店でも家でも、器でおいしく

<10>料理を華やかに見せる、グレーの器/フレンチビストロ「AELU」

料理やデザートのおいしさを演出するなら、器にもこだわりたい。連載「店でも家でも、器でおいしく」では、“食の目利きたち”が敬愛する、器づかいがステキな人やお店をご紹介します。

グレーの器で、料理と空間をスタイリッシュに

今回の推薦者 … 宇多聡子さん(ライフスタイルマガジン『ELLE gourmet』エディター)
紹介される店 … フレンチビストロ「AELU」

「フレンチビストロで、“フレンチ=白皿”という概念が変わりました。このお店に行くようになって『グレーの皿は使える』と思ったこともしばしば。料理をかっこよく見せるヒントがたくさんあります」

国内外の食トレンドを発信するライフスタイルマガジン『エル・グルメ』のエディターである宇多聡子さんがおすすめするのは、東京・代々木上原にあるフレンチビストロ「AELU(アエル)」。固定観念を覆す、驚きの器づかいとは?

<10>料理を華やかに見せる、グレーの器/フレンチビストロ「AELU」

AELU
東京メトロ千代田線・小田急小田原線の代々木上原駅近くにあるフレンチビストロ。「メゾン サンカントサンク」や「ランタン」など、代々木上原エリアの人気飲食店を手がける丸山智博さんによる、ギャラリーを併設したレストラン。ビストロ料理と自然派ワインをギャラリーで扱う器で味わうことができる

コンクリートの床に木製の家具、真鍮を取り入れた木工作家のランプシェードなど、武骨だけれどモダンなアイテムを配したインダストリアルな内装、フォーマルな物腰で迎え入れてくれるカジュアルな装いのスタッフ。その空間と接客は心地良く、訪れる人はここが代々木上原駅の目の前だということを忘れ、特別な時間を過ごしています。

店名の「アエル」は、「和える」と「逢える」から由来し、今までに出会ってきた人や物事を自由な感性で組み合わせて提案することをコンセプトにしています。その提案は料理で表現されているのはもちろんのこと、お店の一角が器のギャラリーに通じており、ガラス越しにその様子を眺めていると自然と器を手に取りたいという気持ちが湧いてきます。

今回の推薦者、『エル・グルメ』編集部の宇多さんが特に注目するのは、グレーの器と料理の組み合わせ。フレンチビストロだと白い器を使用するお店が圧倒的に多いですが、『アエル』のグレーの器を使った料理には、宇多さんの言葉通り「料理をかっこよく見せるヒント」がたくさん隠されています。

<10>料理を華やかに見せる、グレーの器/フレンチビストロ「AELU」

「アエル」とつながりのある作家の一人、SŌK(ソーク)こと鈴木絵里加さんの器も料理をスタイリッシュに見せてくれる。「黒い土にしっかりかけた釉薬の流れが特徴的。ほっこりとならず、無機質で凛としていて格好いい」と真子さん

無機質に有機物をプラスすると、立体感が引き立つ。

国内外合わせて約60人の作家とつながりのある『アエル』。作家たちの器をお店で使ったり、ギャラリーで展示・販売を行ったりしています。
海外の作家の一人、デンマーク人のグーリ・エルベックゴーさんの器は、一見無機質ながらもどこか温かみがある不思議な雰囲気を醸し出しています。

「苔むした石ころやシダ植物など、自然をモチーフにしている作家さんです」と、ギャラリーを担当するディレクターの真子拓也さん。デンマークには高い山がなく、大半が平地を占めていますが、グーリさんはノルウェーに留学し、北欧のフィヨルドエリアから自然への思いを深めていき、それが作品にも表れているのだといいます。

<10>料理を華やかに見せる、グレーの器/フレンチビストロ「AELU」

「気になった作家の作品を実際に見に行くのはもちろんですが、購入して使ってみてから関係を深めていくことが多いです」と真子さん。独立したばかりの若手から大御所まで、幅広いキャリアの作家たちとの交流がある

ずっしりと重く堅牢な印象の作品は、炻器(ストーンウェア)という陶器と磁器の中間の器。持ってみると見た目の印象とは違い、その軽さに驚きます。また、コンプレッサーを使用して吹き付けた釉薬が、よりシャープな印象に仕上げているのです。

これに盛り付けたのは、「炙(あぶ)り鯖(サバ)とパクチー、ザクロ」という冷前菜。フレンチがベースですが、エスニックの要素をプラスした一皿です。

<10>料理を華やかに見せる、グレーの器/フレンチビストロ「AELU」

高さ7.5㎝の器にアサリのスープを合わせた冷前菜「炙り鯖とパクチー、ザクロ」。無機質な器の上だと、素材の有機的な色がより映える

ナチュラルワインがサーブされたパリのお店で食べたメニューからインスピレーションを得たというシェフの松浦真吾さん。「グレーの器は白いものよりも無機質な印象が強くなりますが、そこに合わせた有機的なものが逆にグッと引き立ちます。この場合は、パクチーの緑、ザクロの赤に目がいき、食材をたくさん盛り付けなくても料理に立体感が出ます」

作家とのストーリーも、料理の一部としておいしく供する

「まぐろほほ肉のソテー カリフラワーのピューレ」が盛り付けられたのは、イギリスの陶芸家、ジョノ・スマートさんの器。「立ち上がりが真っすぐで、カラーバリエーションもこのグレーのほかに白や黒もあります。グレーの皿に盛り付けると、料理の色彩が鮮やかに際立ちます」と真子さん。

<10>料理を華やかに見せる、グレーの器/フレンチビストロ「AELU」

「まぐろほほ肉のソテー カリフラワーのピューレ」に使用したジョノ・スマートさんの器は、高さ2.5㎝の立ち上がりが特徴的

添えられたトロなすやバルサミコのソースが、器のグレーによってより引き立つ印象に。器をキャンバスに、絵を描くようにバルサミコのソースをかけると、無機質で静かな雰囲気の器に、有機的な動きがプラスされて、白い器とは異なる対比の美しさが感じられます。

『アエル』では作家とのつながりを大切にしており、産地を訪れたり、また作家がお店を訪ねてきて一緒に食事をしたりと、関係性を深めています。作家のことをよく知るからこそ器づかいにも作家へのリスペクトが感じられ、また、器のことを尋ねるとその特性はもちろん、作家の人柄にも話が及びます。器もおいしい料理の一部なのです。

食事を終えて、自然とギャラリーに足が向いてしまう。料理と器にたっぷりと浸る時間がそこにはあります。

<10>料理を華やかに見せる、グレーの器/フレンチビストロ「AELU」

レストランに併設されたギャラリー。「レストランで食事をしながらステキなお皿に料理が盛られているのを見たら、帰りにギャラリーで似たようなお皿を購入してしまうこともしばしば。家でも器と料理を楽しんでいます」と推薦者の宇多さん

<店舗情報>
住所 東京都渋谷区西原3-12-14 西原ビル 1F
電話番号 ビストロ:03-5738-8068、ギャラリー:03-5738-8091
営業時間 ランチ:11:30~15:00(L.O.14:00)、ディナー:18:00~24:00(L.O.23:00)、ギャラリー:11:30~19:00
定休日 ビストロ、ギャラリーともに不定休


今回の推薦者
宇多聡子(うだ・さとこ)

ライフスタイルマガジン『エル・グルメ』エディター。1973年東京生まれ。大学卒業後、一般企業に就職、編集プロダクションへ転職。そのころ料理家のアシスタントを経験、食のおもしろさを実感する。2007年に『エル・ア・ターブル』(現『エル・グルメ』)を発行するアシェット婦人画報社(現・ハースト婦人画報社)に入社。以来、日々国内外の食トレンドを追いかけ中。

(文・久保田真理 写真・齋藤暁経)

<9>料理と空間に“心地良さ”をプラスする、陶芸家・黒田泰蔵さんの白い器/のみやパロル

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<11>空間とコーヒーの質を高めてくれる、ロイヤルコペンハーゲンの器/喫茶店「椿屋珈琲」

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