高山都の日々、うつわ。

#11 おでん日和。

 
#11 おでん日和。

なかなか寒くならなかった今年の冬。
毎年この時期になると
「ああ、寒い!」なんて
ブツブツ言っているのだけれど、
あのキンと冷えた朝の空気がどこか恋しいから可笑(おか)しい。

少し遅れてやってきた北風は心地よくて、
季節の変わり目をはっきりと感じた。
ぐっと冷え込んだその夜、
おでん用に使っているお鍋に
自然と手が伸びたのは、
身体も冬の到来を心待ちにしていた証拠かな。

コロンとしたたたずまいが
愛らしいアルミ両手鍋。
盛大にお鍋をするには
少し小ぶりだけれど、
ふたりくらいでお鍋をつつくには
ちょうどいいサイズ。
おみそ汁など、日々の汁物づくりにも活躍している。

以前、京都を旅したとき、
「お料理するならきっと気にいると思うよ」と
友人に鍛金工房を教えてもらった。

#11 おでん日和。
#11 おでん日和。

鍛金とは、
1枚の地金を金槌(かなづち)でたたいて
成形する金属工芸の技法で
そうして生み出されるお鍋やテーブルウェアには
金槌で丹念に打った跡である美しい「槌目(つちめ)」が現れる。
形は同じでも、同じ槌目はひとつとしてなくて、
その美しさにほれぼれとしたのだった。

迷った末に手に取ったのが、
この両手鍋。
それまでは何となく買った片手鍋で
おみそ汁を作っていたけれど、
これなら毎日の料理がもっと楽しくなるのでは、と思った。

実際、コンロにこの両手鍋がかかっていると、
無性にワクワクする。
しばらくはひとりのささやかな楽しみとして
使っていたけれど、
せっかくの美しいお鍋。
これはぜひ食卓に出して、お客さんにも楽しんでもらいたい。
それで、おでんやしゃぶしゃぶ、小さなお鍋などにも使うようになった。

カセットコンロを食卓に出しておくと、
「今日はお鍋か~、いや、この匂いはおでんだな」
とうれしそうな友。
キッチンのコンロで火を入れておいた両手鍋を持って、食卓へ。

#11 おでん日和。
#11 おでん日和。

愛らしいお鍋がカセットコンロに乗ると、
「わあ!」と歓声が上がる。
その瞬間が好き。

小ぶりだけれど深型のお鍋には、
ぎっしりとおでんのたね。
串に刺したつくねや餅巾着をつまんで食べると、
奥の方から大根やごぼう天が顔を出す。
宝探しみたいにして食べるこの小鍋スタイルは、結構楽しい。

あらかた食べ終わってしまうと、
締めには湯むきしたトマトを丸ごとお鍋の中へ。
だしをたっぷり吸って柔らかくなったトマトのおいしいこと!

お鍋が空っぽになる頃には
身体が芯からポカポカとして
なんともいえない幸せな気持ちになる。

やっぱり冬という季節があってよかったな。
誰かとこのお鍋を囲む夜を過ごすたび、
私はそう、しみじみと思うのだ。

#11 おでん日和。

今日のうつわ

鍛金工房 WESTSIDE33のアルミ製段付き鍋

サイズ違いで色々あった中で、小ぶりサイズを選びました。打ち出しのお鍋は表面積が広く熱伝導がいいそうで、おみそ汁を作るにもささっとできて重宝しています。友人と一緒の時は食卓に出しておでんやしゃぶしゃぶを。簡単な料理でも美しいたたずまいのお鍋で出すと、作る側も食べる側もより幸せな気分になれるような気がします。

    ◇

写真 相馬ミナ 構成 小林百合子

高山都(たかやま・みやこ)

1982年、大阪府生まれ。モデルやドラマ、舞台の出演、ラジオ番組のパーソナリティなど幅広い分野で活躍。フルマラソンを3時間台で完走するなどアクティブな一面も。最近は料理の分野でも注目を集め、2作目となる著書『高山都の美 食 姿2』では、背伸びせずに作る家ごはんレシピを提案。その自然体なライフスタイルが同世代の女性の共感を呼んでいる。

高山都の日々、うつわ。

丁寧に自分らしく過ごすのが好きだというモデル・女優の高山都さん。日々のうつわ選びを通して、自分の心地良いと思う暮らし方、日々の忙しさの中で、心豊かに生きるための工夫や発見など、高山さんの何げない日常を紡ぐ連載コラム。

おすすめ記事

  • #10 あたらしい器、いつもの料理。

    #10 あたらしい器、いつもの料理。

  • #9 器を買いに。

    #9 器を買いに。

  • #8 秋を飾る。

    #8 秋を飾る。

  • >>「高山都の日々、うつわ。」 記事一覧へ

    #10 あたらしい器、いつもの料理。

    一覧へ戻る

    #12 クリスマスの夜。

    RECOMMENDおすすめの記事