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最先端のアジア映画を探しに行こう 第20回東京フィルメックス

アジアの若手作品や世界の映画祭を沸かせた話題作を紹介してきた「東京フィルメックス」が設立20周年を迎えた。第20回の今回は11月23日から12月1日まで、東京・有楽町朝日ホールなどで開催。ワールドシネマの最前線にたっぷり浸れる9日間。主な見どころを紹介しよう。

既成の概念にとらわれないアジア映画を紹介し、映画人たちの交流拠点を作ろうと2000年に誕生したフィルメックス。創設時から全面支援してきたオフィス北野が映画事業から撤退し、代わって支援に乗り出した木下グループも1年限りでスポンサーを降りるなど波乱が続いていたが、新たに京都のミニシアター「京都シネマ」「出町座」を運営する映画製作会社シマフィルムが特別協賛を引き受け、例年通りの規模での開催が決まった。

コンペ部門に日本から2作品

最先端のアジア映画を探しに行こう 第20回東京フィルメックス

ラインナップ発表会見。左から市山尚三ディレクター、コンペ部門の中川龍太郎監督、広瀬奈々子監督、シマフィルムの田中誠一氏

コンペティション・特別招待作品・特集上映を柱に上映作品は30本前後。コンパクトな規模ながら、新作からクラシックまで目配りしたラインナップや多彩なゲストの充実度で映画好きの支持を集めて来た。期間中はアジアの新鋭監督が集まるワークショップ「タレンツ・トーキョー」も会場内で併催され、映画の作り手と観客が一体となった独特の熱気を味わえる。

コンペ部門は10作品。最優秀作品賞を2度受賞したチベットのペマツェテンや、「タレンツ・トーキョー」の第1期生だったシンガポールのアンソニー・チェンらフィルメックスとゆかりの深い監督や、カンボジア、ミャンマー、フィリピンなどの俊英監督が登場する。日本からは「四月の永い夢」などで知られる中川龍太郎監督が宮下奈都のデビュー小説を映画化した「静かな雨」と、「夜明け」でデビューした広瀬奈々子監督がブックデザインの第一人者・菊地信義を追ったドキュメンタリー「つつんで、ひらいて」の2作品が選ばれた。

>>ディレクターのコンペ部門全作解説

製作の裏側を追ったドキュメンタリーも

今年のオープニングを飾るのは、「ふたりの人魚」で第1回の最優秀作品賞を受賞した中国のロウ・イエ監督のサスペンス「シャドウプレイ」(この記事のトップ画像)。建設業界の汚職事件という題材のせいか完成から4年近く上映許可が下りず、2月のベルリン国際映画祭パノラマ部門でようやくプレミア上映を果たした。そんな製作の舞台裏を監督の妻で共同脚本家のマー・インリー監督が記録した「夢の裏側 ドキュメンタリー・オン・シャドウ・プレイ」も併せて上映される。

最先端のアジア映画を探しに行こう 第20回東京フィルメックス

クロージング作品の「カミング・ホーム・アゲイン」

クロージング作品は昨年の審査委員長を務めたウェイン・ワン監督の「カミング・ホーム・アゲイン」。注目の韓国系米国人作家チャンネ・リーのエッセイを原作に、「ジョイ・ラック・クラブ」で知られるワン監督が久々に在米アジア人の家族を描いた作品で、トロント映画祭で好評を博した。

最先端のアジア映画を探しに行こう 第20回東京フィルメックス

「ある女優の不在」。見知らぬ少女の自殺予告を受け取った有名女優が彼女を探すロードムービー

他にも特別招待作品はワールドシネマの話題作揃い。ジャファル・パナヒ監督の「ある女優の不在」はカンヌ国際映画祭脚本賞受賞作。ペドロ・コスタ監督の「ヴィタリナ(仮題)」はロカルノ国際映画祭で金豹賞(最優秀作品賞)と女優賞をダブル受賞。「少女は自転車にのって」のハイファ・アル=マンスールの新作「完全な候補者」は、アカデミー賞国際映画賞のサウジアラビア代表に選ばれた。

最先端のアジア映画を探しに行こう 第20回東京フィルメックス

クラシック部門の「牛」。イラン映画史の金字塔がデジタル復元版で登場

デジタル修復で甦ったクラシック作品も充実している。ダリウシュ・メールジュイの「牛」(1969年)は、イラン映画が世界の注目を集めるきっかけとなった風刺喜劇の傑作。武侠映画の巨匠キン・フーの傑作「空山霊雨」や1話を手掛けたオムニバス「大輪廻」も登場する。ホウ・シャオシェン監督の「フラワーズ・オブ・シャンハイ」の復元版や、ホウ監督の創作の秘密にオリヴィエ・アサイヤス監督が迫ったドキュメンタリー「HHH:侯孝賢」も上映される。

最先端のアジア映画を探しに行こう 第20回東京フィルメックス

閉館前夜の有楽町スバル座で開かれた阪本順治監督のトークショー

特集上映ではデビュー30周年を迎えた阪本順治監督。10月に惜しまれて閉館した有楽町スバル座で一部を先行上映し、フィルメックスでは「鉄拳」(1990年)、「ビリケン」(1996年)、「KT」(2002年)、「この世の外へ クラブ進駐軍」(2004年)の4作品を監督のトークとともに上映する。

人気投票で選んだ歴代受賞作も登場

最先端のアジア映画を探しに行こう 第20回東京フィルメックス

歴代人気受賞作の1本「息もできない」

第20回の記念企画として歴代の受賞作品から一般投票で選んだ人気作品のアンコール上映も。ロウ・イエ監督の「ふたりの人魚」、ヤン・イクチュン監督の「息もできない」(第10回最優秀作品賞&観客賞)、内田伸輝監督の「ふゆの獣」(第11回最優秀作品賞)がフィルメックスのスクリーンに帰ってくる。

第1回から作品選定を担当する市山尚三ディレクターは、「この20年で一番大きな変化は映像のデジタル化。撮影がフィルムからデジタルに移行したこと」と振り返る。第1回の上映作品はほとんどがフィルム。メイン会場はフィルム上映しか対応しておらず、ビデオ作品は別会場で特集上映した。だが、今年は阪本監督の旧作を除きすべてがデジタル上映だ。

「デジタル撮影機材の普及で、作り手のすそ野が広がり、映画産業が盛んではない地域からも次々に新たな才能が登場しています。初期は中国、香港、台湾、イランやロシアで映画を学んだ監督が多い中央アジアの作品が主軸でしたが、近年は東南アジア諸国の躍進が目覚ましい。国境を超えた作り手たちの交流も進み、様々な地域の才能が刺激し合って面白い状況が生まれています」

そこから厳選されたコンペ部門の注目ポイントは>>市山ディレクターによる全作品解説で詳しく紹介する。

最先端のアジア映画を探しに行こう 第20回東京フィルメックス

昨年の「タレンツ・トーキョー」の修了式。アジアの若手監督や製作者が一線のプロから映画製作の極意を学ぶ

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第20回東京フィルメックス 11月23日(土)~ 12月1日(日)、メイン会場は有楽町朝日ホール、レイトショーはTOHOシネマズ日比谷スクリーン12(東京宝塚ビル地下1F)で上映。チケットは、有楽町朝日ホールの上映回がセブン-イレブンの「セブンチケット」、TOHOシネマズ日比谷の上映回がTOHOシネマズのチケット販売システム「vit」とTOHOシネマズ日比谷のカウンターで発売中。11月28日(木)には、誰でも無料で参加できる「タレンツ・トーキョー」のオープンキャンパスもある。上映スケジュールやイベントの詳細は公式サイト

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