花のない花屋

「君の実家も大好き」 私の名字を残すと決めた夫へ

〈依頼人プロフィール〉
松田久美子さん 31歳 女性
広島県在住
鍼灸(しんきゅう)師

     ◇

5歳年上の夫と結婚して、今年7月で10年が経ちました。2人の子どもたちにも恵まれ、娘は小学校1年生、息子は3歳です。夫は同じ鍼灸師をしていて、育児にも積極的。子どもたちにもとても好かれています。そんな夫にはひとつ、結婚当初からとても感謝していることがあります。

私は三姉妹の末っ子で、姉とはずいぶん年が離れています。最初に真ん中の姉が結婚し、その次は一番上の姉が結婚かな……と思っていたものの、なかなか結婚せず。そんなとき、母とのおしゃべりの中で、ふと私が「姉がうちを継ぐのかな」と言うと、母は「ここを継いでもらう気はないんじゃ」と言いました。

それを聞いて初めて、「あれ? 私が結婚したら誰もうちを継がないんだ。名字がなくなっちゃうんだ……」と気が付きました。姉たちと、「なんだかさみしいね」と言い合う中で、いつしか私は「私が名字を残そう」と思うようになっていました。

そんな中、夫と出会い、数年間の交際期間を経てそろそろ……と思い始めたとき、真っ先に頭に浮かんできた不安が、「名字をどうしよう」ということでした。そこで、おそるおそるこれまで考えてきたことを夫に話してみると、「自分の姓にこだわりはない」と意外な答えが。

そしてあるとき、デートの帰りに景色のきれいなところに立ち寄ると、夫がこう言いました。「結婚するなら、君の家族を大切にしたい。君の実家も大好きだから、君の名字を残したい」と。驚いて、「私の姓になってくれるの?」と聞くと、笑って「うん、いいよ」との返事。私のもやもやが一気に吹っ切れました。

それからは、まず夫の実家へあいさつに行って了承を得、その後私の実家へ。私の両親は「娘さんをください」と言われるのかと思っていたようですが、まさかの「息子にしてください」という彼の発言に目がテン。びっくりしながらも、そこまで考えてくれるのなら、と喜んでくれました。

長男だった彼にはきっと複雑な思いもあったでしょうが、あのときの決断には本当に感謝しています。結婚10周年とはいえ、特にプレゼントもあげることなく、ふつうに過ごしてしまいましたが、改めてお礼の気持ちを花束にして贈りたいです。

娘が生まれたときは桜を、息子が生まれたときは紅葉を記念樹として植えたので、今回も何か記念になるような観葉植物を入れていただけないでしょうか。また、仕事でもプライベートでも、人との縁を大事にしているので、観葉植物の周りには家族や友達、仕事仲間といったご縁のある方々を表すお花をちりばめていただけるとうれしいです。

「君の実家も大好き」 私の名字を残すと決めた夫へ

花束を作った東さんのコメント

とてもすてきなご主人ですね。今回はご希望の通り、記念になる観葉植物としてガジュマルをメインにおきました。ガジュマルは「幸せの木」とも呼ばれており、幸運の象徴です。根をつけたままアレンジしていますので、ぜひ鉢に植え替えて育ててくださいね。

ガジュマルの周りには、ご家族やご友人などご縁のある方々を表して、セダム、スプレーマム、グロリオサのつぼみ、ヒペリカムなどを挿しました。ガジュマルを目立たせるため、すべてグリーンでまとめましたが、これからセダムは小さな白い花を、グロリオサはうっすら赤緑っぽい花を咲かせるはず。花が咲くとまた違ったイメージになるはずですので、楽しみにしていてくださいね。

これからも素敵なご家族でいられますように。

「君の実家も大好き」 私の名字を残すと決めた夫へ

「君の実家も大好き」 私の名字を残すと決めた夫へ

「君の実家も大好き」 私の名字を残すと決めた夫へ

「君の実家も大好き」 私の名字を残すと決めた夫へ

(&編集部/写真・椎木俊介)

>>これまでの「花のない花屋」をまとめ読み


  •    

    「これからは羽を伸ばして」 1人で育ててくれた母へ感謝の花束を
       

       

    「これからは羽を伸ばして」 1人で育ててくれた母へ感謝の花束を


       


  •    

    生まれた息子は眠っているようで…。泣きたくても泣けなかった夫へ
       

       

    生まれた息子は眠っているようで…。泣きたくても泣けなかった夫へ


       


  •    

    また我慢させるなんて…… やっと甘えてくれた20歳の娘へ
       

       

    また我慢させるなんて…… やっと甘えてくれた20歳の娘へ


       

  •      ◇

    「&w」では、読者のみなさまから「物語」を募集しています。
    こんな人に、こんな花を贈りたい。こんな相手に、こんな思いを届けたい。
    花を贈りたい人とのエピソードと、贈りたい理由をお寄せください。毎週ひとつの物語を選んで、東さんに花束をつくっていただき、花束は物語を贈りたい相手の方にプレゼントします。その物語は花束の写真と一緒に&wで紹介させていただきます。
    詳しくは応募フォームをご覧のうえ、お申し込みください。

    フラワーアーティスト・東信 (あずままこと)

    「君の実家も大好き」 私の名字を残すと決めた夫へ

    1976年生まれ。
    2002年より花屋を営み続け、現在は東京・南青山にてオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。2005年よりフラワーアーティストとして、ニューヨーク、パリ、ドイツ、ブラジル等、国内外で精力的な活動を展開。独自の視点から花や植物の美を表現し続けている。
    作品集に「ピエール・エルメ サティーヌ」「ENCYCLOPEDIA OF FLOWERSII 植物図鑑」(ともに青幻舎)など。

    facebook

    instagram

    http://azumamakoto.com/

    PROFILE

    椎木 俊介(写真)

    ボタニカル・フォトグラファー

    2002年、東信とともに、銀座にオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。東が植物による造形表現をはじめると時期を同じくして、カメラを手にし、刻々と朽ちゆき、姿かたちを変容させていってしまう生命のありようを写真に留める活動に傾倒していく。日々、植物に触れ、その生死に向き合ってきたからこそ導き出すことのできる、花や植物のみが生来的に有する自然界特有の色彩や生命力、神秘性を鋭く切り取っていく。

    2011年に初の作品集となる東信との共著『2009-2011 Flowers』(青幻舎)を発表以降、常に独特の視点ですべての東の作品を捉え続け、近年は映像制作にも力を入れ、多岐にわたる活動を行っている。


    「これからは羽を伸ばして」 1人で育ててくれた母へ感謝の花束を

    一覧へ戻る

    自宅を売って始めた豆腐屋 夢を追い続ける両親へ

    RECOMMENDおすすめの記事