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ブランドの神髄、多層的に カルティエ、シャネル、エルメスの展覧会

フランスの有名ブランド、カルティエ、シャネル、エルメスの作品を集めた展覧会がそれぞれ都内で開催中だ。いずれも単にブランドの歴史をなぞるのではなく、ブランドが神髄とする考え方やデザインを切り口に、多層的でユニークな展示内容になっている。(編集委員・高橋牧子、神宮桃子)

ブランドの神髄、多層的に カルティエ、シャネル、エルメスの展覧会

(左)2本のシダの葉のブローチと掛け軸=カルティエ提供、(右)布の柱の中でミステリークロックが照らされたコーナー

時超えるデザインの力 カルティエ展

六本木の国立新美術館で開催中の「カルティエ、時の結晶」展では、約300点のカルティエの宝飾品や時計を通して、「時間」をテーマにメゾンの革新性や普遍性に光を当てる。「色と素材のトランスフォーメーション」、「フォルムとデザイン」など三つの章があり、世界の顧客約90人の、普段はあまり人目に触れない所蔵品が約半数を占める。
入り口の奥には、針が浮かんでいるように見えるミステリークロックが、高さ8メートルの透ける布の12本の柱の中で照らされる。

会場構成は、現代美術作家の杉本博司と建築家の榊田倫之(ともゆき)による新素材研究所が担当。杉本が所蔵する骨とう品や日本的な素材をふんだんに使った迷路のような空間が、時を行きつ戻りつするような感覚に誘う。

展示も「時間」を柱に工夫されている。「色と素材―」の章では1936年と2016年の、それぞれカラフルな色石を使ったネックレスのデザインが対比されている。また、カワセミの羽根など変わった素材使いの作品などがある一方、宝石名やカラット数はあまり目立たない。

「フォルムとデザイン」の章では、幾何学的な形などジュエリーに凝縮された建築性や動きに着目。栃木県の大谷石を積んだスペースに、アールデコ調の作品などが並ぶ。

顧客である王室や著名人がつけた宝飾品も数多い。モナコ王室から5点の貸し出しがあり、期間中に来日していたモナコのアルベール2世公が訪れ、母であるグレース公妃の大粒なルビーを配したティアラなどを熱心に見ていた。

デザインから企業イメージまでを統括する、カルティエのピエール・レネロは、「美術館と新素材研究所との3者の案が融合したことで内容がうまく変容していった」と語る。

国立新美術館の本橋弥生・主任研究員は、「アーティストが作る美術品としての企画。石の価値よりもデザインの要素を分解・分析した」という。

12月16日まで(火曜休み)。入場料は一般1600円など。

歴代「No.5」や輝くスーツ シャネル展

ブランドの神髄、多層的に カルティエ、シャネル、エルメスの展覧会

ベージュの部屋

「マドモアゼル・プリヴェ展・ガブリエル・シャネルの世界へ」は、品川区・天王洲のB&C HALLが会場。マドモアゼルと呼ばれた創始者ガブリエル・シャネルの時代から続くオートクチュールとハイジュエリー、香水「シャネルNo.5」に的を絞り、自由で革新的な世界観を表現した。ロンドンやソウルに続く5都市目の巡回展だが、映像など東京独自の編集も多い。

展示は、シャネルが愛した部屋とその調度品などの色調により五つのゾーンで構成されている。ソファのベージュ、鏡の縁の金、漆塗りのテーブルの黒といった具合だ。それぞれの色ごとに、服と復刻したダイヤモンドジュエリー、歴代のNo.5の香水瓶などが並ぶ。

ブランドの神髄、多層的に カルティエ、シャネル、エルメスの展覧会

オートクチュールのドレス=いずれもシャネル提供

なかでも見ものは、96年春夏から現在までのオートクチュール作品の数々。前デザイナーの故カール・ラガーフェルドによる、2240時間以上かけた20万個のビーズが輝く刺繍(ししゅう)のスーツを始め、手で複雑に寄せたスカートのプリーツや、立体的な小さな花飾りなどが間近で見られる。

すぐ近くの別会場では写真展や、ラガーフェルドが手掛けた映画などが放映されている。
12月1日まで。無料。入場はLINEでの事前予約が必要で、同展のサイトhttps://mademoiselleprive.chanel.jp/で案内している。

顧客の夢、遊び心で形に エルメス展

ブランドの神髄、多層的に カルティエ、シャネル、エルメスの展覧会

柳細工や革が使われた人力車

エルメスは、スペシャルオーダー(特注)の品を集めた「夢のかたち」展を六本木ヒルズノースタワーで開いている。「こんなものが欲しい」という顧客からの注文や、世界中の店舗から出たアイデアによる24のユニークな「夢」が、ブランドの技で具現化されている。

こんもりと丸みを帯びた、日本の鼓を入れるために作られたバッグ、スカーフの柄を使ったサーフボード。それぞれから注文主のこだわりが伝わってくる。上質な革を使ったテーブルサッカーゲームやジュークボックス、バイクなど遊び心たっぷりの物も。

柳細工で編まれた車体に、革のシートやほろを合わせたのは人力車で、伝統的な乗り物がエレガントなたたずまいに。さらに、自動車や飛行機の内装といったスケールの大きなものもある。

スペシャルオーダー部門でデザインを手がけるアクセル・ドゥ・ボーフォールは「我々が様々な要望に応えられることを伝えたい。オーダーの仕事は、常に新しい夢を作る大きな喜びがある。日本から頂く注文は多く、妥協しないという点では、日本の客もエルメスも同じだ」と話した。
今月17日まで。無料。

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