このパンがすごい!

このフォカッチャの断面を見よ! 永遠のパン飲み循環イタリアン/チッツィア

このフォカッチャの断面を見よ! 永遠のパン飲み循環イタリアン/チッツィア

フォカッチャ

 11月7日、やさしく、楽しい、パン飲みイタリアンが誕生した。ばばかつえシェフがひとりでパンを焼き、料理も作る、西小山の「チッツィア」。まるで手打ちそば屋みたいに、パン焼きの風景が、店の外から見えている。昼と夜、オープン直前に、パンが焼き出され、店内にパンの香りが満ちる。

 カウンターとオープンキッチンでは垂涎(すいぜん)の光景が展開する。焼きたてのフォカッチャにナイフを入れると立ち上る湯気。供された断面を見よ。底のあたりを彩る黄色い筋。どぼどぼかけまわしたオリーブオイルが溜(た)まって層になっている。

 ふわふわでもっちり。北海道産小麦とオリーブオイルが作りだすグラマラスな甘さ。そしてなにより、皮がさくさくぱりぱりとまるでパイのように割れる食感。たっぷりオリーブオイルをかけなければ、この食感にはならない。

 ランチで供されていた「モルタデッラのパニーニ」。キタノカオリで作るバゲットは、手ごねだからこそのもっちり感、バターのような甘さが存分に表現されていた。そこに、モルタデッラ、炒めて甘さをだした赤タマネギのマリネ、たっぷりの発酵バターと、甘さに甘さを重ね、ばばさんがこよなく愛するキタノカオリの個性に寄り添う。

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モルタデッラのパニーニ

 すべてのパンに国産小麦を使用する。
「野菜も、ワインも、日本のものを推したいんです。イタリアも大好きだから、イタリアのワインも使う。生産者の顔が見えるのが大好きなんですよね。料理名もなるべく『○□○□さんの野菜』『○□○□さんの小麦』ってしたくて。誰かが食べ物を作ってくれていることを伝えられたら、より楽しく、あったかい気持ちで食べられますし。生産者さんもここに来て、実際に食べてる人の顔を見て、よろこんでもらえるかもしれない」

 十勝の自然栽培農家・中川泰一さんから送られてきた小麦を自家製粉して使用、岩手県産「もち姫」と合わせたパン。「パンじゃなくて、もちか?」というほど、食感はねっとりもちもち。と同時に、中川さんの自然な麦ならではの酵素が活発に活動、めんつゆをほうふつとさせる旨味(うまみ)が豊かに醸しだされていた。

 このパンに合う料理は? と尋ねて出てきた「えびときのこのアヒージョ」。オリーブオイルの中を遊泳するえびときのこのぷりぷりコンビ。そのおいしさを、パンのめんつゆ感がネクストレベルに引き上げる得難い体験。

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岩手県産「もち姫」と中川さんの小麦のパン、えびときのこのアヒージョ

 ばばさんの作るパンは、噛(か)めば噛むほど、ぶわっぶわっと香りと旨味がちょちょぎれてくる。だから、そこにワインを注いでみたくなり、ワインを飲めばまたパンを食べたくなる。永遠のパン飲み循環が見事成立するのだ。

 ばばさんの選ぶ自然派ワイン。「いちばん好き」という、宮城県のワイナリー「ファットリア アル フィオーレ」の「hana」。花のような香りがふわっと香って、野原を思い起こさせるようなやさしい残り香がずっと香っている。

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ファットリア アル フィオーレの「hana」

 実は前述のパンたちは、「hana」の原料となる、アルフィオーレのぶどう「スチューベン」から起こした発酵種から作られる。

 中川さんコンボはさらにつづく。「中川さんの麦サラダ」には茹(ゆ)でた麦の粒を使用。香ばしいだけではなく、噛むたびにぷちぷち感とともにふわっとやさしくでんぷんフレーバーの吐息を感じることができる。

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中川さんの麦サラダ

 さらに、中川さんの小麦を挽(ひ)き、ふるったあとのふすまさえ、東京都東久留米産「柳久保小麦」と合わせてパスタに使用。注文が入ってから生地を取りだし、細く切っては1本1本指でつまんでびよーんと伸ばす。

「トスカーナの作り方です。麺棒で力をかけて伸ばすと、(グルテンが出て)もちもち感が減っちゃう。ぶっといパスタになってOK。適当でいいんです」

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サルシッチャとブロッコリーのパスタ

 自家製のサルシッチャ、ブロッコリーにパルメザンチーズをかけて仕立ててくれた。ぷにょぷにょと愛らしいもっちり感、ねっとりとした口溶けは「おしゃれすいとん」といった趣。「適当」だからこそじわじわと日本の麦のおいしさが広がる。

 まるで愛情深き「ママン」の手料理。素材を愛し、料理を愛し、人を愛するからこそのおいしさ。いつも笑いが絶えないばばさんを中心とするチームの空気もいい。パンや料理をいちばんおいしくするのは、愛の力だ。

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シェフのばばかつえさん

チッツィア
東京都品川区小山 6丁目6-3
03-6314-3965
12:00~14:30(L.O.14:00)、18:00~23:00(L.O.22:00)
(日曜は12:00~18:00[L.O.17:00])
月曜休(日曜祭日不定休)

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    PROFILE

    池田浩明

    佐賀県出身。ライター、パンの研究所「パンラボ」主宰
    日本中のパンを食べまくり、パンについて書きまくるブレッドギーク(パンおたく)。編著書に『パン欲』(世界文化社)、『サッカロマイセスセレビシエ』『パンの雑誌』『食パンをもっとおいしくする99の魔法』(ガイドワークス)、『人生で一度は食べたいサンドイッチ』(PHP研究所)など。国産小麦のおいしさを伝える「新麦コレクション」でも活動中。最新刊は『パンラボ&comics 漫画で巡るパンとテロワールな世界』(ガイドワークス)
    http://panlabo.jugem.jp/

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