花のない花屋

「これからは羽を伸ばして」 1人で育ててくれた母へ感謝の花束を

〈依頼人プロフィール〉
山川美加さん(仮名) 34歳 女性
大阪府在住
会社員

     ◇

幼い頃よりシングルマザーとして一人娘の私を育ててくれたお母さん。物心ついた頃からずっと「お父さんは亡くなった」と聞かされていましたが、大人同士の会話や雰囲気から、なんとなく「死んではいない」と感じ取っていました。

今もまだ本当のところはわかりません。私が夫と結婚するとき、あちらのご両親に「なぜ一人親家庭なのか。なぜ離婚の理由が説明できないのか」と結婚を反対されました。母は母なりに言えない事情があるのでしょう。

結局、夫のご両親が反対していたため、結婚式は開かず写真撮影だけで済ませましたが、母に花嫁姿を見せてあげられず、きちんと感謝を伝えられなかったのがずっと心にひっかかっています。

母は今61歳ですが、2018年に定年退職するまでは経理としてずっと働いていました。母が子どもの頃は、妹が日本脳炎にかかり、30歳で亡くなるまで寝たきりだったため、姉である母がずっと看病していたようです。

私と母の関係はずっと良好で、1人で働いて私を育てながらも、幼い頃から毎年伊勢や白浜などあちこち旅行に連れていってくれました。大人になってからも、女2人で沖縄旅行などに行って楽しんでいます。

ただ、数年前に母方の祖父母の家が火事に遭ってからは、祖父母とも母の家に引っ越して一緒に住んでおり、母が2人の介護を引き受けています。さらに、私の子どもが生まれてからは週3日はうちに泊まり、1歳の子どもの世話までしてくれています。

本当だったら、これまで一生懸命働いてきた分、退職後は自分の好きなことに時間を使ってほしいのですが、「友達と旅行にでも行ったら?」と勧めても、「祖父母を置いて泊まりにはいけない」と、なかなか行動に移してくれません。

そこで、そんな母へこれまでの感謝と、「これからはもっと羽を伸ばして楽しんでね」という気持ちを込めて、花束を作っていただけないでしょうか。母は昔からコスモスが好きで、私が結婚するまではよく2人でコスモス畑に行っていました。その一方、はっきりした色の“かっこいい”お花も好きで、趣味のアートフラワーでは、いつも大きなお花をドン!と使っています。どうぞよろしくお願いいたします。

「これからは羽を伸ばして」 1人で育ててくれた母へ感謝の花束を

花束を作った東さんのコメント

きっととても芯が強く、魅力的なお母様なのでしょう。そんなお母様への感謝のお花ということなので、ご希望のコスモスを使いながら、個性的でポップな花束に仕上げました。

使用したのは、大きなプロテア、リンドウ、カラー、ガーベラ、トリトマ、マリーゴールド、ネリネ、ケイトウ、アスクレピアスなど。周りにはコショウの葉とカクレミノをたっぷり挿しました。今回は和花と洋花を使い、ふだんあまりしない組み合わせでまとめてみました。か弱い印象のコスモスが一転、力強く個性的に姿を変えたように思います。

コスモスは早く枯れてしまう花ではありますが、今回は周りに強い花をたくさん入れたので、コスモスが終わっても、全体としては長く楽しむことができます。枯れたコスモスもいい感じですので、時の経過とともに楽しんでください。

「これからは羽を伸ばして」 1人で育ててくれた母へ感謝の花束を

「これからは羽を伸ばして」 1人で育ててくれた母へ感謝の花束を

「これからは羽を伸ばして」 1人で育ててくれた母へ感謝の花束を

「これからは羽を伸ばして」 1人で育ててくれた母へ感謝の花束を

(&編集部/写真・椎木俊介)

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    「&w」では、読者のみなさまから「物語」を募集しています。
    こんな人に、こんな花を贈りたい。こんな相手に、こんな思いを届けたい。
    花を贈りたい人とのエピソードと、贈りたい理由をお寄せください。毎週ひとつの物語を選んで、東さんに花束をつくっていただき、花束は物語を贈りたい相手の方にプレゼントします。その物語は花束の写真と一緒に&wで紹介させていただきます。
    詳しくは応募フォームをご覧のうえ、お申し込みください。

    フラワーアーティスト・東信 (あずままこと)

    「これからは羽を伸ばして」 1人で育ててくれた母へ感謝の花束を

    1976年生まれ。
    2002年より花屋を営み続け、現在は東京・南青山にてオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。2005年よりフラワーアーティストとして、ニューヨーク、パリ、ドイツ、ブラジル等、国内外で精力的な活動を展開。独自の視点から花や植物の美を表現し続けている。
    作品集に「ピエール・エルメ サティーヌ」「ENCYCLOPEDIA OF FLOWERSII 植物図鑑」(ともに青幻舎)など。

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    http://azumamakoto.com/

    PROFILE

    椎木 俊介(写真)

    ボタニカル・フォトグラファー

    2002年、東信とともに、銀座にオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。東が植物による造形表現をはじめると時期を同じくして、カメラを手にし、刻々と朽ちゆき、姿かたちを変容させていってしまう生命のありようを写真に留める活動に傾倒していく。日々、植物に触れ、その生死に向き合ってきたからこそ導き出すことのできる、花や植物のみが生来的に有する自然界特有の色彩や生命力、神秘性を鋭く切り取っていく。

    2011年に初の作品集となる東信との共著『2009-2011 Flowers』(青幻舎)を発表以降、常に独特の視点ですべての東の作品を捉え続け、近年は映像制作にも力を入れ、多岐にわたる活動を行っている。


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