ミナの服、400着の森の中を歩く幸せ。「ミナ ペルホネン / 皆川明 つづく」東京都現代美術館

東京都現代美術館(江東区)で開催中の「ミナ ペルホネン / 皆川明 つづく」展。開幕初日から多くの人が会場に足を運び、その自由で創造的な世界を堪能している。

 会場は「実」「森」「風」「芽」「種」「根」「土」「空」と名づけられた八つのスペースからなる。それぞれ「ミナ ペルホネン」(以下、ミナと表記)のものづくりを自然界の言葉に投影したものだ。

 まず、ミナのテキスタイルでつくったクッションがずらりと並ぶ入り口で、一瞬にして心はミナ・ワールドに奪われてしまう。それを序章に1冊の本をたどるように展示は続く。

 一つめの部屋「実」ではミナの代名詞にもなっている刺繍柄「tambourine(タンバリン)」をテーマに、ひとつのデザインが服やバッグなど、さまざまなものに展開されていく様子がひと目で見渡せる。

ミナの服、400着の森の中を歩く幸せ。「ミナ ペルホネン / 皆川明 つづく」東京都現代美術館

 工場の機械が、タンバリンの丸い輪をひとつ刺繍するのに要する時間は9分37秒。その時間と手間の、無限とも思える連なりを布地に感じながら、二つめの部屋「森」に足を進めると、息をのむ光景が広がっている。天井の高いギャラリーの壁全面に、ミナの服が400着以上も並んでいるのだ。

ミナの服、400着の森の中を歩く幸せ。「ミナ ペルホネン / 皆川明 つづく」東京都現代美術館

 1995年に「ミナ ペルホネン」の前身である「ミナ」を設立した当初から、デザイナーの皆川明さんは、生地から服まで、一貫したオリジナルデザインを貫いてきた。刺繍やプリントなど、創意の尽きない手仕事が加えられたミナの服には、1着1着につくり手たちの深い愛情が込められている。

 皆川さんが自身の軸に置いてきたのは、短いサイクルで大量消費されていくものではなく、長い時間の中で繰り返し着てもらえる服づくり。ファッションからはじまった活動は、インテリアや食器など暮らしのシーン全般に広がり、国内外のブランドやクリエイターとの協働も増えた。
「その間、本当に多くの人たちの仕事に支えられてきました」

ミナの服、400着の森の中を歩く幸せ。「ミナ ペルホネン / 皆川明 つづく」東京都現代美術館

 そんな皆川さんの言葉を表すように、五つめの部屋「種」では、ミナの仕事場とともに、プリント、刺繍、織など製造の現場で仕事に励む人たちの映像が流れている。縫い上げたワンピースの裏をチェックし、わずかな縫い残しの糸を見つけ、手ばさみで切っていく。人々の淡々とした動きの中に、生きる上で不可欠な誠実さが切り取られる。

ミナの服、400着の森の中を歩く幸せ。「ミナ ペルホネン / 皆川明 つづく」東京都現代美術館

 展覧会のタイトル「つづく」には、皆川さんのさまざまな思いが込められている。
「ブランドを立ち上げたときから、せめて100年はつづくように、という思いでやってきました。来年はその4分の1である25周年を迎えます。『つづく』という3文字には『その先に行く』だけでなく、『つながる』『連なる』『重なる』『循環する』と、いろいろな意味があります。来ていただいた方に、それを感じ取っていただけたら、とてもうれしいことです」

 展示構成は建築家の田根剛さん、グラフィック・デザインは葛西薫さんが担当。8つの展示室のネーミングやテーマ設定、空間のつくり方は、誰がリーダーになるともなく、関わるスタッフがみなアイデアを出し合って、それを融合させていった。

 展示の後半になる七つめの部屋「土」では、個人が所有しているミナの服15点が飾られている。抑えた照明の中で、それぞれの思い出の文章とともに、さまざまな形で浮かび上がる服が印象的だ。トルソーに着せるのではなく、透明なアクリル板で挟むことで、服自体が生命を持って躍動しているように見せる。これは田根さんのアイデアだという。

ミナの服、400着の森の中を歩く幸せ。「ミナ ペルホネン / 皆川明 つづく」東京都現代美術館

 添えられた文章には、亡くなった父がほめてくれた、初めての出産のときに着ていた、子育て中の思い出がつまっている……と、人生のワンシーンと、人の連なりを大切に思う言葉がつづく。服が長く愛される。それはなんと幸せなことだろうか。

(文・清野由美/写真・林紗記/別クレジットは提供写真)

■ミナ ペルホネン/皆川明 つづく
会期:2019年11月16日(土)~2020年2月16日(日)
(月曜日、12/28~1/1、1/14は休館=1/13は開館)
開館時間:10:00~18:00(展示室入場は閉館30分前まで)
会場:東京都現代美術館 企画展示室3F
東京都江東区三好4-1-1
観覧料:一般1500円/大学生・専門学校生・65歳以上1000円/中高生600円/小学生以下無料

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