料理家・冷水希三子の何食べたい?

トロトロ、プリプリ。新食感のポルトガル風・タコリゾット

料理家・冷水希三子(ひやみず・きみこ)さんが読者と私たち編集部のリクエストに応えて料理を作ってくださるという夢の連載。今回は「旅するお料理」編。冷水先生が大好きな国・ポルトガルでの忘れられない味を再現します。

    ◇

―― 冷水先生、こんにちは。今年も残すところあとわずか。もしかしたら年が明けてからこの記事をご覧になる方もいらっしゃるかもしれません。

冷水 そうですね。よいお年を&明けましておめでとうございますですね(笑)。

―― 1年間、いろいろなお料理を教えていただいて、読者の方のお料理の腕もメキメキ上がったと思います。

冷水 だとしたらとってもうれしいですね!

―― またしても突然の新シリーズで恐縮です(笑)。今回は、旅好きの先生にちなみまして、「旅するお料理」というのをやってみたいなと思っていまして……。

冷水 あら、なんだか楽しそうなシリーズですね!

―― はい、いつも先生の旅のお話を楽しく伺っていて、中でも旅先で食べたお料理のお話がものすごく気になるんです。どれもこれもおいしそうで!

冷水 私の旅行は、どうしても食べることが中心になっちゃいますから(笑)。旅先の味を再現するのは難しいけれど、私も常々、いつかは家でも作ってみたいな~と思っているんです。

トロトロ、プリプリ。新食感のポルトガル風・タコリゾット

今回はポルトガル料理です。材料は身近で手に入るものばかり。お米も日本米を使います。タコはゆでダコでOKです

―― 身近で手に入る食材で、誰でも作れそうなものがあったらぜひ教えていただきたいです!

冷水 完全に現地の味を再現というのは難しいかもしれませんが、自分流にアレンジしてもいいなら、ポルトガルのタコ料理はどうでしょうか? リゾットのようにお米を炊いたもので「アローシェ」というお料理がとてもおいしかったんです。

―― 「アローシェ」? 初めて聞いたお料理です。

冷水 トマトソースでタコを柔らかく煮て、そこにお米を入れて炊いたものなんですけど、タコのいいおだしが出ていて、しみじみ味わい深いんです。それに煮込んだタコの柔らかいこと! 衝撃でした。

―― う~ん、聞いているだけでおなかが減ってきます。ぜひ教えてください!!

冷水 ではまず、お米を研いでザルにあげて、それからベースとなるトマトソースを作りましょう。少し手間ですが、トマトは湯むきして皮を取り除きましょう。

―― 湯むきはやっぱり……マストですかね?

トロトロ、プリプリ。新食感のポルトガル風・タコリゾット

トマトは湯むきして皮を取り除きます。煮込んで潰してしまうので、皮があると口当たりが悪くなってしまいます。みなさん、がんばって(笑)!

冷水 サラダなどでは皮付きのまま使っても問題ありませんが、ことアローシェでは皮の食感が口当たりを損ねることがあるので、頑張って湯むきしましょう! それに慣れるとささっとできちゃうものですよ。

―― はい!

冷水 トマトソースはいたってオーソドックスで、まず玉ねぎのみじん切りを甘くなるまで炒めて、みじん切りにしたにんにくとパセリ、ざく切りにしたトマト、赤唐辛子を加えて煮ていきます。

―― 途中まではパスタのトマトソースみたいですね(笑)。

冷水 そうそう、そういう感じです。

トロトロ、プリプリ。新食感のポルトガル風・タコリゾット

お米を入れる前の水分量はこんな感じ。あれ、スープみたいだぞ!と不安になっても大丈夫。お米がたくさん水分を吸いますので、このくらいあっていいのです

―― トマトが崩れて、だんだんソース感が増してきました。

冷水 そうしたらぶつ切りにしたタコと赤ワインを加えてさらに煮込んでいきます。

―― すでにゆでてあるタコなのに、ここから30分も煮込むんですね? 硬くなっちゃわないか少し不安です……。

冷水 ゆでタコは、すでに硬くなっているじゃないですか? でも不思議なことに、煮込んでいくとある程度のところからまた柔らかくなるんですよ。

―― へ?! でもたしかに和食屋さんで丁寧に煮込まれたタコって、ものすごく柔らかいですよね。

冷水 そうそう、その食感です。簡単に嚙(か)めるような。

―― わあ、だんだんタコのいいおだしの香りが漂ってきました。タコってこんなにいい香りがするんですね。

冷水 これがアローシェの決め手なんです。調味料はお塩だけですから、トマトや香味野菜、そしてタコのだしが旨味(うまみ)になるんです。

トロトロ、プリプリ。新食感のポルトガル風・タコリゾット

お米を入れて15分ほど煮込んだ状態がこちら。水分が減って、とろとろした感じです。鍋底が焦げ付きやすいので、へらなどでかき混ぜながら煮込みましょう

―― 30分煮ても、まだトマトスープのような水分量ですね。ここにお米を入れるんですか?

冷水 このままだとスープ雑炊みたいな感じになるのでは? と不安になる方もいらっしゃるかもしれませんが大丈夫です! 安心してください。お米が水分を吸ってくれますからね。

―― 本当だ! お米を入れてしばらくするとぐんぐん水分が減って、とろっとした質感になってきました。

冷水 あとは鍋底が焦げ付かないように、かき混ぜながら10~15分煮てできあがりです。

―― う~ん、口に入れた瞬間に広がるタコ、タコ、タコの香り! ポルトガルの人は本当にタコを愛しているんですね。これほどタコの魅力を引き出したお料理を食べたのは初めてです! しかもなんですか、このタコの柔らかさは!

冷水 ね、びっくりしたでしょう? 私も現地で食べて驚いたんです(笑)。食べ慣れた食材でも調理方法や食べ方は国によってさまざま。食材の新しい魅力に出会えるから、旅ってやめられないんですよね。

―― この「旅するお料理」シリーズ、面白いし発見に満ち満ちてます! ぜひ今後も続けましょう。

冷水 あら、じゃあまた旅に行かなくちゃ、ですね!

今日のレシピ

タコのアローシェ
◎材料(3~4人分)

ゆでタコ:150g 
米:1合 
玉ねぎ:1/4個 
トマト:2個 
にんにく:1片 
パセリ:一つかみ 
赤唐辛子:1/2本 
赤ワイン:50ml 
水:500ml 
EXVオリーブオイル:大さじ1
塩:適量

◎作り方

 米は研いでザルにあげる。
 トマトは皮を湯むきして小さく切る。
 にんにくは半分に切り、芯を取る。玉ねぎはみじん切り。パセリはみじん切りにする。タコはぶつ切りにする。
 鍋にEXVオリーブオイルを入れ、玉ねぎのみじん切りと塩少々を加え、弱火でふたをして玉ねぎが甘くなるまで火にかける。
 4.にトマト、にんにく、赤唐辛子、仕上げ用に少し残したあとのパセリを加えて混ぜ、ふたをして10分ほど煮る。
 5.のトマトをヘラでつぶしながらふたを開けたまま10分煮る。
 6.にタコと赤ワインを加えて5分煮てから水を加える。沸いたらふたをして弱火で30分煮る。
 7.に米と塩小さじ2/3強を加え、ふたを開けたまま時々かき混ぜながら12~15分煮る。

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(料理・レシピ 冷水希三子 写真 関めぐみ 文 小林百合子)

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    冷水希三子(ひやみず・きみこ) 料理家

    トロトロ、プリプリ。新食感のポルトガル風・タコリゾット

    料理家・フードコーディネーター。レストランやカフェ勤務を経て独立。季節の食材を使ったやさしい味の料理が評判を呼び、雑誌や広告などで活躍中。器選びや盛り付けに至るまで、その料理の美しさでも注目を集めている。著書に『ONE PLATE OF SEASONS-四季の皿』(アノニマ・スタジオ)、『スープとパン』『さっと煮サラダ』(ともにグラフィック社)など。

    PROFILE

    • 小林百合子

      編集者
      1980年兵庫県生まれ。出版社勤務を経て独立。山岳や自然、動物、旅などにまつわる雑誌、書籍の編集を多く手がける。女性クリエイター8人から成る山登りと本づくりユニット〈ホシガラス山岳会〉発起人。著書に『最高の山ごはん』(パイ・インターナショナル)、『いきもの人生相談室』(山と溪谷社)、野川かさねとの共著に『山と山小屋』(平凡社)など。

    • 関めぐみ(写真)

      写真家。アメリカ、ワシントンDC生まれ。スポーツ誌、カルチャー誌、女性誌などで活躍。また、広告やカタログ、CDジャケット、俳優の写真集なども担当。書籍に『8月の写真館』『JAIPUR』など。

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