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昭和初期の浪漫を感じる、森の中の一軒宿。下呂温泉 湯之島館で過ごす休日

古くから飛驒の湯島(下呂)、上州の草津、津陽の有馬と、日本の三代名湯のひとつに数えられてきた岐阜県の下呂温泉。なかでも昭和6年に創業した湯之島館は下呂温泉のシンボルとして愛されてきた温泉宿。今回は昭和の趣を残す宿で過ごす休日のストーリーです。

古き良き昭和初期にタイムトリップ

JR高山線・下呂駅から送迎バスで約10分。湯之島館の前にバスが止まると、「わあ!」と声をあげずにいられません。

威風堂々とした数寄屋造り、5万坪を越えるという敷地には樹齢数百年の木々が立つ庭園が広がり、澄んだ空気が流れています。

昭和初期の浪漫を感じる、森の中の一軒宿。下呂温泉 湯之島館で過ごす休日

森の斜面に建てられた宿からは下呂の町並みを一望できます

圧巻なのは本館。重厚な瓦屋根を冠した木造3階建てで、まさに由緒正しき古湯という感じ。設計を務めたのは、当時気鋭の建築家だった丹羽英二氏。木造和風建築と近代洋風建築との融合をテーマに設計されたのだそう。

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囲炉裏のあるロビー。ワインレッドの絨毯(じゅうたん)が、どこかモダンな雰囲気

迷路のようなワクワク感のある広大なお宿。面白いのは和風と洋風がいい塩梅(あんばい)に混じり合っているところ。とくに家族風呂や卓球室、鹿鳴館風のダンスホールがある「娯楽館」は昭和浪漫満載のモダンデザインで乙女心が刺激されます。

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床のタイルが可愛い卓球室

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浴衣のままお酒とカラオケをフランクに楽しめる「ムーンライト」

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美しい飴(あめ)色になった階段の手すりが長いときの流れを感じさせます。シックな雰囲気がたまりません

「美人の湯」を露天でも内風呂でも

お楽しみの温泉はすべて下呂温泉の源泉。展望台浴場や展望露天風呂、各部屋の内湯やプライベート専用露天風呂はもちろん、なんとすべてのシャワーが源泉(一部は循環かけ流し)!

古くから「美人の湯」と名高い下呂温泉の効能は、入浴後30分ほどかけて肌に浸透するそうで、ゆっくりと時間をかけてお湯を楽しむ人が多いのだとか。

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緑に包まれてお湯を楽しめる野天風呂(山渓之湯)。冬は雪見風呂もすてき

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素朴でも、愛着を持って使われてきたとわかる脱衣かご。細かい部分にも古湯情緒が漂います

内湯の大浴場「飛山之湯」はとにかく広々。大きく取られた窓からは対岸の美しい山々を望め、とくに朝風呂の清々(すがすが)しさといったら。

ほかにもそれぞれ趣の違った雰囲気を味わえる四つの家族風呂や、夜風に当たりながら楽しめる足湯など、一泊では味わい尽くせない温泉ワンダーランドです。

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大浴場「飛山之湯」はさんさんと光が入る心地いい空間です

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展望台にある「山の足湯」は24時間利用可能。夜風に当たりながら、ビール片手に楽しむのも気持ちいい

何度でも訪れたくなる、多彩な客室

湯之島館に長く通い続ける常連が多い理由のひとつが、毎回、趣の違う客室を楽しめること。昭和6年の創業当時のまま残されている本館客室は飛驒の匠の技と昭和ロマンを堪能できる湯之島館の真骨頂。

昭和31年に山の傾斜を利用して作られた深山荘は、当時は珍しい二階建て構造。大人数でもプライベート感を保って宿泊できるとあって人気だとか。

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和と洋が融合した美しい客室。同じタイプの部屋でも調度品の趣が違っていたり、毎回わくわくさせてくれる

一度は泊まってみたい憧れの部屋が、昭和51年に上皇・后両陛下がお泊まりになった「雲井之間」と「山楽荘」。広縁の窓から下呂温泉の町並みを一望する「雲井之間」は、室内に茶室がしつらえられた貴賓室にふさわしい空間。

いっぽうの「山楽荘」は一戸建ての離れで、古くから文人たちに愛されてきた静寂の間。専用露天風呂もあり、おこもり感たっぷりの特別な一室です。

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「山楽荘」にも茶室が。緑を感じながら静かな時間を満喫できる

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床(とこ)柱や、欄間、襖(ふすま)の建具の隅々にまで昭和の職人の心意気が見て取れる「雲井之間」

四季折々の飛驒の恵みをいただく

夕食は飛驒の山と川の恵みをふんだんに使った季節の懐石料理。何よりうれしいのは全室部屋出しというおもてなしで、家族や友人とゆっくり食事の時間を楽しめるのはたまらない。

献立は飛驒が誇る飛驒牛や、時期によっては地元の益田川で獲れる鮎(アユ)やアマゴなどの川魚など。さらに湯之島館特製の「焼き寿司(すし)」など、伝統と新しいアイデアが融合した料理が並ぶ。

お酒もおいしい飛驒。これからの季節は熱い日本酒と一緒に、季節を丸ごと感じる土地の恵みをいただきたい。

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飛驒牛のしゃぶしゃぶはさっと出汁(だし)にくぐらせて。肉の甘みが口いっぱいに広がる。至福のとき……

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巻き寿司を陶板で焼いていただく「焼き寿司」は湯之島館オリジナルの人気メニュー

乙女心を満たしてくれる、女子旅の宿

由緒正しき老舗の温泉旅館。最初は自分には少し分不相応かなと思っていたけれど、それは杞憂(きゆう)に終わりました。丁寧で温かいおもてなしと、古湯ならではのシックでどこか懐かしい空気。都会のホテルでは決して感じられない趣に、終始感じ入ってしまいました。

なかでも心に残ったのは、渡り廊下や足元のタイル、小さな照明や館内表示など、いつもの温泉旅行では素通りしてしまうような細部に、乙女心をくすぐる美しく、愛らしい要素が詰まっていたこと。
今から80年以上も前に造られた温泉宿で、これほどまでに胸打たれる建築や意匠に出会えるなんて。時代を超えて愛されるものには、永遠の魅力があるのだなと改めて感じました。

とても広い湯之島館。お気に入りの風景を探して、ゆっくりと館内をお散歩するという楽しみ方もおすすめです。

昭和初期の浪漫を感じる、森の中の一軒宿。下呂温泉 湯之島館で過ごす休日

何げない渡り廊下も、足元を見れば美しいタイルが

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光が降り注ぐサンルーム。こうした館内の歴史あるスポットをめぐるスタンプラリーもあるので、ぜひ参加してみてください

文=小林百合子 写真=相馬ミナ

下呂温泉 湯之島館
住所 岐阜県下呂市湯之島645
電話 0576-25-4126
アクセス
JR高山線 下呂駅から無料送迎バスで約10分
料金 1泊2食付き 最安値は17,000円(税抜き)~(1室2名利用)
http://www.yunoshimakan.co.jp/

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