より優雅に、クラシカルに 20年春夏パリ・コレのトレンド
この秋、世界各地で開かれた20年春夏コレクションでは、前季から続くカジュアルからエレガンスへの移行がさらに進んだ。パリ・コレでもスポーツやストリート調に代わってクラシック調や、優雅でシンプルなスタイルが多くみられた。
「よき時代」現代的アレンジで

ルイ・ヴィトン
前回までの未来的なスタイルから一転したルイ・ヴィトンは、パリが繁栄した19世紀末から第1次世界大戦までの「ベル・エポック」の優雅なスタイルを現代的にアレンジした。
アールヌーボー調の曲線的な植物柄。ひだをたくさん寄せたパフスリーブなどロマンチックな要素をミックスし、胸にはクラシカルなランのコサージュまで飾った。

ロエベ
ロエベも18世紀ごろまでよく用いられていた、スカートを膨らませるためのパニエで懐古調のイメージを強めた。アンティーク風レースの襟飾りがついたブラウスなど、みずみずしい色や工芸的なディテールで仕上げた。

(左)ジュンヤ・ワタナベ、(右)メゾン・マルジェラ
ミリタリーの定番アイテムに独自の変化を加え、最新モードとして昇華させるブランドもあった。
ジュンヤ・ワタナベは、得意のトレンチコートを解体して前身頃に配置したりケープにしてしまったり。凝った技を存分に使っているのに、街でも着られそうだ。メゾン・マルジェラも、ミリタリーコートやセーラー服などのユニホームを解体・再構築し、気品が漂う仕上がりだった。

(左)エルメス、(右)ヨウジヤマモト
一方、できる限り装飾を排した、クリーンなデザインも目立った。
エルメスは、革やカシミヤなど極上の素材の持ち味を生かしたミニマルなスタイルに徹した。ヨウジヤマモトは切り込みやリボン使いなど装飾はわずかだが、シルエットや流れるような布の使い方など優美さに磨きがかかった印象。

(左)ビューティフルピープル、(中央)ジバンシィ、(右)マメ・クロゴウチ
ビューティフルピープルは、形はシンプルだが、体の入れ方によって幾通りかに違って見えるドレスなどを見せた。
ファッション界でサステイナビリティー(持続可能性)やエコロジーが注目される中、花や植物柄、グリーンなどの色、綿など自然素材使いが多かった。
ジバンシィは、グリーンを基調にした花柄ドレスのほかに、洗いをかけたダメージデニムのスカートなどで今シーズンらしいナチュラル感を演出。
今回初めて公式スケジュールで参加したマメ・クロゴウチは、透ける素材の重ねや刺繍(ししゅう)などで、本物の庭にあるような重層的な花の柄を表現した。
(編集委員・高橋牧子)
<写真は大原広和氏撮影>
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