このパンがすごい!

ロックなベーカリ-の自由なタルティーヌとさくさくデニッシュ/BAKE&ROLL

ロックなベーカリ-の自由なタルティーヌとさくさくデニッシュ/BAKE&ROLL

外観

 横浜市、たまプラーザの南に位置する住宅街で、異彩を放つ黒一色。一体これがパン屋なのか? 半信半疑で、中に入った。店舗内も黒で統一。壁、天井、棚、パンを取るトレイに至るまで。でも、アパレルのショップでも雑貨店でもない。黒い空間に浮かび上がるパン、そしてパン。

 この10月にオープンしたばかりの「BAKE&ROLL」。代官山のLotus Baguetteでシェフを務めていた久保田真琴さんによる、ロックンロールにちなんだ名前の店だ。

「パン屋で黒一色なんて他にないでしょう」

ロックなベーカリ-の自由なタルティーヌとさくさくデニッシュ/BAKE&ROLL

久保田真琴さん

 黒の中に白。ちょうど、「エビとホタテのタルティーヌ」が焼きあがったところだった。甘くミルキーなベシャメルの海を泳ぐ、ぷりぷりエビにホタテは、まるでクリームシチュー。というだけでなく、オーブンでしっかり焼かれ、上半分は、海鮮BBQのごときロースト感。台となるルヴァンの酸味、全粒粉の芳香が、磯の香りに寄り添う。

 黒の中に鮮やかな赤は、「ラタトゥイユのタルティーヌ」。おしゃれメニューか? と思いきや、トマトベースの陽気な甘さは、カップリングされた長いソーセージ一本とあいまって、ホットドッグをほうふつとさせる、お子ちゃま大好き味。野菜嫌いの子でも飛びつきそうだ。

ロックなベーカリ-の自由なタルティーヌとさくさくデニッシュ/BAKE&ROLL

エビとホタテのタルティーヌ、ラタトゥイユのタルティーヌ

 久保田さんがタルティーヌを作るのには理由がある。

「パンはなんでも好きに食べていいものだってことを表現するのに、タルティーヌはもってこい。みんなにもっと自由にパンを食べてほしい。さんまのっけて食べたっていいですし」

 パンになにをのせるも自由。タルティーヌとはロックンロールな食べ物なのだ。

「エビとホタテのタルティーヌ」の台になっているのは「カンパーニュ」。高温で焼いた皮はかりっと、反対に、中身は生地が輝くほどに水を含んで、しっとりしている。アメリカ・セントラルミリングのオーガニックライ麦全粒粉からルヴァン種を起こし、北海道・十勝産石臼挽き粉「スムレラ」やフランス産「トラディション・フランセーズ」など洋の東西を代表するハード系用の粉を使用。そのおかげで、口溶けのときの鼻に抜けていく麦の香りは濃厚かつ繊細だ。

「シナモンロール」がセクシーだった。ぐるぐるとロールさせた生地。その1本1本が細身で、かりかりっとしている。そこへチーズフロスティングがねっとり濃厚に。かりかりとねっとり、甘さと酸味、乾きと潤いが出会って、じょじょに混ざり合い、とろけあっていく様に、昇天する他ない。

ロックなベーカリ-の自由なタルティーヌとさくさくデニッシュ/BAKE&ROLL

シナモンロール

「ミルククリームサンド」も、クリームだけ、生地だけではなく、合わさったときはじめてエロティシズムがマックスに達するよう、仕組まれていた。フランスパンではなく、ややミルキーでやや甘い生地がむっちりして軽快に割れる。そこに、ミルククリームの潤いが合わさると、絶妙の甘さとあふれるミルキーさが完成、快楽のスイッチがオンになる。
「食感は『もちっ』と『さくっ』の中間を意識、口溶けのよさを追求しました。粉もクリームもすべて北海道産です」

「栗のデニッシュ」は、くっきりと浮き出た層がコケティッシュ。焦げる寸前まで焼かれて乾ききり、歯に触れた瞬間、ざっくざっくと崩壊していった。バター感は、アーモンドペーストによってコクを強められ、栗のペーストからあふれまくる秋の香りと、タイマン勝負を繰り広げる。

ロックなベーカリ-の自由なタルティーヌとさくさくデニッシュ/BAKE&ROLL

栗のデニッシュ

 フルーツやペーストを後のせするデニッシュは、久保田さんのライフワークなのだという。
「日本一さくさくを目指しています(笑)。自分自身ヴィエノワズリーが大好きで、パンを作りはじめたときから折り込み(デニッシュ)生地にこだわってきました。きれいに、丁寧にバターを折り込む。焼き方にもこだわって、ぎりぎりまで焼いています」

「BAKE&ROLL」という店名の意味を訊くと、「転がっても転がってもベイクしつづけたい」。その意気や、よし。ロックンロールなパン道を突き進んでくれるはずだ。

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BAKE&ROLL
横浜市都筑区東山田3-27-5
日月休み
9:00~18:00(売り切れ終了)
https://www.instagram.com/bake_and_roll.kitayamata/

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    PROFILE

    池田浩明

    佐賀県出身。ライター、パンの研究所「パンラボ」主宰
    日本中のパンを食べまくり、パンについて書きまくるブレッドギーク(パンおたく)。編著書に『パン欲』(世界文化社)、『サッカロマイセスセレビシエ』『パンの雑誌』『食パンをもっとおいしくする99の魔法』(ガイドワークス)、『人生で一度は食べたいサンドイッチ』(PHP研究所)など。国産小麦のおいしさを伝える「新麦コレクション」でも活動中。最新刊は『パンラボ&comics 漫画で巡るパンとテロワールな世界』(ガイドワークス)
    http://panlabo.jugem.jp/

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