に、神々しいって感じるじゃないですか。心が奪われるほど美しい夕暮れもある。こうしたものは普遍的にみんなが美しいと思うんです。何でしょうね、それは生きていることを喜びに転換させるための想像の力なんでしょうかね?
川島 生きている喜び?
ヤマザキ 生きていくことは苦悩の連続じゃないですか。喜びは多分、私たちが喜びだって思って生きることを肯定していく大切な術(すべ)なんですよ。エンターテインメントはまさに術。極論ですけど、生きるのに伴う様々な苦行と向き合いながらも生き続けていくのなら、どっちかに行くしかない。みんなで出家するか、エンターテインメントで心洗われて次の日も頑張って生きるか。つらいことはいっぱいあるけど、だからこそパッチワークのように面白いこと、楽しいことをつぎはぎしながら生きていく。
川島 だから、どんどん音楽を聴いたり旅をしたりするんですね。
ヤマザキ そうですね。音楽を聴いたり本を読んだり映画を見たり、とにかく日々ごまかしごまかし生きていくんだけどそれはぜんぜん悪いことではない。人間にはそれができるんです。特権ですね。泣きたくなるような美しい夕焼けを見ていると、死ぬと思って生きるのは大変だけど、こういうきれいな夕陽を見られるなら、命に代えられないと思ったりもできるんですから。
歴史全般を理解することは、私たちが生きる世界の参考になるんです

川島 そういう機会を増やしていけば、生きていることが楽しくなりますもんね。ところで、ヤマザキさんは歴史をテーマに多くの作品を描いてこられましたが、歴史に目を向けるのはなぜなんですか。
ヤマザキ 歴史を知るには人物が一番わかりやすいんです。過去をリアルに感じることができるのは、遺跡を訪ねているときよりも、歴史書で当時の人々の考え方や生き方を知る時です。古代の歴史家が遺した文献を読んでいると、こういう理由でこういう遺跡を残したんだと書いてある。遺跡からはその当時の人々の生きる姿勢は読み取れない。でも、人間ひとりの人生を知ることで、様々なバックグラウンドが脳裏に浮かんでくる。人間の生き様は、当時の様子を映し出す鏡みたいなものかもしれません。
私は今、ローマ帝国の第5代皇帝ネロについて描いています。ネロは暴君だって言われていますが、みんなどことなく似てるんですよ。ジョブズもネロも「テルマエ・ロマエ」で描いたハドリアヌスも。孤独がつらいくせに孤独でいることを選択してしまう。ジョブズ漫画を描いている時でしたが、おかげでネロを描くのにもジョブズの性格が役立ちました。
川島 歴史を見ながら現代を確認するということですか。
ヤマザキ 歴史全般を理解することは私たちが生きている世界の参考になるんです。人間は同じことを繰り返す生き物です。だから、社会で起こる事象についても、これは古代ローマ時代のあの部分に置き換えられるな、などと結びつく。かつてローマ帝国ではリーダーとしての素質のない人たちが皇帝に選ばれる、情勢不安定な時代がありました。そういう時代においては、人々は寛容性を失い、身近な利便性しか考えなくなっていく。それに似た傾向が今、始まってきているのかな、と感じることがあります。でも、そんな現在を悲観的にとらえるよりも、これは人間という生き物の生態系なんだ、というふうに俯瞰(ふかん)でとらえれば冷静でいられます。
川島 人間という生き物の生態系! それは面白い! 本日は楽しい話をたくさんありがとうございます。最後に40代女性へメッセージをお願いできますか。
ヤマザキ とりあえず、視野を大きく持って、つらさを“自分にとっての栄養素”として転換してみましょう。大きな壁にぶちあたっても、冷静に周囲を見回せばかならずそこから抜け出す手段はある。40代といえば多くの女性が子育てをしている時期ですね。お母さんがエネルギッシュで前向きだと家族も間違いなくその影響を受けて、元気になります。せっかくもらった命ですから、みんなもっと謳歌するべきなんです。足元ばかりに気を取られず、遠くに見える美しい山への到達を目指す勢いで、日々を過ごしましょう。
◇
古代ローマの歴史を見つめながら、楽しく現在を生きる術を考える。
お二人の話から、時間を軽々と超えていく力が伝わってくる。
遠くに見える美しい山を目指している時間が、そのまま宝の時間、なのかもしれない。
これからの10年、あなたは、どんな宝を刻んでいきますか?


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