#10 あたらしい器、いつもの料理。

#10 あたらしい器、いつもの料理。
先日、東京の骨董(こっとう)市で買ったあたらしい器。
しばらくすると、
しっくりと我が家に馴染(なじ)んで、
今では毎日に欠かせない存在になっている。
一目ぼれで持ち帰った
フランスのアンティーク大皿は、
大きなキャンバスのイメージで、
鮮やかな食材を盛り付けて楽しもうと思っていた。
もちろんそんな使い方でも
楽しんでいるのだけれど、
手に馴染んでくると、
また違った付き合い方も生まれてきた。
最近いいなと思っているのは、
友人が集まる食卓で、
パスタや焼きそばなど、
締めの麺類をどん、と盛る使い方。
けっこう男前な料理がのることも多いけれど、
繊細なたたずまいのこのお皿に盛ると
とたんに上品で、シックな雰囲気になる。
この間のメニューは、
カキと春菊の焼きそば。
カキを蒸し焼きにしたときに出る
うまみたっぷりの
だしを味わって欲しくて、ソースはなし。
塩と少しのオイスターソースを絡めて、ライムをひと絞り。
日本風の焼きそばとは少し違った
南国を思わせる風味で、
白い洋皿に盛ると、より鮮やかに、
どこか異国の風を運んできた。
もうひとつ、
二つそろいで買った
古伊万里のそば猪口(ちょこ)は、
器店で手に取った瞬間に思い浮かんだ小鉢として使うことが多い。
いつだったか、
その藍色の美しい絵付けを見ていたら、
そうだ、柿を盛ったら奇麗なのでは、とひらめいた。
藍色と橙色(だいだいいろ)の渋いコントラスト。
アクセントにホウレン草の緑も入れよう。
それで、白あえを作ることにした。
旬を迎えた、ねっとり甘い柿。
それに負けないよう、豆腐はしっかり水切りしてクリーミーに。
味に深さを出したくて、少しだけ練りゴマを加えてみた。
ごまのコクと柿の甘みのバランスが
ちょうどよくできて、
われながら、これはおいしい。
日本酒にもワインにもよく合う味で、
食べる人の好みによってお酒はまちまちだけれど、
和食器でありつつも、
どこか北欧の雰囲気のあるこのそば猪口は、
どんなシーンにもしっくりと馴染んでくれる。
あたらしい器が来たことによって、
いつもの料理に少し工夫を加えようかなと思う。
その小さな変化は発見に満ちていて、
何よりすごく、面白い。
今日のうつわ
フランスのアンティーク大皿と、古伊万里のそば猪口
骨董市で買った器の中でも、ひときわ気に入っているもの。そば猪口は店主が教えてくれたのをまねして、コーヒーやお茶を入れる茶器としても使っています。アンティークの大皿は、これからのクリスマスシーズンに繊細な盛り付けを施してパーティーの主役にしたいなと考えています。
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写真 相馬ミナ 構成 小林百合子
高山都(たかやま・みやこ)
「高山都の日々、うつわ。」
丁寧に自分らしく過ごすのが好きだというモデル・女優の高山都さん。日々のうつわ選びを通して、自分の心地良いと思う暮らし方、日々の忙しさの中で、心豊かに生きるための工夫や発見など、高山さんの何げない日常を紡ぐ連載コラム。
#9 器を買いに。
#8 秋を飾る。
#7 おひつがくれた小さなしあわせ。
#6 カップの数だけ、いい時間がある。
#5 お弁当づくりから学んだこと。
#4 旅と器のいい関係。
#3 夏の麺と沖縄のガラス。
#2 雨の日の花しごと。
#1 青いプレートとジャムトースト。
【インタビュー】

高山都さんの手放した考え方と、新しく始めた習慣。