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俳優・SUMIRE、“殺人鬼トレミー”へ密かに思いを寄せる。ドラマ「悪の波動 殺人分析班スピンオフ」

WOWOWの「殺人分析班」シリーズは、麻見和史の原作をもとに、2015年に「石の繭」、16年に「水晶の鼓動」をオリジナルドラマとして映像化した。主人公・警視庁捜査一課の刑事である如月塔子(木村文乃)が、相棒であり上司の鷹野秀昭(青木崇高)ら捜査一課のメンバーと、様々な猟奇殺人事件に立ち向かう。

現在放送中の「悪の波動」は、このシリーズ2作を通じて多くの視聴者の心をとらえた猟奇殺人犯”トレミー”こと八木沼雅人(古川雄輝)を主人公にした「殺人分析班」のスピンオフ作品だ。

俳優・SUMIRE、“殺人鬼トレミー”へ密かに思いを寄せる。ドラマ「悪の波動 殺人分析班スピンオフ」

古川雄輝さん WOWOWオリジナルドラマ「悪の波動 殺人分析班スピンオフ」より

古今東西、大衆から愛されるミステリーやサスペンスには必ず、主人公にも匹敵する魅力ある悪役がいるのが定石。本作の八木沼もまさにそんな悪役と言えそうだ。「石の繭」でモルタルで体を固めて殺す、という常軌を逸した手口で見る者を驚かせ、「水晶の鼓動」では一転、敵意を抱いていた塔子ら警察のピンチを救った。

”悪魔”にも心があったのか。6歳の時に母親とともに誘拐され、拭い去ることのできない暗い過去を負った青年がなぜ冷酷無比の殺人鬼になったのか。ドラマを堪能した視聴者ほど、八木沼についてもっと知りたい! と思ったに違いない。「悪の波動」はそんな彼らの欲求に応えたドラマともいえるだろう。

2014年、川崎市内で女性ばかりを狙った連続殺人事件が発生する。被害者は皆、首を吊(つ)られて殺されていることから、世間は「首くくり殺人」と呼んでいた。警察では犯人の手がかりがつかめず捜査は難航するが、捜査一課の刑事・井口(池田鉄洋)は、容疑者として身元を詐称していた青年・野木をマークし始める……。

俳優・SUMIRE、“殺人鬼トレミー”へ密かに思いを寄せる。ドラマ「悪の波動 殺人分析班スピンオフ」

SUMIREさん WOWOWオリジナルドラマ「悪の波動 殺人分析班スピンオフ」より

野木は首くくりの犯人なのかーー。見る者にそんな疑念を抱かせながら、ドラマは警察の見立てを軸に展開する。やがて、野木は6歳で誘拐され母を殺された「昭島母子誘拐事件」の被害者・八木沼雅人と判明。物語が進むにつれ、殺人事件の謎だけでなく、いかに八木沼に対する世間の仕打ちが冷たかったか、彼が次第に笑顔を失い、ひっそりと生きるしかなくなっていった背景も浮かび上がる。

見どころの一つが本作のヒロインで、同じアパートの隣の部屋に住む吉佳(SUMIRE)との関係だ。吉佳は八木沼のその後の人生に大きな影響を与えるキーパーソン。彼女と心を通わせていく一連のシーンが八木沼の変貌(へんぼう)を読み解く鍵となる。

俳優・SUMIRE、“殺人鬼トレミー”へ密かに思いを寄せる。ドラマ「悪の波動 殺人分析班スピンオフ」

WOWOWオリジナルドラマ「悪の波動 殺人分析班スピンオフ」より

吉佳は野木の正体が八木沼であることに最初に気付く。実は2人は同じ中学校の同級生。子どもの頃から家庭内暴力に悩まされ、しばしば保健室通いをしていた彼女は、やはり人とかかわることが苦手な八木沼と保健室で過ごしていたのだった。

成人しても兄に金をせびられ暴力を振るわれ続けていた吉佳は、八木沼に助けられたことをきっかけに心を寄せていくようになる。八木沼もまた、連続殺人事件の犯人として目をつけられた彼をかばおうとする吉佳の優しさに、閉ざしていた心を少しずつ変化させていく。

吉佳を演じたSUMIREさんが、本作で一番のお気に入りと話すのが、吉佳が八木沼に手作りハンバーグをごちそうするシーンだ。

「演じていてもそこで空気が暖かくなる感じがしたんです。2人の距離がどんどん縮まるような気がしました」

俳優・SUMIRE、“殺人鬼トレミー”へ密かに思いを寄せる。ドラマ「悪の波動 殺人分析班スピンオフ」

全編にわたってほとんど感情を押し殺し、無表情に近い八木沼だが、吉佳の手料理を一口食べた彼の、フッと緩む口元が印象に残る。

「ドラマはクライムサスペンスということもあって暴力シーンやハラハラするシーンなどが連続します。このシーンはそうしたシーンとはギャップがあるので、自分でも気に入っています」

このシーン他、多くの伏線が張られた本作。サスペンスがどう収束していくのかはもちろん、八木沼と如月刑事との出会いにつながるラストまで目が離せない。何より本作では、八木沼を演じた古川雄輝の存在感が圧倒的だ。正体不明の怪しい雰囲気、彼が背負い続けてきた十字架の重み、深い悲しみを全身で表現。このスピンオフでますます”トレミー”ファンが増えてしまうのではないだろうか。

(文・坂口さゆり 撮影・大野洋介)

俳優・SUMIRE、“殺人鬼トレミー”へ密かに思いを寄せる。ドラマ「悪の波動 殺人分析班スピンオフ」
WOWOWオリジナルドラマ「悪の波動 殺人分析班スピンオフ」

物語は2014年、川崎市内で女性ばかりを狙った連続殺人事件が起きることから始まる。被害者は皆、首を吊(つ)られて殺されていた。〝首くくり殺人〟の犯人の手がかりがつかめず捜査は難航するが、捜査一課の刑事井口(池田鉄洋)は、古びたアパートに住む男・野木直哉(古川雄輝)をマークする。野木の本名は八木沼雅人。6歳の時に母親と一緒に誘拐され、瀕死(ひんし)の状態で発見された「昭島母子誘拐事件」の被害者だった。警察は、身元を詐称してひっそりと影を潜めて生きていた野木への疑惑を深めていく。そんな中、吉佳(SUMIRE)は野木が中学時代の同級生だったことに気づく。恵まれない家庭で育った吉佳と八木沼は中学時代にしばしば保健室で同じ時を過ごしていたのだった……。

原作:麻見和史『石の繭 警視庁殺人分析班』(講談社文庫刊)
脚本:清水匡 音楽:諸橋邦行 監督:内方輝、山本大輔 チーフプロデューサー:松永綾 プロデューサー:植田春菜、北川雅一 製作:WOWOW TBSスパークル 出演:古川雄輝、SUMIRE、深澤辰哉(Snow Man/ジャニーズJr.)、平埜生成、千葉哲也、阿南健治、二階堂智、鶴見辰吾、池田鉄洋ほか。
httpps:///www.wowow.co.jp/drama/hadou/

最終回は、3日(日) 夜10時30分よりWOWOWプライムにて放送。
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