料理家・冷水希三子の何食べたい?

<番外編>冷水先生の、一生ものの料理道具

料理家・冷水希三子(ひやみず・きみこ)さんが読者と私たち編集部のリクエストに応えて料理を作ってくださるという夢の連載。今回は番外編として、毎回おいしくて美しい料理を生み出す冷水先生愛用の台所道具をご紹介。愛着を持って長く使え、日々の料理を楽しく、快適にしてくれるアイテムについて聞きました。

    ◇

―― 冷水先生、こんにちは。今回はいきなり番外編です!

冷水 そうなんですね~、なんだか楽しそう。

―― 連載が始まって以来、読者さんから「あの道具は何?」「どこで買えるの?」など、冷水先生が使っている調理器具についての問い合わせがものすごく多いんですよ。それで今回は、ぜひ先生の愛用品についてお話を伺いたいなと思っています。

冷水 わあ、それは何をご紹介しようか迷ってしまいますねえ。

―― どれも愛用のものだと思いますが、先生がとくに「これは手放せない!」と思うものをぜひ教えていただきたいんです!

冷水 じゃあ今回はその中でも読者のみなさんも毎日の料理で使えそうなものをセレクトしてみますね。まず最初はおろし金。京都の老舗金物店「有次」のものです。

<番外編>冷水先生の、一生ものの料理道具

銅製でずっしりした重さのあるおろし金。手のひらサイズくらいの小さなタイプもありますが、大きいものの方が大根おろしなど、たっぷりすりおろしたいときに重宝します。

―― お~、なんだか堂々とした佇(たたず)まいですね!

冷水 大きさも重さもあるのですが、私はもう10年以上これしか使っていません。目立てされた刃が鋭くて気持ちよくすれますし、おろした食材の口当たりがすごくいいんですよ。

―― 調理道具というより工芸品みたいですね~。

冷水 職人さんがひとつひとつ手仕事で目を立てているのですが、その目の不揃(ふぞろ)いさのおかげでどの方向からでもしっかりおろせるんです。

―― でも、かなりサイズが大きいですね……。

冷水 そう、この大きさがまたいいんです。食材はおろし方で食感や風味が変わるので、いろいろなおろし方ができるよう、おろし金は大きめの方がおすすめです。

―― え、そうなんですか!?

冷水 例えば大根をおろすとき、上下に往復させながらおろすと、繊維が残った辛みのある大根おろしになりますし、まあるく円を描くようにおろすと繊維が壊れて、ふんわりとした食感でやさしい風味になるんですよ。

―― なるほど~。これくらい大きいサイズだと、確かに色々なおろし方ができますね。

冷水 「有次」のいいところは、お店に持っていけば目を立ててくれること。こうしてメンテナンスしてもらえるのは手仕事の道具ならではだと思います。

―― まさに一生ものですね! 嫁入り道具に買おうかな……、予定ないけど(笑)。

<番外編>冷水先生の、一生ものの料理道具

両面で目の粗さが違っていて、荒い面では大根おろし、細かい面ではしょうがなどの薬味をおろします。

冷水 次に紹介したいのはフライ返しです。これも素朴な道具ですが、私はもうコレなしの生活は考えられないというくらい気に入っています。

<番外編>冷水先生の、一生ものの料理道具

オールステンレスの清潔感あるデザイン。随分昔にセレクトショップで購入したアメリカ製ですが、同様の製品で日本製のものが通販などで手に入るそうです。

―― ちょっと小ぶりなサイズですね。

冷水 あんまり大きいとフライパンにつっかえてしまって、ストレスがたまるんですよね。それにこれはヘラの部分がすごく薄くて、食材の底面にスルッと入ってくれるんです。

―― オールステンレスの武骨なデザインもかっこいいですね!

冷水 ステンレスは錆(さ)びにくくて匂い移りもしにくいので、実用面でもとても優秀。あとは何と言ってもこのしなやかさ。「フレキシブルターナー」という名前の通り、力を加えると持ち手の部分とヘラの部分がしなるので、好きな角度から食材にアプローチできるんです!

―― おおお~、ほんとだ、フライパンの縁に沿うようにしなって入り、鮮やかに目玉焼きの底面に滑り込みましたね!

冷水 ね、気持ちがいいでしょう!? 何度やってもギョーザの皮が剝がれてしまう!という人にぜひ使ってもらいたいです。

<番外編>冷水先生の、一生ものの料理道具

薄く、力の加減によってしなるヘラ部分は、フライパンの底に密着した目玉焼きもなんのその。お魚のソテーなど、身を崩したくないお料理を作るときにも助かるアイテムです。

―― 最後に紹介していただくのは……、お鍋ですか?

冷水 はい、これは揚げ物専用の鍋です。

―― あ、このころんとした愛らしいお鍋は、この連載でも何度か登場していますね。2人分くらいの揚げ物をするのにちょうど良さそうだな~と気になっていました。

<番外編>冷水先生の、一生ものの料理道具

20年ほど前に大阪の骨董(こっとう)市で購入したもの。あまりに使い勝手がいいので、どこかのメーカーさんが同じ形で作ってくれないかなあと熱望しています。

冷水 そう、この表情がいいですよね、私も気に入っています。

―― これは鉄鍋ですよね。揚げ物には鉄製がいいんですか?

冷水 一概には言えませんが、鉄は熱伝導がいいですし、使い込むにつれて油が鍋になじんで、食材の衣が鍋の底に触れてもひっつきにくくなるんです。実際、この鍋を使い始めてから、本当に揚げ物が上手にできるようになったんです。

―― へ~、それは手放せないですね!

冷水 小ぶりなんですが深さがあるので少量の油で揚げられますし、油ハネもあまり気になりません。大きな取っ手と片口が付いているので、使い終わった後の油の処理もとても楽なんです。

―― かゆいところに手が届く揚げ鍋ですね~。

<番外編>冷水先生の、一生ものの料理道具

一度にたくさんは揚げられませんが、2人分くらいなら2、3回に分ければ大丈夫。

<番外編>冷水先生の、一生ものの料理道具

丸い形状が上手に油を対流させてくれているのか、面白いほど上手に揚げ物が作れます。

冷水 骨董市で買ったものなので、産地も何用の鍋なのかも正確なことはわからないのですが、私は勝手に「揚げ物のために作られた鍋」だと思っているんです(笑)。

―― そんな風に、偶然出会った道具を生活の一部にしていくのはすごくすてきですね。自分の好みや料理のスタイルに合った運命の調理道具、私もこれから探していきたいと思います!

冷水 使いやすくて愛着の持てる道具があれば、料理の時間はうんと楽しくなりますよ。ぜひお気に入りを見つけてくださいね。

(料理 冷水希三子 写真 関めぐみ 文 小林百合子)

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    PROFILE

    <番外編>冷水先生の、一生ものの料理道具

    冷水希三子(ひやみず・きみこ) 料理家

    料理家・フードコーディネーター。レストランやカフェ勤務を経て独立。季節の食材を使ったやさしい味の料理が評判を呼び、雑誌や広告などで活躍中。器選びや盛り付けに至るまで、その料理の美しさでも注目を集めている。著書に『ONE PLATE OF SEASONS-四季の皿』(アノニマ・スタジオ)、『スープとパン』『さっと煮サラダ』(ともにグラフィック社)など。

    PROFILE

    • 小林百合子

      編集者
      1980年兵庫県生まれ。出版社勤務を経て独立。山岳や自然、動物、旅などにまつわる雑誌、書籍の編集を多く手がける。女性クリエイター8人から成る山登りと本づくりユニット〈ホシガラス山岳会〉発起人。著書に『最高の山ごはん』(パイ・インターナショナル)、『いきもの人生相談室』(山と溪谷社)、野川かさねとの共著に『山と山小屋』(平凡社)など。

    • 関めぐみ(写真)

      写真家。アメリカ、ワシントンDC生まれ。スポーツ誌、カルチャー誌、女性誌などで活躍。また、広告やカタログ、CDジャケット、俳優の写真集なども担当。書籍に『8月の写真館』『JAIPUR』など。

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