朝日新聞ファッションニュース

国産オリジナル服、気軽に作れる オンラインサービス「シタテル」

もっと手軽に服が作れたら――。その思いに応えるオンラインサービス「シタテル」が注目されている。ITを活用した衣服生産向けのプラットフォームで、デザインする側と、デザインを形にする生産者側をつなげる。今夏には、海外需要開拓支援機構(クールジャパン機構)による出資も決まった。国内外での事業拡大が期待されている。

1型50着から受注、多品種少量を実現

国産オリジナル服、気軽に作れる オンラインサービス「シタテル」

「ナツミザマ」の試着会ではコートやパンツなど5型を復刻した

11月上旬、東京・千駄ケ谷で、ブランド「ナツミザマ」の一般向けの試着会が開かれていた。過去のコレクションから人気アイテムを生地や色を変えて復刻し、シタテルを使って生産する受注販売会だ。

2009年のブランド設立から丸10年。デザイナーの座間なつみ(35)は、大量生産を前提とした従来の服作りに疑問を抱いていた。別注商品を作るにも、余り布が出る。「もっとニーズに合わせた生産ができれば……」。そんな矢先に、知人の紹介でシタテルを知った。

オリジナルの服を1型50着という少量で受注生産でき、在庫数を減らせるという。実験的に採り入れた。店舗ではなく、ネットで試作品の写真だけを見て足を運んでもらう難しさはあったが、「無駄を出したくないという心理的負担をなくしてくれた」と語る。

デザイナーと生産者、ITで結ぶ

国産オリジナル服、気軽に作れる オンラインサービス「シタテル」

シタテルのイメージ。型紙作成、裁断、縫製などの工程をつなぎ、管理する=シタテル提供

シタテルは「プロアマ問わず、あらゆる衣服生産のニーズに応える」というコンセプト。デザイン、型紙作成、布や糸の調達、裁断、縫製……。通常、デザイナーやアパレル企業は各工程の担い手と連携して形にするが、シタテルはそうした工程を一貫してサポートする。いわば服作りのコンシェルジュだ。個人事業者や一般企業が主な対象だ。社内の一体感をつくるためのオリジナルユニホームも、デザインイメージさえあれば作れる。

開発したのは、熊本市のベンチャー企業「シタテル」。2014年に創業し、翌年オンラインサービスを開始した。手軽さが受けて利用する会社は増え続け、約1万4500社にのぼる。より効率的な生産背景を求めるアパレル企業からの需要も高い。これまで飲食店や文具店の制服、ホテルの館内着、メーカーの作業服など手がけ、熊本県庁の防災服も作った。

工程担う700拠点、データ化し発注

国産オリジナル服、気軽に作れる オンラインサービス「シタテル」

オールウィンではスーツ以外のすべての衣服や寝具などの生活雑貨を縫製している

強みは国内の縫製工場や生地メーカー約700拠点とのネットワークだ。各工場の繁忙期や得意分野をデータ化して独自の生産管理システムに反映。利用者が望むアイテムや数量、納期に見合う最適な生産者を選び、利用者につなぐ。利用者側は、単価を抑えるための大量生産を避けて、質の高い日本製の服を作れる。生産者側は技術革新によって生産性を高め、安定した稼働を見込める。双方にとって好循環を生み出す。

生産者側の反応も上々だ。国内外のブランドなどの製造を請け負う岐阜県関市の縫製工場「オールウィン」は、今年始めからシタテルを経由した発注を受けている。野呂飛衣(ひゅうい)専務取締役(29)は「いまだにファクスでのやりとりや、仕様書にばらつきがある業界だが、シタテルでは過去のデータがオンライン上に保存され、作業工程が明確。時間の短縮にもなる」と話す。請け負う割合は全体の一部だが「業界の新しい風になる。ブランド側にもどんどん使ってほしい」と広がりを期待する。

今年7月にはクールジャパン機構から最大10億円の出資が決まったことで、システムの拡張や新機能の開発が進む。シタテルの河野(かわの)秀和代表取締役CEO(44)は「服作りに関わる人々のコミュニケーションの場として、メイド・イン・ジャパンの仕組みを国内外で進化させたい」と意気込む。

(松沢奈々子)

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