こだわりと自分らしさ、リアルに 20年春夏東京コレクション
2020年春夏の新作を発表する東京コレクション(楽天ファッションウィーク東京)が、14~20日、渋谷ヒカリエを中心に開かれ、約40ブランドが参加した。ビンテージや伝統工芸を取り入れたブランドや、上質で洗練された服が目立った。

ハイク(左)、チノ(右)
シンプルな服で存在感を示したのが、ハイク(吉原秀明・大出由紀子)だった。袖が膨らんだシャツに、細かいプリーツが繊細な表情を見せるスカート。持ち味のクリーンなイメージに、甘い印象やカジュアルな要素を絶妙に加えた。さわやかな色も新鮮だ。
チノ(茅野誉之〈たかゆき〉)は、スカーフで仕立てたシャツやトリコロール色でフレンチシックを表現した。上品なパール風装飾は、パンツスタイルでシャープに。茅野は「エレガントな格好よさを伝えたかった」と話した。
伝統技を駆使

レインメーカー〈左〉、リト〈中〉、チルドレン・オブ・ザ・ディスコーダンス〈右〉
京都を拠点にするレインメーカー(渡部宏一・岸隆太朗)は、絞り染めのセットアップや竹工芸の小物入れなど、職人による京都の伝統技法を取り入れた。「自分たちのブランドを通じて、地元のものづくりを知ってもらいたい」と渡部は話した。
リアルクローズで浸透しつつあるチノとレインメーカーは、世界を目指すデザイナーを東京都などが支援する「東京ファッションアワード」を昨年受賞したのを機に東コレに参加し、今回が2回目だ。
16年設立のリト(嶋川美也子)は「より多くの人にブランドを知って欲しい」と初めて参加した。サマーウールや、光沢があり、とろっとした手触りの生地など、多彩な素材を用いた。柔らかさと潔さが共存したスタイルは大人の女性にぴったりで、日常着として着てみたいと思えた。
チルドレン・オブ・ザ・ディスコーダンス(志鎌〈しかま〉英明)には、ビンテージ素材を使ったバンダナ柄などのパッチワークに奥行きを感じた。「違うテキスタイルをミックスして、エレガントにする手法」と志鎌。胸元にフリンジをつけたシャツ、襟の合わせが民族的なコートなど変化をつけた服もあった。
現実を見よう
ベテラン勢は持ち味を発揮しながら、意表をつくデザインも見せた。

ヒロココシノ(左)、ユキ・トリイ・インターナショナル(右)
ヒロココシノ(コシノヒロコ)はピアノやバイオリンなど楽器を思わせるフォルムや色づかいが芸術的で、目を引いた。
ユキ・トリイ・インターナショナル(鳥居ユキ)はマーガレット柄のドレスからストライプをのぞかせるなど、対照的な組み合わせが若々しかった。鳥居は「自分らしくなれる服を選んで。それが好きな服を長く着ていくことにつながっていく」とコメント。

タエ・アシダ
タエ・アシダ(芦田多恵)は、現代アート風の顔をモチーフにするなど、優雅で力強いスタイルが印象的だった。芦田は「ネットで様々な情報が入ってくる時代に、Face it(現実を見よう)と伝えたかった。誰かと比べるのではなく、自分の個性の中に美しさがある」と話した。

トモ・コイズミ
今回、圧巻のショーで魅了したのが、トモ・コイズミ(小泉智貴)だ。著名スタイリストに見いだされ、今年2月と9月にニューヨークで発表し、一躍注目の的となった。鮮やかな色とフリルたっぷりの大胆さに心が躍った。ピュアな白から、オレンジや青などを経て、円熟した黒鳥のようなスタイルで終わり、人の一生の物語を感じさせた。小泉は「ニューヨークでショーができたことへの恩返しで、ギフトボックスのようなイメージで作った」
冠が「楽天」に
今回から冠協賛が楽天になった。特段の目新しさはなかったが、消費者とつなぐなど新たな取り組みが出てくるのだろうか。東コレの期間より前にショーを開くブランドも多く、参加は前回から約10ブランド減った。開催時期の再考も含め、東京から何を発信するかが問われている。今回は実際に着ようと思わせるリアルクローズが多く、そこにヒントがあるように感じた。(松沢奈々子、神宮桃子)
<写真は大原広和氏、野村洋司氏撮影>