花のない花屋

声をあげて泣く母、不器用に支える父 2人に癒やしの花束を

〈依頼人プロフィール〉
竹内佳奈さん 36歳 女性
東京都在住
主婦

     ◇

今年の夏の初め、93歳の祖父が倒れました。何かの拍子でベッドから落ちたときに意識がもうろうとし、そのまま床に倒れていたのを祖母が深夜に発見。救急車で病院に運ばれたのです。診断は重度の熱中症。祖父は高齢で暑さに対する感覚が鈍くなっていたのに加え、クーラーが嫌いで、夜寝るときはエアコンをつけていませんでした。今も病院に入院したままです。
 
さらに、祖父の入院がきっかけとなり、1人で家に残ることになった祖母の認知症もかなり進行してしまいました。一昨年くらいから、冷蔵庫を開けると中身がパンパンで、数年前に賞味期限が切れたものまであり、「あれ?」と思うことがあったのですが、1人になってからは料理をすることすら危なくなりました。また、夜になると「お父さんがいない」と祖父を捜しに行こうとしたり、昼間に家を訪ねると、喪服姿で立っており、「これからお父さんのお葬式に行くの」と言ったり……。
 
祖母はもともと頑固で他人に干渉されるのが嫌いな性格だったので、こちらが口を出したり、手を出したりすることも難しく、私たち家族ではどうにもならなくなってきました。しかも、母が「デイケアに行ってみたら」と言うと、ひどい言葉で悪態をつくようになってしまいました。

母は一日三度の食事を作り、入院先でわがままを言う祖父をなだめ、家では祖母が起こす大小様々な事件に振り回され、ののしられ……それが繰り返されていくうちに心身ともに疲弊していきました。

ふだんは無理をしてでも明るく元気でいたいと思う性格の母ですが、最近はベッドに横になるといろいろなことを考えて不安になってしまうようで、夜はソファでテレビを見ながら横になり、お酒を飲んで少しだけ眠る、という状態になってしまいました。

父と2人きりになると、声をあげて泣いているそうです。そんな母を、父は不器用ながらも愛情を持って必死に支えています。私もできる限りのことはしているつもりですが、2人の気持ちが少しでも明るくなるために何かできることはないか、と思っていたところにこの連載を見つけました。

そこで、両親の心が癒やされ、元気になれるような花束を作っていただけないでしょうか。母はガーデニングの資格を持っており、バラやスイートピー、トルコキキョウ、ラナンキュラス、ダリアなどが好きです。リビングで休んでいるときに目にして、「明日もがんばろう」と思えるような、穏やかでやさしい色合いのアレンジだとうれしいです。

声をあげて泣く母、不器用に支える父 2人に癒やしの花束を

花束を作った東さんのコメント

いろいろなことが重なり、本当に大変でしたね。今回は心癒やされる花束をと思い、白とグリーンでふんわりとした安らぎのあるアレンジに仕上げました。

使用したのは、お母様がお好きな花々が中心です。バラは一輪咲きとスプレー咲きの2種類で、スプレー咲きはラナンキュラスの代わりとして入れました。トルコキキョウも一重咲き、八重咲きの2種類を入れ、八重は下の方にボリュームたっぷりに挿しました。グリーンはアセボと、動きのあるクレマチスのシード。クレマチスを使うと、全体的に軽やかで、ガーデン風の印象になります。ところどころにちりばめたトルコキキョウのグリーンのつぼみも白い花の中でアクセントになっています。

白一色の花束ではありますが、どこか生成りっぽいあたたかみのある白を意識してまとめました。これを見て、少しでも心が安らいでいただければ……。

声をあげて泣く母、不器用に支える父 2人に癒やしの花束を

声をあげて泣く母、不器用に支える父 2人に癒やしの花束を

声をあげて泣く母、不器用に支える父 2人に癒やしの花束を

声をあげて泣く母、不器用に支える父 2人に癒やしの花束を

(&編集部/写真・椎木俊介)

>>これまでの「花のない花屋」をまとめ読み


  •    

    転職で新しい一歩 子どもたちの応援を胸に
       

       

    転職で新しい一歩 子どもたちの応援を胸に


       


  •    

    見習いたい大きな存在 99歳の祖母へ

       

    見習いたい大きな存在 99歳の祖母へ


       


  •    

    募る後悔。なんで最期くらい、優しくなれなかったんだろう
       

       

    募る後悔。なんで最期くらい、優しくなれなかったんだろう


       

  •      ◇

    「&w」では、読者のみなさまから「物語」を募集しています。
    こんな人に、こんな花を贈りたい。こんな相手に、こんな思いを届けたい。
    花を贈りたい人とのエピソードと、贈りたい理由をお寄せください。毎週ひとつの物語を選んで、東さんに花束をつくっていただき、花束は物語を贈りたい相手の方にプレゼントします。その物語は花束の写真と一緒に&wで紹介させていただきます。
    詳しくは応募フォームをご覧のうえ、お申し込みください。

    フラワーアーティスト・東信 (あずままこと)

    声をあげて泣く母、不器用に支える父 2人に癒やしの花束を

    1976年生まれ。
    2002年より花屋を営み続け、現在は東京・南青山にてオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。2005年よりフラワーアーティストとして、ニューヨーク、パリ、ドイツ、ブラジル等、国内外で精力的な活動を展開。独自の視点から花や植物の美を表現し続けている。
    作品集に「ピエール・エルメ サティーヌ」「ENCYCLOPEDIA OF FLOWERSII 植物図鑑」(ともに青幻舎)など。

    facebook

    instagram

    http://azumamakoto.com/

    PROFILE

    椎木 俊介(写真)

    ボタニカル・フォトグラファー

    2002年、東信とともに、銀座にオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。東が植物による造形表現をはじめると時期を同じくして、カメラを手にし、刻々と朽ちゆき、姿かたちを変容させていってしまう生命のありようを写真に留める活動に傾倒していく。日々、植物に触れ、その生死に向き合ってきたからこそ導き出すことのできる、花や植物のみが生来的に有する自然界特有の色彩や生命力、神秘性を鋭く切り取っていく。

    2011年に初の作品集となる東信との共著『2009-2011 Flowers』(青幻舎)を発表以降、常に独特の視点ですべての東の作品を捉え続け、近年は映像制作にも力を入れ、多岐にわたる活動を行っている。



    転職で新しい一歩 子どもたちの応援を胸に

    一覧へ戻る

    17年前の笑顔から、数え切れないありがとう 義父母へ架け橋の虹を

    RECOMMENDおすすめの記事