店でも家でも、器でおいしく

<12>“おもてなし”にも“日常づかい”にも活躍する、アイデアあふれる器/宮澤奈々さん

料理やデザートのおいしさを演出するなら、器にもこだわりたい。連載「店でも家でも、器でおいしく」では、“食の目利きたち”が敬愛する、器づかいがステキな人やお店をご紹介します。

信玄弁当から着想された、スタイリッシュで使いやすい器

今回の推薦者 … 糸賀洋子さん(食のPRディレクター・コーディネーター)
紹介される人 … 宮澤奈々さん(料理家)

「料理と器のスタイリングやテーブルコーディネートの経験が豊富な宮澤奈々さんが『山加荻村漆器店』とコラボレーションした器をおすすめします。モダンでありながら緻密な計算のもとに作り上げられています」

食のPRディレクター・コーディネーターの糸賀洋子さんが紹介してくれたのは、料理家・宮澤奈々さんのアイデアから生まれたスタイリッシュな器です。

<12>“おもてなし”にも“日常づかい”にも活躍する、アイデアあふれる器/宮澤奈々さん

宮澤奈々(みやざわ・なな)
料理家、料理教室「C’est très bon(セ・トレボン)」主宰。料理と器のスタイリングやテーブルコーディネートの提案、器の監修も手がける。著書に『おいしく見せる 盛りつけの基本』(池田書店)、『シンプルなおもてなし』(小学館)、『喜ばれる おもてなし和食』(池田書店)など

家庭でも再現しやすいおもてなし料理のほか、スタイリングやテーブルコーディネートの提案、さらに、器の監修も手がけている宮澤さん。彼女が心がけているのは、“おもてなし”と“日常づかい”の両方を考慮した料理と器の提案です。
その思いが凝縮されたのが、今年の春に完成、秋に雑誌『家庭画報』でお披露目したばかりの器「TAMATEBAKO(タマテバコ)」。モダンなシルバーでありながら、重ねた時のフォルムの可愛らしさが印象的です。明治45年創業の長野・塩尻にある「山加荻村漆器店」の伝統の技、先取の精神と、宮澤さんのアイデアとのコラボレーションによって生まれました。

<12>“おもてなし”にも“日常づかい”にも活躍する、アイデアあふれる器/宮澤奈々さん

信玄弁当からイメージして作ったというTAMATEBAKO。武田信玄が由来の信玄弁当は、汁物、丼、おかずが一つに収まるようになっていて、鷹(たか)狩りに行く時に使われたものと言われている

お母様から譲り受けた信玄弁当を持っていたものの、それぞれの器のサイズに使いづらさを感じていたという宮澤さん。そこで、サイズや大きさを見直し、オリジナルの信玄弁当を作りました。蓋(フタ)の役割でもある中椀(わん)には汁物が、中皿にはおかずや物相(もっそう)で抜いたご飯100g、親椀にはご飯200gが入るように、深さ、高さを入念に設計。箸置きをセットすると、さらに使い勝手が向上します。

アイデアの源は、懐石料理に長年携わった経験から

長年料理の仕事に携わってきた経験を生かしつつ、使い勝手の良さを重視して、今までにない器を作り上げている宮澤さん。
「市販のお弁当箱を実際使ってみると不便に感じることが多々あります。懐石料理に携わってきた経験から、料理が盛り付けやすく、美しく見える深さにこだわり、さらに汎用性という部分も重視しました」

<12>“おもてなし”にも“日常づかい”にも活躍する、アイデアあふれる器/宮澤奈々さん

お正月のおもてなしの場合は、物相で抜いたご飯、なますを敷いた上にお煮しめ、汁物を。波紋の文様がアクセントの敷き盆に置くと豪華な印象に。千両を飾れば、さらにお正月の雰囲気がアップ

日本で暮らしていると、手狭な収納スペースは誰しも直面する問題。「収納に悩んでいない人はいないと思います(笑)。それなら、一つの器でおもてなしも、日常づかいもできる、さらには重ねて収納できる汎用性が求められていると思いました」。このような思いから、「TAMATEBAKO」が完成したのです。

もちろん、普段づかいで、洋食に合わせてもOK。器を変えて、まとまりのあるコーディネートをするだけで、レストラン仕様になります。

<12>“おもてなし”にも“日常づかい”にも活躍する、アイデアあふれる器/宮澤奈々さん

キーマカレー、かぼちゃのポタージュ、パテドカンパーニュなど、宮澤さんの信玄弁当は洋食とも好相性

<12>“おもてなし”にも“日常づかい”にも活躍する、アイデアあふれる器/宮澤奈々さん

親椀にセロファンを敷き、オアシスを置いて松などを挿せば、お正月飾りにも

器だけでなく、変化するお屠蘇セットもプロデュース

宮澤さんと「山加荻村漆器店」は何度もコラボレーションをしており、今から3年ほど前には、お屠蘇(とそ)セットの「WA TOSO」も製作。こちらもモダンでスタイリッシュでありながら、普段づかいもできる工夫がされています。

<12>“おもてなし”にも“日常づかい”にも活躍する、アイデアあふれる器/宮澤奈々さん

「お正月にはお銚子(ちょうし)にお屠蘇を入れて。それ以外でも、日本酒を入れたり、お茶を入れたり。受け皿はおつまみ入れにもなります」とここにも宮澤さんのアイデアが盛り込まれている

お屠蘇、日本酒、お茶といろいろな飲み物を入れても大丈夫なのは、本体の中までしっかりと洗えるよう、銚子本体を分解することができるから。スタイリッシュでありながら、実用性も考えた構造にできるのは、3Dプリンターで9時間もかけて成形し、自由な設計が可能になっているからなのです。

<12>“おもてなし”にも“日常づかい”にも活躍する、アイデアあふれる器/宮澤奈々さん

セットの器も入れ子になって収納時のスペースに困らない

<12>“おもてなし”にも“日常づかい”にも活躍する、アイデアあふれる器/宮澤奈々さん

敷き盆は布の上に錫(すず)の箔を貼っており、その場の雰囲気をより一層華やかにしてくれる。この盆に直接おつまみなどを載せてお皿代わりにしてもOK

アイデア次第で、おもてなしにも、普段づかいにも使える宮澤さんの器で、365日の食がより充実したものになりそうです。


今回の推薦者
糸賀洋子(いとが・ようこ)

食のPRディレクター・コーディネーター、「Spindle」代表。ファッションブランド勤務後、ある料理人との出会いをきっかけに「食」に特化したPR事務所「Spindle」を立ち上げる。モダンスパニッシュのレストラン「エネコ東京」やゆるやかな糖質制限ロカボメニューを供する和食店「神宮前 らかん・果」、フィンランド産クラフトジン「アークティック ブルー ジン」など、さまざまな店舗やブランドのPRを担当している。

(文・久保田真理 写真・齋藤暁経)

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