O’Tru no Trus(オートゥルノトゥルス)と漂流物のものがたり

淡路島を拠点に海の漂流物を使って作品を制作する、アートユニット「O’Tru no Trus (オートゥルノトゥルス) 」の作品の展示・販売がコンセプトストア「アロウブ(À L’AUBE)」で11月29日から始まる。

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「オートゥルノトゥルスと読みます。淡路島に住んでいます​。海に流れついたものたちを集めています。自分の世界と外の世界との接点をつくるように」。彼らは自分たちをこう説明する。すべての作品に、流木や貝、動物の骨など、主に海辺に漂着した「漂流物」が使われているのだ。漂流物を「モノの最後のかたち」と話すオートゥルノトゥルスの 2人に、作品が生まれた背景と今回の展示について話を伺った。

2人にしかつくれないものがある

O’Tru no Trus(オートゥルノトゥルス)と漂流物のものがたり

オートゥルノトゥルスの種村太樹さん(写真左)と尾崎紅さん

淡路島に住んで丸6年になる2人。元々、東京出身で都内の美大を卒業した尾崎紅さんと、神戸出身の種村太樹さんは、太樹さんが大学時代から住んでいた沖縄で出会い、その後、「行けば何かあるんじゃないか」と軽い気持ちで、段ボール3箱の荷物と共に淡路島に移り住んだ。当時は、作家活動ではなくそれぞれ別々の仕事をしていた。しかし、紅さんは太樹さんと出会った頃から、「2人で何かをしていることに違和感がなかった。これは2人でしかつくれないものがきっとあるはず」と静かに思っていたと言う。

太樹さんはカヤックで日本中を旅していた経験もあり、普段から海のそばで暮らすことが多かった。「砂浜でキャンプをしたり、たき火をしたりする時から流木など海に落ちているものはとても身近で、趣味の一つとして10年間集めたりしていた。それをずっとなんとかしたいと思ってて……」

2年前、仕事先のオーナーの奥さんから、「つくっているものを展示してみたら?」と声がかかったことをきっかけに、2人で本格的に制作をスタート。紅さんの直感と太樹さんの趣味は見事に組み合わさり、「なんとかしたいと思っていたもの」は作品として生まれ変わっていった。

お前どっから来たんだ! 何があったんだ!って

作品のデザインや装飾系は紅さんが担当し、ろうやたたきの形にしていく力仕事は太樹さんがしている。素材となる流れ着く漂流物を海まで探しに行くのは2人で一緒に。発掘場所は暮らしている淡路島の海、沖縄のビーチや四国の海。特に人がいない静かな場所をぶらぶら選ぶという。

「ずっと東京に住んでいた私からすると、漂流物は未知そのもので、流木さえも見たことがなかった。なんじゃこれ!?って。漂流物は、波にもまれてやってくるので、海岸に打ち上げられてる時はきれいなんです。でも、何か分からないものを拾う方が好き。崩れているもの、欠けているもの、その全てがいとしいんです」(紅さん)

O’Tru no Trus(オートゥルノトゥルス)と漂流物のものがたり

スリランカの海岸で漂流物を集める風景。波の音や潮風を感じながら探すのが2人のお気に入りだ

どんな作品にどの形の漂流物を使うのか、デザイン案も関係なく、直感で面白いと思ったものは拾う。台風が来た次の日は海岸にたくさんの物が流れ着くため、絶好の「取れ高」だそう。拾った漂流物については、分かる限りの情報を図鑑などを使って、とにかく調べる。

「どこかで誰かの手元で生きていたものが流れ着く姿形を見ると、お前どっから来たんだ! 何があったんだ!って、ただ知りたくなる。漂流物はそのモノの最後の最後の形だから。これが親心なのか、よくやったって気持ちになります」(太樹さん)。拾った漂流物は水洗いだけで、色を塗ったり、形を直したりもしない。そのままの姿でどうやってデザインするのか決めていく。

O’Tru no Trus(オートゥルノトゥルス)と漂流物のものがたり

拾い集めた漂流物

O’Tru no Trus(オートゥルノトゥルス)と漂流物のものがたり

漂流物を探し終わると一度天日干しにする。この中から作品に使うものを選ぶ

2人の作品を見ると、全て漂流物は金属と合わせられているのに気づく。より自分たちらしさを出すためさまざまな物と合わせたところ、自然物と真鍮(しんちゅう)の組み合わせが今の2人にしっくりきたのだと言う。

「狭い部屋の中で置いたりする物は既にたくさんつくられてるから、他の空いてる空間に飾れるような作品をつくりたくて。インテリアでもアートでもない存在になれれば」。そう言うように、オートゥルノトゥルスの作品は、シンプルだがどこか癖のあるデザインが特徴だ。ひとつあるだけでその「場」が、華やかにも落ち着きのある雰囲気にもなっている。

O’Tru no Trus(オートゥルノトゥルス)と漂流物のものがたり

淡路島の家は「生活」と「制作」が混ぜ合わさっている

「ごみ屋さん」になりたかった

「昔から、『ごみ屋さん』になりたくて。人の目につかないごみにも光があると思っているんです。ごみを拾いながら生きていこうと思ってて(笑)、よくごみ置き場に行っていたんです。漂流物も人が何かを捨てたことで流れ着いてきた『ごみ』でもある一方、僕らには『ごみ』に見えてこない。一つ一つが宝物に見えて飾ってあげたいと思う」(太樹さん)「つくらなきゃいけないプレッシャーも、伝えたいことも特にすごくあるわけじゃないんです。2人でつくるのが島での暮らしの延長線上になってて、気負わずにつくっている感じです」(紅さん)

O’Tru no Trus(オートゥルノトゥルス)と漂流物のものがたり

「それは、たまたまつくったらそうなった」と謙虚に話すが、作品に使われた漂流物の説明に耳を傾けると、流れ着いて私たちの元にやってくるまでのストーリーの壮大さに驚く。サンゴなど使われている自然物は「白色」が多いのだが、それは劣化した結果そうなる色だ。サンゴも人も最後は同じ色味で真っ白になる。このサンゴひとつが白色になるまで経過した年月を想像すると、気が遠くなりそうだ。2人が探し出した時間にも同じことが言える。作品は偶然につくられたものではなく、未知の漂流物に対して一つ一つ丁寧に理解を深め、2人の愛情が込められたものだと感じとれるのだ。

11/29から始まる展示販売では、このためにつくられた初披露の新作15点が並ぶ。会期は販売終了まで。

はるか遠くからやってきた漂流物のストーリーに思いをはせに、オートゥルノトゥルスの作品を見に行ってみてはどうだろうか。

フォトギャラリーでは、アーティスト本人の解説付きで作品をご紹介しています。
作品はフォトギャラリーで

(文・&w編集部 吉野舞)

《展示情報》
「À L’AUBE」
Boutique 11:00~19:00
Café 11:00~17:00(LO 16:00)
東京都港区白金台4-19-20
https://a-laube.com/

O'Tru no Trus(オートゥルノトゥルス)

淡路島を拠点に活動する、種村太樹と尾崎紅によるアートユニット。各地の海を旅して見つけた漂流物と真鍮(しんちゅう)を組み合わせて、オブジェやウォールジュエリーなどの作品を生み出している。O’Tru no Trusという名前の由来は太樹さんが見た夢の中の言葉から引用している。

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