花のない花屋

見習いたい大きな存在 99歳の祖母へ

〈依頼人プロフィール〉
駒崎七恵さん 35歳 女性
埼玉県在住
会社員

     ◇

大好きな父方の祖母が10月で99歳になりました。5人きょうだいの上から3番目だった祖母は姉妹の中でも一番活発で、1人でもみじの木に登っていたそうです。幼い頃に母を亡くした後は、一番下のきょうだいが養子にもらわれていったこともあり、つらい思いや苦労もたくさんしてきたと聞いています。

若い頃から住み込みで子守や家事をして働いていた祖母は、結婚してからは“母子センター”で出産後の母親たちのために掃除洗濯などをしていました。退職してからもシルバー人材センターに登録して草むしりなどの仕事をし、75歳くらいまでずっと働き詰め。私は祖母の家に遊びに行くたび、野菜を育てている畑に一緒に出たり、ご飯を作る姿を横に立って見ていたり……いつも祖母にくっついてまわっていました。

祖母と私たちが同居を始めたのは、祖母が80歳くらい、私が中学2年生の頃のことです。昔から「ずっと家にいたい」と言っていた祖母の気持ちを尊重し、私の両親はできる限り祖母が家に住めるよう、訪問介護やヘルパーさんたちの力を借りて、一緒に住むことにしたのです。

同居してからは、春になると一緒にお花見に行ったり、回転ずしを食べに行ったり、近所を散歩したり……いつも明るい祖母とたくさん楽しいことをして過ごしました。

ところが、祖母は4年ほど前から体調が優れず、今はずっと寝たきりです。昔は民謡や踊りが大好きでしたが、今では自発的に何かをすることはありません。食事や水分補給も介助が必要で、私の両親は祖母の介護が始まってからというもの、旅行に行ったり自分の好きなことをしたりする時間がほとんどもてない状態です。

私も仕事がないときは祖母に会うために家に帰り、食事をするお手伝いをしたり、祖母が覚えている歌を一緒に歌ったり、何げないおしゃべりをして過ごしています。祖母は季節の唱歌や童謡がお気に入りで、夏は「夏は来ぬ」「われは海の子」、秋は「もみじ」「里の秋」といったように、季節を感じられる歌を選んで歌っています。歌っていると活気が戻るようで、昔のことをふと自分から話してくれることもあります。

ある日、長生きの秘訣(ひけつ)を聞くと、「みんなと仲良くすること」と言いました。また、「立派なお年寄りになるには?」と聞くと、「若い頃しっかり働くことが大事」とのこと。祖母の言葉にはハッとさせられることが多く、祖母の存在は私にとっては大きいのだなと実感しています。決して泣きごとは言わず前向きなところは、私も見習わなくてはと思っています。

残念ながら、祖母は一年一年体が弱っていくようですが、残された時間を穏やかに過ごせるよう、99歳の誕生日のお祝いに東さんの花束を贈りたいです。できれば、日頃お世話をしてくれている両親もお花を見て元気になってもらいたいので、みんなが幸せを感じられる花束をお願いいたします。

祖母の好きな色は紫。どこかに紫を入れつつ、明るい感じでアレンジしてもらえるとうれしいです。

見習いたい大きな存在 99歳の祖母へ

花束を作った東さんのコメント

99歳になったおばあさまへお誕生日のお祝いとのことでしたので、おばあさまの好きな紫色の花でアレンジをしました。

紫色にはどうしても強い印象がありますが、ブルーから紫色の淡いトーンの花を使って小花をちりばめることで、明るくナチュラルな雰囲気に仕上げました。

使用した花材は、かわいらしい雰囲気のブルーレース、アスター、ベロニカ、デルフィニウム、クレマチス、スターチス、ふわふわした質感が際立つアゲラタムなど。ところどころ、緑色のブルーレースのつぼみや、ベロニカの頭がつんつんと出ていて、全体のアクセントになっています。ボトムにはぐるりとボリュームたっぷりにアセボを挿しました。

奇抜さよりも、優しさや明るさを意識した花束、楽しんでいただけますとうれしいです。

見習いたい大きな存在 99歳の祖母へ

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見習いたい大きな存在 99歳の祖母へ

(&編集部/写真・椎木俊介)

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    「&w」では、読者のみなさまから「物語」を募集しています。
    こんな人に、こんな花を贈りたい。こんな相手に、こんな思いを届けたい。
    花を贈りたい人とのエピソードと、贈りたい理由をお寄せください。毎週ひとつの物語を選んで、東さんに花束をつくっていただき、花束は物語を贈りたい相手の方にプレゼントします。その物語は花束の写真と一緒に&wで紹介させていただきます。
    詳しくは応募フォームをご覧のうえ、お申し込みください。

    フラワーアーティスト・東信 (あずままこと)

    見習いたい大きな存在 99歳の祖母へ

    1976年生まれ。
    2002年より花屋を営み続け、現在は東京・南青山にてオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。2005年よりフラワーアーティストとして、ニューヨーク、パリ、ドイツ、ブラジル等、国内外で精力的な活動を展開。独自の視点から花や植物の美を表現し続けている。
    作品集に「ピエール・エルメ サティーヌ」「ENCYCLOPEDIA OF FLOWERSII 植物図鑑」(ともに青幻舎)など。

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    http://azumamakoto.com/

    PROFILE

    椎木 俊介(写真)

    ボタニカル・フォトグラファー

    2002年、東信とともに、銀座にオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。東が植物による造形表現をはじめると時期を同じくして、カメラを手にし、刻々と朽ちゆき、姿かたちを変容させていってしまう生命のありようを写真に留める活動に傾倒していく。日々、植物に触れ、その生死に向き合ってきたからこそ導き出すことのできる、花や植物のみが生来的に有する自然界特有の色彩や生命力、神秘性を鋭く切り取っていく。

    2011年に初の作品集となる東信との共著『2009-2011 Flowers』(青幻舎)を発表以降、常に独特の視点ですべての東の作品を捉え続け、近年は映像制作にも力を入れ、多岐にわたる活動を行っている。


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