猫が教える、人間のトリセツ

婿の使いかた。by みかん(飼い主・中島孝介&さくら)

人間を思うがままに操る、飼い猫たちの実例集「猫が教える、人間のトリセツ」。
月に1回、「猫と暮らすニューヨーク」の筆者、仁平綾さんとイラストレーターのPeter Arkle(ピーター・アークル)さんでお届けします。

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長野県松本市にあるアンティ―クショップ「guild Bekkan」を訪れたときのこと。店主の中島孝介さんから古道具の蘊蓄(うんちく)を伺っていたところ、ふと飼い猫の話に。聞けば、妻のさくらさんと、その飼い猫みかんちゃんのもとへ、いわば“婿入り”した形になったという中島さん。まるでドラマに出てくるような“鬼姑(おにしゅうとめ)”のような猫のみかんちゃんから、厳しい婿修業を課せられているのだとか……。


ふさふさの毛をまとった、たぬきのような風貌(ふうぼう)のメス猫みかんちゃん。御年18歳。妻のさくらさんが動物病院へ勤めていたときに、獣医師さんの実家で保護された捨て猫でした。

さくらさんいわく「寂しがり屋で、甘えん坊。天の邪鬼(あまのじゃく)、臆病で、スーパー人見知り」というみかんちゃんは、典型的な猫気質。そんなみかんちゃんと、のちに家族となる中島孝介さんが初めて会ったのは、結婚前のことでした。

「人見知りが激しいと聞いていたので、一定の距離を保って遠くから眺めていた」という孝介さん。いざ結婚し同居を始めても、みかんちゃんの冷たい態度は変わらず。「触らせてくれることはほぼなく、油断をついてサッと触るぐらい」という涙ぐましい状況。「“お姑(しゅうとめ)さん”のような存在。僕を同居人とは認めていない感じです」

婿の使いかた。by みかん(飼い主・中島孝介&さくら)

孝介さんいわく「立てばライオン、座ってもライオン、歩く姿はほぼタヌキ」というみかんちゃん。寝てる姿も、やっぱりタヌキ

ある日、孝介さんとみかんちゃんで自宅にいたときのことです。珍しくみかんちゃんが孝介さんに近寄り、じっと見つめて鳴いたため、「かまってほしいのかな」と心を躍らせた孝介さん。“姑”との距離を一気に縮めるチャンス、と手を伸ばしたところ、踵(きびす)を返して寝床へ戻ってしまいました。

ごはんや水が無くなっているわけでもない。どうしたんだろう。ふとトイレを見ると、用を足した形跡があるだけ。

「その後も何回か同じことがありました。寝ている部屋から“ニャ、アーン”と鳴き声だけ聞こえてくるので、様子を見に行くとトイレがしてあるときも」

なんと“姑”のみかんちゃん、婿の孝介さんにトイレ掃除を要求していたのです。

婿の使いかた。by みかん(飼い主・中島孝介&さくら)

みかんちゃんが、孝介さんを見るときはこんな感じ。ものすごい睨(にら)んでます?

「僕のことをトイレ掃除のおじさんと認識しているんだと思います。今まで近づくと遠ざかり、触ると“シャー!”と威嚇されていたので、たとえトイレ掃除のおじさんでも、存在意識があるのならばうれしいです」と孝介さん。ドンマイ!

「みかんは、孝介さんが信頼できる人かどうか、テストしているのだと思います」とさくらさん。当然ながら、みかんちゃんがこれまで、さくらさんにトイレ掃除を要求したことは一度もありません。

鳴いたり、何度も行ったり来たりして、孝介さんにトイレ掃除を催促するみかんちゃん。甲斐甲斐(かいがい)しく掃除をする孝介さんの姿を見守ることなく、「やれやれ、やっと掃除したか」という感じで、そっぽを向いているのだとか。なんという“鬼姑”。

「最近は僕の寝ている上を遠慮なく歩いて行きます。アスレチック要員にもなりつつあります」と孝介さん。厳しい婿修業はまだまだ続きます。

婿の使いかた。by みかん(飼い主・中島孝介&さくら)

窓の向こうから様子をうかがう、みかんちゃん。さくらさんにふさわしい婿かどうか、一挙手一投足をチェック


中島孝介・さくら
2018年の結婚を機に長野県松本市に在住。中島孝介さんは、2013年に北海道根室市に、古道具を中心としたセレクトショップguild Nemuroをオープン。2019年5月には、長野県松本市にguiid Bekkan(ギルド別館)を構え、2拠点を行き来するスタイルで生活をしています。
https://www.guild-nemuro.com/

婿の使いかた。by みかん(飼い主・中島孝介&さくら)
guild Bekkan
長野県松本市大手1-3-24 1F
12:00-18:00
※営業日はホームページでご確認ください。

婿の使いかた。by みかん(飼い主・中島孝介&さくら)
guild Nemuro
北海道根室市昭和町4-396 
11:00-19:00
※営業日はホームページでご確認ください。

次回は、12月中旬の配信予定です。

猫と暮らすニューヨークが本になりました!!

婿の使いかた。by みかん(飼い主・中島孝介&さくら)

『ニューヨークの猫は、なぜしあわせなの?
75匹の猫と飼い主のリアルな暮らし』

仁平 綾 (著) 朝日新聞出版

猫と暮らすニューヨーク』として連載していたものから、
“猫の飼いかた”の部分に注目し、さまざまなアイデアや実践法を抽出、再編集した一冊。
個性豊かで愛らしい、NYの猫たちの写真が満載で、猫好き必読の書。

1760円(税込み)

>>「猫と暮らすニューヨーク」まとめ読みはこちら

PROFILE

  • 仁平綾

    編集者・ライター
    ニューヨーク・ブルックリン在住。食べることと、猫をもふもふすることが趣味。愛猫は、タキシードキャットのミチコ。雑誌やウェブ等への執筆のほか、著書にブルックリンの私的ガイド本『BEST OF BROOKLYN』、『ニューヨークの看板ネコ』『紙もの図鑑AtoZ』(いずれもエクスナレッジ)、『ニューヨークおいしいものだけ! 朝・昼・夜 食べ歩きガイド』(筑摩書房)、共著に『テリーヌブック』(パイインターナショナル)、『ニューヨークレシピブック』(誠文堂新光社)がある。
    http://www.bestofbrooklynbook.com

  • Peter Arkle(イラスト)

    ピーター・アークル スコットランド出身、ニューヨーク在住のイラストレーター。The New Yorker、New York Magazine、The New York Times、Newsweek、Timeなど雑誌や書籍、広告で幅広く活躍。著書に『All Black Cats Are Not Alike』(http://allblackcats.com/)がある。

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