料理家・冷水希三子の何食べたい?

パリパリ皮は家でも作れる! 基本のチキンソテー

料理家・冷水希三子(ひやみず・きみこ)さんが読者と私たち編集部のリクエストに応えて料理を作ってくださるという夢の連載。今回はシンプルでも奥深い、チキンソテー。お店で食べるようなパリパリ皮に仕上げるコツを教えていただきます。

    ◇

―― 冷水先生、こんにちは。気づけば師走の足音まで聞こえてきましたよ~!

冷水 この時期になると、心なしかソワソワしてしまいますね。

―― これからの時期はクリスマスやお正月などイベントが多くなりますから、読者のみなさんの料理熱も高まっているようです。

冷水 あら、それは素晴らしい!

―― クリスマスに向けて、パーティーメニューのリクエストも多くなっているのですが、とはいえみなさん、そこまで手の込んだものを作るのは時間的にもスキル的にも難しい様子で……。

冷水 ただでさえ忙しい年末年始ですからねえ。その気持ち、よーくわかります。

―― でも私、この連載を続けていて思うんですけど、料理のおいしさって、決して「手の込み具合」に比例するわけじゃないと思うんです。なんていうか……、ものすごくシンプルなお料理でも、丁寧に、かつ素材の特徴をしっかり理解して作れば、びっくりするほどおいしくなることってありますよね?

冷水 そうですよ。もっと言えば、シンプルでストレートな料理ほど、おいしく作るのは難しいんです。例えばハンバーグは定番の家庭料理ですが、本当においしく作ろうと思ったら、何度となく練習が必要になりますから。

パリパリ皮は家でも作れる! 基本のチキンソテー

鶏もも肉はひとり1枚。焼く前は大きく見えますが、焼くと小さくなるので、このくらいはひとりでペロリと食べられてしまいます。下ごしらえの時に余分な皮や脂肪を取り除き、皮目に切り込みを入れておくのがポイントです

―― そ、そうなんですね~。適当に作っても食べられるけど、私の作るハンバーグも「本当においしいか?」と聞かれたら、「まあまあ」ですね(笑)。

冷水 じゃあ今回は、「普段何げなく作っているけれど、コツを抑えれば劇的においしくなる家庭料理」シリーズはどうですか?

―― おお、タイトルが長い(笑)! でも、それいいですね!

冷水 クリスマスもありますし、チキンソテーなんていかがでしょう? 鶏もも肉を焼くだけという超シンプルメニューですが、これがまた奥深いのです。

―― 確かに、テキトーに下味をつけて焼いてもまあまあおいしいですけど、洋食屋さんで食べるチキンソテーとは雲泥の差です(涙)。洋食屋さんで出てくる、あのパリッとした皮のチキンソテーって、家でも作れるんですか!?

冷水 もちろん! どなたの家にもあるフライパンで作れますよ。

―― それはなんという朗報! ぜひぜひ教えてください!

パリパリ皮は家でも作れる! 基本のチキンソテー

鶏肉を皮目からフライパンに入れてコンロに点火。ごく弱火でじわじわ焼いていきます。下味は塩のみ。両面に塩を振って焼くと、浸透圧によってお肉の上の面から水分やうまみが出てしまうので、最初は皮目だけに塩を。ひっくり返す直前にお肉の面にも塩を振りましょう

冷水 皮はパリパリでお肉はジューシーという理想的なチキンソテーを作る最大のコツは、焦らず、じっくりと火を入れることなんです。この約束さえ守っていただけたら、絶対に失敗しませんよ。

―― ほ、ほんとですか~?(疑いの目)

冷水 はい、使うのもごく一般的な鶏もも肉です。まずは余分な皮や脂肪を取り除いて、肉を奇麗にしましょうね。次にここもポイントなのですが包丁の先端を皮に突き刺すようにして、いくつか切り込みを入れておきます。

―― これは熱の通りをよくするためですか?

冷水 というより、皮が縮んで反り返ってしまわないようにするためです。

―― あ、確かに皮目から焼いていくと皮がぎゅーっと縮んじゃいますよね。私はいっつもフライ返しを使って、親のかたきのように押さえつけています(笑)。

冷水 あらあら(笑)。そうするとせっかくのおいしい肉汁が漏れてしまうので、あんまりおすすめできませんねえ。でもこうやって切り込みを入れておくと縮みや反り返りを緩和できますから大丈夫ですよ。あとは白い筋の部分も包丁で切断しておくとなおよしです。

パリパリ皮は家でも作れる! 基本のチキンソテー

20分ほど弱火で焼いていると、皮目からどんどん脂が出てきます。臭みの原因になるので、この脂はキッチンペーパーなどで拭き取りながら焼きましょう。徐々にお肉に火が通って、白っぽくなってきます

―― 皮パリへの道は下ごしらえの段階からすでに始まっているんですね……。

冷水 では、油を引いたフライパンに鶏肉を皮目から入れていきましょう。

―― あ、先生! コンロに火がついていませんよ~!

冷水 はい、これでいいんです。

―― えええ!?

冷水 いきなり熱いフライパンに鶏肉を入れると、切り込みを入れていても皮が縮んでしまうので、最初は冷たいままのフライパンに入れて、弱火で徐々に火を入れていくんです。

―― 焦りは禁物ってことですね!

冷水 火はごく弱火で、このまま15~20分ほどじっくりと焼いていきます。皮がしっかり焼けるまではフライパンにひっつくので、決していじらないようにね。

―― どれくらい焼けたかな~って気になっちゃいますけど、そこはグッと我慢ですね!

冷水 はい、20分ほど経ったところで、フライ返しをフライパンと皮の間に入れてみてください。するっと剝がれたらしっかりと焼けている証拠ですから。

パリパリ皮は家でも作れる! 基本のチキンソテー

20分ほどすると皮目がパリパリに。フライ返しを入れてみて、するっと剝がれたらOKです。ひっくり返したら比較的すぐに肉に火が通るので、焼き過ぎに注意してよいところでお皿に上げましょう

―― 本当にじわじわという感じですね……。忍耐あるのみ!

冷水 じゃあ待っている間に付け合わせを作りましょう。今日はルッコラとオレンジのサラダです。ドレッシングを使うとせっかくパリパリに焼いた鶏肉に水分が移ってしんなりしてしまいますから、オレンジと少しのオイル、ビネガーとあえることで余分な水分が出ないようにします。

―― なるほど、付け合わせにもひと工夫ですね。

冷水 さあ、そろそろ皮目がパリパリになってきましたね。そうしたらお肉を裏返して、5分ほど焼けば完成です。

―― ふたをしなくても、お肉にちゃんと火が通るものなんですね! 

冷水 はい、じっくり長時間焼けばふたをする必要はないんです。

―― う~ん、皮がパリッパリで香ばしい! お肉もふっくらジューシーに仕上がっていて、本当に洋食屋さんのチキンソテーみたいです! 付け合わせのサラダはオレンジと一緒に食べると口の中で果汁がドレッシングになって、すごく爽やか~。

冷水 シンプルな料理ですが、丁寧に作るとしみじみおいしいですよね。これからのパーティーシーズンにぜひチャレンジしてみてくださいね。

今日のレシピ

チキンソテー オレンジルッコラサラダ

◎材料(2人分)

鶏もも肉:2枚 
EXVオリーブオイル:適量 
塩:適量 
赤玉ねぎ(スライス):少々
オレンジ:1個 
ルッコラ:適量 
白ワインビネガー:小さじ1

◎作り方

 鶏もも肉の余分な皮と脂を取り除き、筋を断ち切る。包丁の先で皮に数カ所穴をあける。

 皮面に塩を振り、軽くEXVオリーブオイルを引いたフライパンに皮面を下に向けておいてから火をつける。弱火で15~20分こんがり焼けるまでじっくり焼く。

 皮と反対の側に塩を少々振り、ひっくり返して5分ほど焼く。

 ボウルに皮をむいて2cm大に切ったオレンジ、塩少々、水にさらして水気をふいた赤玉ねぎ、白ワインビネガー、EXVオリーブオイル大さじ1を加えて混ぜ、ルッコラを加え混ぜる。

 皿に焼いたチキンをのせ、4のサラダを添える。

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(料理・レシピ 冷水希三子 写真 関めぐみ 文 小林百合子)

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    冷水希三子(ひやみず・きみこ) 料理家

    パリパリ皮は家でも作れる! 基本のチキンソテー

    料理家・フードコーディネーター。レストランやカフェ勤務を経て独立。季節の食材を使ったやさしい味の料理が評判を呼び、雑誌や広告などで活躍中。器選びや盛り付けに至るまで、その料理の美しさでも注目を集めている。著書に『ONE PLATE OF SEASONS-四季の皿』(アノニマ・スタジオ)、『スープとパン』『さっと煮サラダ』(ともにグラフィック社)など。

    PROFILE

    • 小林百合子

      編集者
      1980年兵庫県生まれ。出版社勤務を経て独立。山岳や自然、動物、旅などにまつわる雑誌、書籍の編集を多く手がける。女性クリエイター8人から成る山登りと本づくりユニット〈ホシガラス山岳会〉発起人。著書に『最高の山ごはん』(パイ・インターナショナル)、『いきもの人生相談室』(山と溪谷社)、野川かさねとの共著に『山と山小屋』(平凡社)など。

    • 関めぐみ(写真)

      写真家。アメリカ、ワシントンDC生まれ。スポーツ誌、カルチャー誌、女性誌などで活躍。また、広告やカタログ、CDジャケット、俳優の写真集なども担当。書籍に『8月の写真館』『JAIPUR』など。

    ふっくら、ジューシー、サバサンドイッチ。

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