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<125>高崎から発信する「反抗」のススメ 「REBEL BOOKS」

 だるまや巨大な高崎観音、榛名山などで知られる、群馬県最大の街・高崎市。上越・北陸新幹線で東京駅から1時間のJR高崎駅は、多数の路線が乗り入れる群馬県の玄関口として機能している。駅直結の商業施設も充実し、いつも多くの人でにぎわっている。しかし、駅から旧中山道沿いに15分も歩けば、のんびりとした雰囲気が漂ってくる。昭和の名残が感じられる建物が多いせいだろう。

「REBEL BOOKS」は、そんな街並みの一角にある小さな新刊書店だ。3階建ての建物で、角の丸いショーウィンドーに、スモーキーなブルーに彩られた引き戸が目印。レトロモダンでおしゃれに見えるが、意外にも以前は寿司屋や小料理屋だったという。

「戸を北欧っぽい色で塗ってみたら、それっぽくなりましたね(笑)。駅前の人通りの多いところよりは、ちょっと奥まったくらいの場所がいいかなと思って。この建物のサイズ感も気に入りました」

<125>高崎から発信する「反抗」のススメ 「REBEL BOOKS」

 店主の荻原貴男さん(40)は高崎市出身。大学進学を機に上京し、社会人を経て専門学校に入り、デザインの勉強に専念した。10年前に高崎に戻り、フリーランスのデザイナーとして活動し始めた。一方で、本が好きで、個人が営む書店も好きだった荻原さん。漠然と「50代くらいになったら地元で本屋をやるのもいいかも」と考えていた。そんな時、「本屋 B&B」を経営する内沼晋太郎さんが登壇するトークイベントが地元で開催され、荻原さんも話を聞きに行った。

 そこで、本屋B&Bには本、ドリンク、イベントという三つの売り上げがあり、イベントの売り上げが大きな割合を占めるビジネスモデルで運営しているという内沼さんの話を聞き、「そういうやり方の新刊書店があるのか」ということに気付かされる。

「このトークイベントは転機の一つになりました。東日本大震災のあと、いつ何があるかわからないからやりたいことは早めにやったほうがいいという気持ちもどこかにありましたし。高崎には選書に特色のあるタイプの小さい新刊書店がなかったので、誰もやっていないなら自分が作ろうかなと」

<125>高崎から発信する「反抗」のススメ 「REBEL BOOKS」

 2016年12月に店をオープンした時、今の3分の1くらいしか本がなかったと荻原さんは振り返る。小部数でも配本してくれる取次を人から教えてもらったり、出版社に直接取引を依頼したりして少しずつ仕入れ先を増やし、扱う本を増やしていった。

 今、店内にあるのは約1900冊で、デザイン、音楽、食などがやや多め。文学、哲学、自然科学などと幅広いジャンルを集めることを意識しているという。店ではクラフトビールやクラフトジン、日本酒、ソフトドリンクを取り揃(そろ)えており、飲みながら本をながめることができる。

<125>高崎から発信する「反抗」のススメ 「REBEL BOOKS」

 また、個人による手作り小冊子・ZINEも約40種類そろえている。荻原さんは以前、浜松で働いていたことがあり、その時に気に入った店を紹介するZINEを作ったのがきっかけで興味を持つようになった。2013年からは高崎で半年に1回、「ZINPHONY」というZINEの展示販売イベントを主催。回を重ねるごとに人気のイベントとなり、来年1月には13回目が予定されている。

「『本を買うぞ!』という気持ちで来てくれる本好きの人が、まとめて買ってくださることに支えられていると思います。この店を通じて、普段本を読まない人に、面白い本がたくさんあるよということを伝えたいと思ってます、簡単ではありませんが」

 店を訪れるのは地元の人たちばかりではない。群馬県内各地、埼玉県北部、栃木県西部、東京など、広範囲から噂(うわさ)を聞きつけた本好きが来てくれるという。店の情報発信はSNSが頼りだ。

「SNSがなかったら成立しないんじゃないかというくらい。インスタグラムは本の紹介に特化し、ツイッターやフェイスブックはイベントの告知や新入荷情報などを写真つきで発信しています」

 インスタグラムで本を紹介すると、「インスタで見た本を買いに来ました」という人が多く、「あの本を送ってもらえますか?」という依頼も舞い込むという。

<125>高崎から発信する「反抗」のススメ 「REBEL BOOKS」

 荻原さんは、店番しながら読書をする自分を想像していたが、現実は本の仕入れ、イベントの企画、デザイナーとしての仕事など、やることが多すぎて労働時間も長く、「“ひとりブラック企業”状態です」と笑う。

「店を始める直前に、雑貨店をやっている人に、『お店を始めると大変なことがいっぱいあるけど、それを上回るいいことがたくさんあるので頑張ってください』と言われたのですが、まさにその通りでした」

 店がオープンした頃、近所には「灯り屋」というカフェ&ゲストハウスがあっただけだが、この3年間に定食屋やビストロ、洋服屋などが少しずつ増えていった。

「古い建物がいっぱい残っている場所なので、個人でやっている小さいけれど面白い店が増えるんじゃないかと思っていたら、実際に増えてきましたね」

 そこで、荻原さんは「高崎市街地を歩いて楽しむMAP」を作り、店を訪れた客に渡している。

「東京から友達がよく1泊2日で来て、いろいろ回って帰っていく。『意外に楽しい』って言ってくれています。湘南新宿ラインには高崎行き直通があります。グリーン車だとゆったり座れて、読書しているうちにあっという間に着いてしまいます。高崎と東京って慣れるとそんなに遠くないですよ」

 店名のREBELには「反抗する」という意味がある。あらゆる情報やトレンド、仕事などが東京に集中しているのが現状だが、地方都市で個人書店を営むことも小さな反抗の一つと言えるだろう。

「社会の中でよくする余地があるものに対しては、ものを言っていきたい。また、日常が暇で退屈なものだったとしても、本があれば退屈じゃない。退屈に抗(あらが)うのは自分次第という思いも込めています」

<125>高崎から発信する「反抗」のススメ 「REBEL BOOKS」

■おすすめの3冊

『山風にのって歌がきこえる 大槻三好と松枝のこと』(著/惣田紗希)
太田市美術館・図書館で昨年8月に開催された「ことばをながめる、ことばとあるく 詩と歌のある風景」の出品作品から誕生した一冊の本。「昭和初期の太田市に教員で歌人の大槻三好さんと妻の松枝さんが、結婚前にお互いを密かに想っている頃から結婚後も交わし続けた口語短歌に、足利市のイラストレーターの惣田さんがイラストを描き、装丁も担当した本です。この展示、本当に素晴らしかったのですが、『展示を見ました!』といって買いに来られる方がすごく多いんです。自分も書籍化されたことを喜んでいます」

『地球温暖化は解決できるのか パリ協定から未来へ!』(著/小西雅子)
国際NGOの専門スタッフである著者が、これまでの温暖化対策と今後の課題をわかりやすく解説。「ジュニア新書なので中高生向けに書かれているのですが、これ1冊読むと、地球温暖化の問題がだいたいわかります。最近ではスウェーデンの環境活動家グレタ・トゥンベリさんが話題になりましたが、一人ひとりが地球温暖化についてもうちょっと知っておいた方が建設的なんじゃないかと思うんです」

『僕は僕のままで』(著/タン・フランス、訳/安達眞弓)
5人のゲイが依頼人の人生を変える、Netflixの超人気番組「クィア・アイ」ファッション担当のタンの回顧録。「この番組好きなんです! 世の中の多様性を知り、自分を肯定するにはこの番組を見るのが一番いいと思っています。パキスタン系イギリス人として差別されたり、ファッションビジネス[AY2]で成功するまで苦労したり、といろんなことが書かれています。番組とこの本、セットで楽しんでほしい」

    ◇

REBEL BOOKS
群馬県高崎市椿町24-3
http://rebelbooks.jp/

(写真・山本倫子)

>>写真の続きは画面下のギャラリーをご覧ください

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    PROFILE

    吉川明子

    兵庫県生まれ。コンピューター・デザイン系出版社や編集プロダクション等を経て2008年からフリーランスのライター・編集者として活動。旅と食べることと本、雑誌、漫画が好き。ライフスタイル全般、人物インタビュー、カルチャー、トレンドなどを中心に取材、撮影、執筆。主な媒体に週刊朝日、アサヒカメラ(「写真好きのための法律&マナー」シリーズ)、婦人公論、BRUTUS、mi-molletなど。
    https://www.instagram.com/a_yoshikawa0227/
    https://note.mu/akikoyoshikawa

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